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巻頭特集

浅水さっくりスピード代かき法

「水を入れすぎてないか?」コーナーより

(依田賢吾撮影)

(依田賢吾撮影)

水をたっぷり入れて、何度もていねいに練る――。
それって、もしかしてかきすぎ!?
攪拌能力の高いドライブハローでの代かきは、
浅水でさっくり削るようにかくほうが、
作業がラクだし、イネの生育にもよさそうだ。

稲作60年のベテランが浅水代かきに初挑戦
ワラが浮かない代かき法を教えてください

神奈川県座間市・若林英司さん

アゼの上に、かき上げたイナワラ。ワラのかき出しには毎年何時間もかかる

アゼの上に、かき上げたイナワラ。ワラのかき出しには毎年何時間もかかる

若林英司さん(79歳)。約35aでイネを栽培。都市近郊のこの地域では珍しく、苗から自分でつくる(とくに記載のない限り、写真は依田賢吾撮影)

若林英司さん(79歳)。約35aでイネを栽培。都市近郊のこの地域では珍しく、苗から自分でつくる(とくに記載のない限り、写真は依田賢吾撮影)

 昨年5月号の編集が終わって間もない3月下旬、『現代農業』編集部に1通のFAXが届いた。

「毎年5月に田んぼで代かきをするのですが、前の年に収穫したイネのワラが浮いてしまいます。浮いたワラは水面を漂って、南風が吹くと北側に、北風だと南側に寄ってしまって大変です。ワラが浮かないような代かきの方法を教えてください」

 相談してくれたのは、神奈川県座間市に住む稲作歴60年以上のベテラン農家、若林英司さん。編集部ではちょうど「浅水代かきで、ワラも残渣もきれいに練り込む」という特集を組んだところ。どんぴしゃりのタイミングだ。さっそく電話をして話すと、ワラが浮かない浅水代かきには若林さんも興味津々の模様。1カ月後、代かきシーズン真っ盛りの座間市へと伺った。

―― いい天気で、絶好の代かき日和ですね。それにしても風が強い。

若林さん(以下、若):5月の強風は座間の風物詩で、昔は凧揚げ大会なんかもあったんだけど、これが浮きワラを寄せちゃう厄介者なの。田植えの日の朝には、1tトラック1台分くらい寄っちゃう。息子もまだ勤めだし、ワラは毎年田植えの日の朝に私が一人でかき出すんだけど、これがもう大変で大変で。昔からワラは浮くのが当たり前だったから、ずっと疑問に思わなかったんだけど、最近おたくの本を読んで、どうも浮きすぎてるなと気が付いたの。

―― 深水で代かきするとワラが浮きやすいようですが、若林さんの場合、水の深さはどうですか。

若:いや、じつは私も浅水でやってるつもりだし、近所と比べても少ないほうだよ。だけどおたくに言われたから、今日はもっと浅めにしてみた。ほら。

 用意してくれた田んぼを見てみると、けっこう水が溜まっており、4度の耕起で土も細かくなっているため、代かき後のようにも見える。

代かき前、7aの田んぼに入水したところ。いつもより水は浅いそうだが、田面はわずかに見える程度。田んぼはどれも砂利混じりの粘土質で、水持ちはよすぎず悪すぎず。雑草対策のため、秋に1回、春に3回耕している

代かき前、7aの田んぼに入水したところ。いつもより水は浅いそうだが、田面はわずかに見える程度。田んぼはどれも砂利混じりの粘土質で、水持ちはよすぎず悪すぎず。雑草対策のため、秋に1回、春に3回耕している

足を踏み入れると、足裏から15cmほどが水に沈んだ

足を踏み入れると、足裏から15cmほどが水に沈んだ

前ページ写真の田んぼで、いざ代かきのスタート。ワラを確実にすき込みたい若林さんは、PTO、車速とも、少し遅めに設定している

前ページ写真の田んぼで、いざ代かきのスタート。ワラを確実にすき込みたい若林さんは、PTO、車速とも、少し遅めに設定している

(1)図右端からの隣接耕
(2)左端の1列を残し、上の枕地を内側→外側の順でかく
(3)残した左側の1列をかく
(4)下側の枕地を外側→内側の順でかき、終了
田んぼはコンクリート畦畔越しに、公道から進入可能。一番外周の畦畔沿いは、チェーンケースのついていない右側でかく

