誰でもできる 鉢植えアボカド 第5回
誘引――枝を45度にして生長をコントロール
静岡・谷口恵世
直立性と開張性の二つのタイプ
今回は、アボカドの枝をヒモで引っ張る誘引という作業を説明します。
アボカドの樹には、枝の伸び方の違いで直立性と開張性の二つのタイプがあります。どちらのタイプかは品種で決まります。それぞれの特徴を理解し、誘引で樹の形を整えてやると、枝を伸ばそうとする栄養生長と花をつけようとする生殖生長のバランスをコントロールできます。たくさんの花や実がより早くついて、収穫への近道となる大事な管理作業です。
鉢植えにして3カ月ほどの株(品種はサンミゲル)。開張性のため、主枝と側枝の角度が開きすぎ。このくらいの大きさに育ったタイミングで誘引を行なう。誘引後の姿は下写真「鉢植え栽培の誘引」の左(本誌262ページ)
直立性は誘引で枝の伸びを抑制
そもそも、アボカドの樹は、頂芽優勢といって、樹や枝の中で一番高い位置にある芽が優先的に元気に伸びていきます。
品種はベーコン。直立性で枝が上へ上へと伸びやすい(黒澤義教撮影)
直立性の樹の場合、とくにこの傾向が強く、放っておくと枝を上にどんどん伸ばします。栄養生長が勝るので、実になる花芽がなかなかつきません。
そこで、鉢植え栽培なら枝の長さが1m以上に育つ前に、主枝をヒモで縛って下向きに引っ張り、45度くらいの角度にしてやります。主枝の勢いが抑えられ、かわりに主枝から出ている側枝がよく伸びるようになります。花芽は側枝から出る枝につくので、誘引によって充実した側枝を増やすことが花芽を増やすことにつながります。
枝は生育が進むと硬くなって誘引すると折れてしまうことがあるので、誘引はまだ軟らかさがあるうちに行ないます。枝が勢いよく育ち、ヒモで引っ張っても一度に45度まで傾けられない場合は、少しずつヒモを結び直しながら、1週間ほどかけて下へ下へと引っ張っていきます。
開張性は誘引で枝の伸びを促進
開張性の樹の場合も主枝を45度の角度に保つことは同じですが、枝を横へ横へと伸ばす傾向があり、そのまま放っておくとほとんどの枝が垂れ下がっていきます。その場合は、垂れ下がった枝をヒモで上向きに引っ張って生育を促進します。
枝が横へ伸びる傾向が強く、下向きに垂れ下がる場合もある。写真はマラマという品種。他にはピンカートン、メキシコーラなども開張性(依田賢吾撮影)
主枝や側枝が下向きになりすぎると、それぞれから生える枝は上へ上へと勢いよく伸びる徒長枝となります。徒長枝は花芽をなかなかつけない枝になってしまうので、軟らかいうちに誘引して寝かせて側枝に仕立てていきます。あるいは、摘心といって、まだ枝が伸びきる前に手で摘み取ってしまってもいいでしょう。
基本は3本仕立て、摘心で枝を更新
本来アボカドは樹高が高くハワイで地植えされているものは10m以上もあります。しかし、鉢植え栽培の場合は根の量も限られるため、樹に負担がかかりすぎないよう、コンパクトに仕立てます。直立性も開張性も主枝1本、側枝2本の3本仕立てにして、あとはそれぞれの枝からさらに出る側枝を増やして伸ばしていく管理が基本です。
2年目以降、主枝や側枝がそれぞれ1m以上に育ってきたら、先端の新芽を手で折り取ります(摘心)。その後は、それぞれの枝から伸びる側枝の中からよい枝を選んで伸ばし、やはり1m以上になったら摘心。その繰り返しで樹が大きくなりすぎることを防ぎます。
こうした管理を徹底して側枝を充実させながら、植え付けから3〜4年目に花や実を楽しむことを目指します。1年目の管理がうまくいけば、植え付けの翌年に花が咲くこともあるかもしれません。
アボカドの場合、大きく育った枝を切り落とすせん定作業はあまり必要ありません。ただ、下向きに伸びて栄養が行き渡らず枯れてしまった枝があったら切り落として、風通しと日当たりをよくします。
(静岡県牧之原市)