月刊 現代農業
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「もっと大量にやく」コーナーより

鉄板で囲って保米缶2.8杯分のモミガラを一気にやく

京都・柿迫義昭

巻頭写真

本誌で12年前に登場した保米缶によるくん炭作り。
風に強く、サラサラできれいなくん炭が効率よくできる。
原理がわかれば、応用はいくらでも。
もっと上手に、もっと大量にやく工夫が
各地で生まれている――。

保米缶×2.8

*生のモミガラを保米缶(5俵缶360リットル)で何杯分やけるかを表示

直径約1.8m、高さ30cmの囲い。鉄板の切れ端をもらって作った。保米缶2.8缶分のモミガラが入り、風が吹いても飛ばない。薄いので折り曲げて保管できるし、軽いのでやきたい場所に持ち運べる

直径約1.8m、高さ30cmの囲い。鉄板の切れ端をもらって作った。保米缶2.8缶分のモミガラが入り、風が吹いても飛ばない。薄いので折り曲げて保管できるし、軽いのでやきたい場所に持ち運べる

やき上がったばかりのソバガラくん炭。直売所に予約が入るほど人気

やき上がったばかりのソバガラくん炭。直売所に予約が入るほど人気

保米缶に穴が開いて考えた

 農文協の『DVDブック モミガラを使いこなす』を見て、保米缶でのくん炭作りを始めました。保米缶で作るといい点は、消火する時の水が少なくてすむことです。サラサラのできあがりで、使い勝手もよくなります。しかし、保米缶に直接火を入れて何度もやくと、劣化が早く穴も開いてしまいます。代わりの保米缶の入手も容易ではありません。

 それならと思い、長さ180cm、幅30cm、厚みはトタン板程度の鉄板を3枚用意し、端を針金でつないで円状のベルトにして、直径約180cmの囲いを作りました。

 これを平地に置いて、地面にギュッと鉄板を2〜3cm差し込んで固定。これで、保米缶より背丈が低くてモミガラやソバガラを入れやすく、容量も約3倍のくん炭窯になります。

1000リットルを一気にやく

 モミガラは全部で約1000リットル(保米缶2.8杯分、30kg米袋で27袋分)入ります。まず20袋分入れて点火。煙突の周辺部が先に温度が高くなって灰になりがちなので、点火して2.5〜3時間後に7袋ほど追加しつつ、全体を混ぜてやきムラもなくします。

 点火してから約5時間後に消火します。消火する時は保米缶に入れ、少量の水をかけて密閉し、1日以上おきます。

 くん炭は600〜640リットル(40リットル袋で15〜16袋)できます。

 鉄板の囲いは、使いたい場所にすぐ持ち運べるし、使い終われば、軽く四つ折りにして片付けることができるので、場所もとりません。

40リットル200円で販売

 くん炭は、地域で立ち上げた(有)タナセンの直売所で、40リットル200円で販売しています。サラサラくん炭は軽いし、手がベタつかないので好評です。やく度にすぐ売り切れてしまいます。

 やいているのは、モミガラくん炭よりソバガラくん炭のほうが多いです。タナセンでは地域の集落と連携してソバを毎年10haほど作付けており、さらに近隣から脱皮も受託し、ソバガラが大量に出るからです。毎年40tのソバを脱穀・脱皮し、そのソバガラの3分の1はくん炭にしています。やくことで、畑に入れても外来雑草のタネの心配もなくなります。仮に焼却所にもちこむと、1袋150円も処理費がかかってしまいます。

 ソバガラくん炭は、モミガラくん炭より粒が大きくて空洞があり、つぶれにくく細かくなり過ぎないので、さらに使い勝手がいいと思います。私は土中にすき込んだり、ハクサイの苗などを植えた後、くん炭マルチにして不織布をかぶせておきます。虫が付きにくく、農薬も減らせます。

モミガラを30kgの米袋で20袋分投入し、くん炭器の中の火ダネ(ワラや木クズなど)に点火。その後煙突を付ける。以下、ソバガラも同じやき方

モミガラを30kgの米袋で20袋分投入し、くん炭器の中の火ダネ(ワラや木クズなど)に点火。その後煙突を付ける。以下、ソバガラも同じやき方

矢印

点火3時間後、7袋のモミガラを追加して、全体を混ぜる

点火3時間後、7袋のモミガラを追加して、全体を混ぜる

矢印

5時間後、さらに全体を混ぜてムラがなくなったらやき上がり。ジョウロで表面にごく少量の水をかける

5時間後、さらに全体を混ぜてムラがなくなったらやき上がり。ジョウロで表面にごく少量の水をかける

矢印

すぐ保米缶に移してまたさっと水をかけてから、ビニールで密閉して1日以上おき、完全に火を消す

すぐ保米缶に移してまたさっと水をかけてから、ビニールで密閉して1日以上おき、完全に火を消す

矢印

消火を確認してからビニール袋に入れて保管、販売する。ビニールだと火の気や熱が残っていればすぐ溶けて破れるのでわかりやすい。サラサラのできあがりで、4袋いっぺんに持ち歩けるほど軽い

消火を確認してからビニール袋に入れて保管、販売する。ビニールだと火の気や熱が残っていればすぐ溶けて破れるのでわかりやすい。サラサラのできあがりで、4袋いっぺんに持ち歩けるほど軽い

くん炭器の一番底に青竹を入れておくと、くん炭がやき上がると同時に竹炭ができて楽しい(これも水をかけて消火する)。玄関などに置けばニオイ消しにも使える

くん炭器の一番底に青竹を入れておくと、くん炭がやき上がると同時に竹炭ができて楽しい(これも水をかけて消火する)。玄関などに置けばニオイ消しにも使える

火事にはご注意

 くん炭作りでもっとも注意しなければならないことは、消火です。以前、完全に火を消したつもりで紙袋に詰めて3日間ほど納屋の軒下で保管し何も異常がなかったので、その次の日に取り込もうとしたら、燃えて灰になってしまっていたことがありました。火事の難は逃れましたが、4日目の再燃には驚いた。よくよくご注意ください。

(京都府南丹市)

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2018年1月号
この記事の掲載号
現代農業 2018年1月号

夢のある転作・裏作作物/冬のアブラナ科苗、寒さで鍛えて早出し/果樹の仕立て、今どきの主幹形vs開心形/農家のこうじ・甘酒づくり ほか。 [本を詳しく見る]

DVDブック モミガラを使いこなす くん炭・堆肥・もみ酢、そのまま生でも DVDブック モミガラを使いこなす くん炭・堆肥・もみ酢、そのまま生でも』農文協 編

モミガラは、日本に稲作がある限り毎年必ず生み出されてくる地域資源。いろんな技で使いこなしている人がいます。風のある日でもサラサラくん炭をやく方法、モミガラと米ヌカのマルチで雑草を抑える方法、ブルーシートで簡単に極上モミガラ堆肥をつくる方法、カキガラやトウガラシ入りモミ酢活用術などは、記事でもDVDでも楽しめて現場の空気感まで伝わります。 [本を詳しく見る]

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