「誘引・仕立てでガラリッ」コーナーより
風に強い、病気に強い
ズッキーニの立体栽培群馬・小宮拓也
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ズッキーニの立体栽培
ハウスの早出しがきっかけ
平成9年、標高650mの中山間地に就農し、原木シイタケとコンニャクをつくり始めました。現在は露地畑でズッキーニのほか、アスパラ15a、タラの芽70aを栽培しています。90%が市場出荷で、直売所にも出荷しています。
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葉柄を支柱に固定して立てたズッキーニ。 下葉はどんどんかいていく
ズッキーニ栽培は今年で10年目になります。最初は10aから始めて3年目に60aまで広げ、現在は110a栽培しています。5月から8月まで、年間4回くらいに分けて植え付けています。
ズッキーニは当初、普通に地這い栽培していました。立体栽培に取り組んだのは、早出し用にハウスで栽培した際、密植するために茎をヒモで吊って立ててみたのがきっかけです。露地栽培でも密植できないかと、最初は支柱を立てて上からヒモで吊ってみたりしたのですが、うまくいきませんでした。それでも地這いでは夕立で泥はねしたり、風で葉や実に擦り傷がついたりするため、試行錯誤を続け、現在のやり方に固まったのは4〜5年前になります。
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調製中の筆者。A品率が上がり、選別もラクになった
ズッキーニの立体栽培
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上から見たところ
主枝を固定しない
支柱の立て方、固定の仕方は上図の通りです。ポイントは、支柱に主枝を固定しないことです。主枝を固定してしまうと、風が吹いた時に茎の先端にある生長点が激しく揺さぶられて折れてしまいます。その点、葉柄を固定すると、強風が吹いても株全体が揺れるため、生長点が折れにくくなります。
立体栽培のメリット
(1)多収できる
密植することにより、反収を上げられるのが一番のメリットです。普通なら10a当たり600本程度のところ、700〜800本の苗を定植できます。
(2)A品率が上がる
夕立時の泥はね、風による葉すれの傷が最小限になりました。株を立ち上げるため、5段から上くらいになると、泥はねはほとんど気にならなくなります。支柱を立てる位置と葉柄を縛る場所に気を付ければ、台風後でもA品がとれます。
(3)色のりがいい
傷ができにくくなるだけでなく、立体になっていることで果実に光がよく当たり、色ムラが少なく、色のりがよくなりました。
(4)病害が少ない
生育が進んだら下葉を落とします。風通しがよくなり、軟腐病が出にくくなりました。株が立っているので、下葉に軟腐病が発生しても広がりにくくなります。おかげで収穫開始後は、基本的に防除せずにすんでいます。
(5)収穫しやすい
立体になっているため、果実がよく見えて収穫作業がしやすくなります。おかげで収穫時間が短縮。また、見落としが少なくなるため、果実の過肥大を防ぐことができ、樹が疲れにくくなります。
(6)収穫期間が延びる
5月定植の作型の場合、最終的に高さ130〜150cmに伸びます。結果的に長期どりできて、収量も伸びます(7・8月定植の場合はそこまで伸びない)。
作業には慣れが必要
一方で、株の生長にしたがって葉柄を支柱に縛っていくのはかなりの手間です。2週間に3回くらい縛るのですが、作業が遅れると修正するのが大変です。慣れが必要ですが、腰にはいつもヒモをぶら下げておいて、空いた時間に作業をしています。
今後の課題は夏場、7・8月定植の作型の高温対策です。高温時の収量アップで、生産量全体の倍増を目指したいと思います。将来的には、施設野菜にも取り組んでみたいです。
(群馬県東吾妻町)
この記事の掲載号『現代農業 2017年5月号』特集:初期除草の知恵 虎の巻
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