農家は菌と仲良しだ−防除編
イチゴの炭疽病を抑えた納豆液
茨城・細谷勇一
筆者(61歳)。イチゴを63a栽培
重大な危機を乗り切った
納豆液のことは『現代農業』2011年6月号「納豆菌で減農薬」特集で知りました。また、先輩からも「納豆は効く」と教わりました。その先輩はトマト農家で、『現代農業』でもたびたび記事になっている茨城県鉾田市の伊藤健さんです。
本格的に使い始めたのは一昨年の夏からです。それまでは物は試し程度で、「なんか、うどんこ病に効くようだ」と感じていました。一昨年の夏は7月下旬まで梅雨寒で、梅雨明け直後から35℃の猛暑が続き、順調に育っていた苗が炭疽病にかかり、重大な危機に陥りました。
対策として、発病した苗の葉やランナーを除去し、農薬散布を徹底。そして、納豆液を思い出し、農薬に混ぜて使いました。その後、除去しきれずに残っていた炭疽病のピンクの胞子が乾いたようになったので、効いたのを実感しました。もちろん、その葉やランナーなどは除去しました。
定植後に発病して植え替えることもありましたが、納豆液と農薬のおかげか、当初予想したほどではなく、予備苗が不足している仲間に譲ることができました。
納豆と水を混ぜた納豆液。納豆1パック(50g)に対して300mlの水を加えてミキサーにかけ、二重にしたストッキングで濾したもの。これを希釈して100lにする。農薬に混用し、10a当たり200l散布
炭疽病もうどんこ病も極めて少ない
さて、昨年の話。
前年の失敗を教訓に、育苗初期から納豆液と農薬の散布を徹底しました。夏は同じように梅雨寒のあと猛暑となったので、苗の風通しをよくするために葉かきをし、3日おきを目安に納豆液と農薬を散布。炭疽病を抑えられました。定植後の植え替えもゼロではありませんが、今までになく極めて少なくてすみました。そして、苗不足になった仲間に、去年より多くの苗を譲ることができました。今年も梅雨寒のち猛暑だったら、同じ対応をしようと思います。
また、うどんこ病にも効果的で、4月中旬現在までに発病したイチゴは数粒程度です。
納豆液と農薬の混用は問題ありません。「もし納豆が効かなくてもアミノ酸を散布したと思えば」(伊藤健さん談)ということなので、農薬散布や葉面散布の際にはできるだけ混用するようにしています。しかも、1パック30円ほどですから。
(茨城県鉾田市)
2021年3月1日の様子。病気はほとんど出ていない
この記事の掲載号『現代農業 2021年6月号』特集:2021年減農薬大特集 殺虫剤がわかる! 「RACコード」でまずは分類
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