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農家の自家増殖「原則禁止」に異議あり!

農水省に、種苗法改定の動きあり

19年2月号「誌上タネ交換会」に読者から届いたタネ

農家の自家増殖を「許諾制」に!?

 いよいよ、農家の自家増殖(自家採種やわき芽挿し、高接ぎなど)が「原則自由」から「原則禁止」へと変えられようとしている。

 農水省は2019年3月から品種保護のための検討会(優良品種の持続的な利用を可能とする植物新品種の保護に関する検討会)を5回開催。その中で「種苗法は例外規定が多く複雑で理解が難しいことから、『自家増殖や転売は一律禁止』といった、現場が理解しやすいシンプルな条文にすべき」「登録品種を農業者が種苗として増殖する場合は、自家増殖も含め、育成者権者の許諾を得た通常利用権に基づく利用を原則とすべきではないか」といった議論が進められているのだ。

 16年までたった82種だった「農家が自由に自家増殖できない品目」(登録品種に限る)を、農水省は17年にいきなり289種に増やした。これにより、例えばトマトの登録品種(タキイの桃太郎サニーやフルティカなど)はわき芽挿しできなくなってしまった。農水省はその後も禁止品目を毎年追加し、19年には387種を指定。自由に自家増殖できる品目(品種)を着実に減らしてきた。

 そしていよいよ今回の議論で、農家の自家増殖は一律「原則禁止」とし、自家採種やわき芽挿しをしたければ育成者の許諾を得よ、という制度に変えようとしているわけだ(この問題については、次号で詳しく紹介したい)。

「異議あり」の声は届いたはずだが……

 ただし農水省といえど、勝手に「禁止品目」を増やしたり法律を変えたりはできない。禁止品目を増やすに当たっては、「種苗法施行規則の一部を改正する省令案」を出して、一応、国民の意見を聞くという形をとっている。意見公募(パブリックコメント)である。

 ただし、このパブリックコメントは曲者だ。農家の声が届く仕組みとは、とても言えそうもないからだ。遡ってみれば、例えば禁止品目を23種から82種に拡大した06年のパブリックコメントに届いた意見は3件。リンドウ、ブドウ、シバの育成者からで、いずれも「自家増殖禁止を早期に進めてください」といった内容だ。17年も3件。やっぱり、自家増殖禁止に賛成の意見のみだった。なぜ農家からの反対意見が届かないのか、理由は明快だろう。誰も知らないからだ。農水省は、パブリックコメントの開始をとくにアナウンスなどしない。農家が知っていようが知らなかろうが、手続きをとって、そこに反対意見が届かなければ、了承を得られたと考えるのだ。

 そこで本誌は、19年2月号でパブリックコメントのやり方(意見の届け方)を紹介。すると、その影響もあったのか18年の公募には18件もの意見が届いた。しかもそのすべてが禁止品目増加に反対の論調だ。

「これ以上、農家が自家増殖できない品目を増やすべきではない。自家増殖・自家採種の原則禁止には反対」(同様の意見13件)、「現在登録品種のない品目(18年はモロヘイヤが該当)を禁止品目に加える必要はない」(同3件)、「ITPGR(次号で紹介)に則って農家の自家増殖を農民の権利として認めてほしい」(同2件)、「無農薬有機栽培農家にとっては致命的」(同2件)、「自家採種の規制はオリジナル品種の育成に不都合」など。できれば全文読んでほしいので、ぜひインターネットで検索してほしい(案件番号:550002795)。

 しかし、これらの意見を農水省が聞き入れたとは考えられない。報告書には丁寧に「いただいた御意見については今後の参考とさせていただきます」と書いてあるものの、追加した禁止品目は当初の予定通りだった。

諦めるのはまだ早い

 じつは、20年の追加品目についての意見公募は11月27日にすでに終わっている。18年は11月29日に公示、翌1月4日締め切りだったのだが、どうやら1カ月前倒ししたようなのだ(19年12月号でお伝えすべきでした)。

 20年の追加予定品目は全部で九つ。野菜類ではミツバ属(ミツバ種には現在、登録品種はない)が加わり、あとはすべて草花類(ケアノツス属、キンバラリア属、ヒゴタイ属、エウリオプス属、ハツコイソウ属、ノボタン属、マツヨイグサ属、パロッティア属)である。

 パブリックコメントの締め切りは過ぎているが、反対・賛成問わず、意見があれば、農水省知的財産課(03ー6738ー6169、FAXの場合は03ー3502ー6572)まで直接届けてほしい。農家の声に耳を傾ける義務が、農水省にはあるはずだ。

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この記事の掲載号
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