(1)図右端からの隣接耕
(2)左端の1列を残し、上の枕地を内側→外側の順でかく
(3)残した左側の1列をかく
(4)下側の枕地を外側→内側の順でかき、終了

田んぼはコンクリート畦畔越しに、公道から進入可能。一番外周の畦畔沿いは、チェーンケースのついていない右側でかく

ハローの左側にはチェーンケースがついている。5cmほどの厚みがあるので、左側で畦畔脇をかくと、かき残しが出やすいという

ハローの左側にはチェーンケースがついている。5cmほどの厚みがあるので、左側で畦畔脇をかくと、かき残しが出やすいという

ジャブジャブとかき混ぜられた水が、ハローの脇から逃げていく。ハローが通り過ぎると、その跡を埋めるようにまた水が流れ込んでくる

ジャブジャブとかき混ぜられた水が、ハローの脇から逃げていく。ハローが通り過ぎると、その跡を埋めるようにまた水が流れ込んでくる

若林さんは荒代かきと植え代かきを続けて行なう(図のコースとほとんど同じ)。植え代かきは凸凹で島になった場所や四隅を直す目的が大きく、入水しながら行なう

若林さんは荒代かきと植え代かきを続けて行なう(図のコースとほとんど同じ)。植え代かきは凸凹で島になった場所や四隅を直す目的が大きく、入水しながら行なう

植え代かき後、浮きワラやゴミがだんだん田んぼの隅に寄ってきた

植え代かき後、浮きワラやゴミがだんだん田んぼの隅に寄ってきた

―― やっぱり、ちょっと浮いちゃいましたね。

若:でも、だいぶ少ないよ。いつもは運転席から横に逃げていくワラが見えるもん。水がいつもより浅いおかげかなぁ。浅水代かきって、なかなかいいね。

―― よかった。でも、まだまだ浅くできるかもしれませんよ。ほら、こんなに水を落として代かきしている人もいますし。

 昨年の5月号を手渡し、薄井勝利さんの「完全落水代かき」(136ページ)を見てもらった。

若:えぇー!? この写真、嘘だよ。水が全然見えないじゃない。こんなんじゃ、ガサガサのところばっかりで、土がこなれないよ。えぇー!?

――土塊がちゃんと水を含んでいれば、これくらいでも問題なくかけるそうですよ。イナワラもぜんぜん浮いてこないみたいですし。

若:うーん。本当かなぁ。でも、せっかくだからやってみようかな。うまくいかなければやり直そう。ワラのかき出しに比べれば、やり直しのほうがマシだしね。ほら、ここの田んぼなんか、ヒタヒタに近い浅水じゃないかなぁ? いつもは、もう少し水を足してから代かきするんだけど、今日はこのままかいちゃおうかな。

―― 四隅が水の上に出ちゃってますね。

若:田んぼが凸凹だから、浅くすると、あちこちに島ができちゃうの。これはしょうがないよ。まぁ、植え代かきの時に水を足して、しっかりかき直せば何とかなるんじゃないかな。それと……そうだ、今日のためにハローを点検していて、初めて気が付いたんだけど……こんなレバーがついてたの。

―― なになに?「荒代かき/仕上げ代かき」。地面を押さえる強さを変えるものですね。仕上げ代かき(植え代かき)にセットしてありますが……。

若:長年ロータリで代かきしていたから、ハローはよくわからなくって、購入したときの設定そのままで使っていたの。だから、ずっと植え代かき設定で荒代をかいてたわけ。もしかすると、これもワラを押さえ込めなかった原因かもしれないと思って。

―― なるほど。荒代かき設定にしたほうが、均平板が地面を強く押さえるようですね。ワラもすき込みやすくなりそう。じゃあ、浅水代かきと合わせてやってみましょう。

薄井勝利さんの「完全落水代かき」。超浅水になっていて、ハローをかけて初めて水が見えてくる レバーは2カ所についており、手動で動かす

レバーは2カ所についており、手動で動かす

続きは本誌をお読みください

取材時の動画が、ルーラル電子図書館でご覧になれます。「編集部取材ビデオ」から。

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2019年5月号
この記事の掲載号
現代農業 2019年5月号

特集:浮きワラなし 根張りよし 浅水さっくりスピード代かき法
もうやめられない条抜き栽培/移植機を使い分けてネギの周年栽培/ナシ、長果枝メインで超大玉栽培/田植え機のスタック回避策&脱出法 ほか。 [本を詳しく見る]

DVDブック トラクタ名人になる! 現代農業 2018年5月号

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