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稲作・水田活用

「青森から乾田直播の新技術(下)」より

直交播種のイネ姿

青森市・福士武造さん

7月8日(播種後60日余り)の直交播種圃場。まっしぐらの特別栽培(写真は依田賢吾撮影、以下*以外)

7月8日(播種後60日余り)の直交播種圃場。まっしぐらの特別栽培(写真は依田賢吾撮影、以下*以外)

だんだん条間が埋まってくる

 昨年7月8日、福士武造さんの圃場を訪れた。縦横2方向、碁盤の目状にV溝直播する「直交播種」の圃場だ。5月上旬に播種したこの圃場では、水分管理がうまくいったおかげか発芽率がよく、生育も順調だという。

 10a当たり乾モミ4kg分を播種した長辺方向は、条の位置がなんとなく見えるものの、2kg播種の短辺方向はよくわからなくなっている。条間が埋まってきた証拠だ。葉齢は6葉くらいなのに、4本の分けつが出ていた。以後は約20cmの深水管理などにより、茎数を増やしすぎないようにする。

 この後、7月中下旬に葉色を見つつ、10a当たりチッソ成分0〜2kg分を化成肥料で追肥する。化学肥料、農薬使用量ともに5割減の特別栽培だが、いもち病にはとくに注意し、場合によっては防除を行なう。

右写真の圃場一部を上から見る。通常のV溝直播と違い、株が1列にならず分散している。10aに乾モミ4kg分播種した長辺方向の条はうっすら見えるが、2kg播種の短辺方向の条は葉でよくわからなくなった

右写真の圃場一部を上から見る。通常のV溝直播と違い、株が1列にならず分散している。10aに乾モミ4kg分播種した長辺方向の条はうっすら見えるが、2kg播種の短辺方向の条は葉でよくわからなくなった

福士武造さん(81歳)。福士式地下かんがいの開発者

福士武造さん(81歳)。福士式地下かんがいの開発者

7月8日の平均的な株。種モミ1粒から茎数はすでに5本。この後、最高分けつ期に向け深水管理などで茎数を調整する

7月8日の平均的な株。種モミ1粒から茎数はすでに5本。この後、最高分けつ期に向け深水管理などで茎数を調整する

強い茎で穂数を確保

 10月上旬、再び圃場を訪れると、8月の中下旬に出穂したイネの登熟がだいぶ進んできていた。止葉が35cm程度と小さいので、圃場を眺めた時に穂の多さがよく目立つ。茎はどれも太く、草丈も110cmと立派な姿。収穫は10月の下旬だ。

 直交播種での1m2当たりの穂数は、多い場所だと700本程度になる。反収755kgだった2015年には、675本だった(青森県民局調査)。そもそも播種量は10a6kgと多いが、直交播種なら条播に比べて初期の競合も少ないので、初期に強い茎をたくさんとれる。1粒のモミからどれくらいの穂が立っているのかは、すでに判別できなかったが、結果としてこれだけの穂数がありながら、それぞれの穂が90粒程度の充実したモミをつけ、多収できている。

 収穫まで下葉枯れが少ないというような姿ではない。それでも千粒重が平均23g弱のはずのまっしぐらが、福士さんの圃場では例年24〜25gに登熟するというから不思議だ。日照時間の短かった昨年でも、反収は660kg(1等、クズ米は37kg)だった。

10月4日の圃場。止葉が小さいので、穂の多さがよく目立つ(出穂は8月中下旬)。この時期になると条を見分けるのは困難だ(*)

10月4日の圃場。止葉が小さいので、穂の多さがよく目立つ(出穂は8月中下旬)。この時期になると条を見分けるのは困難だ(*)

福士さんのイネは太く力強い根を持つ。発酵鶏糞や地下かんがいの効果だろうか。この根が登熟を支えている(*)

福士さんのイネは太く力強い根を持つ。発酵鶏糞や地下かんがいの効果だろうか。この根が登熟を支えている(*)

イネをひと固まり抜いてみた(種モミ1粒から育った株かどうかは判別できなかった)。草丈は約110cm(V溝の深さ分を含む)。光を有効に利用できる直交播種だが、さすがにこの時期になると下葉は枯れてしまった(*)

イネをひと固まり抜いてみた(種モミ1粒から育った株かどうかは判別できなかった)。草丈は約110cm(V溝の深さ分を含む)。光を有効に利用できる直交播種だが、さすがにこの時期になると下葉は枯れてしまった(*)

平均的な穂を広げてみた。モミ数は95(うち不稔モミ9、赤く塗ったもの)で、登熟がいい1次枝梗の割合が高い(*)

平均的な穂を広げてみた。モミ数は95(うち不稔モミ9、赤く塗ったもの)で、登熟がいい1次枝梗の割合が高い(*)

乾田直播で有機栽培に挑戦

福士さんは雑草の入りにくい地下かんがい圃場の利点を活かし、直播の有機栽培に取り組んでいる。詳しくはルーラル電子図書館の「編集部取材ビデオ」から。

手作りのバーナーで土壌表層を焼却。トラクタを使い、時速2〜3kmで処理していく。燃料はプロパンガスだ

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2019年4月号
この記事の掲載号
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