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巻頭特集

暗渠――土中の水を抜く陰の功労者

フレコンバッグから直接投入
超効率的モミガラ暗渠施工

茨城県龍ケ崎市・(有)横田農場

 茨城県龍ケ崎市で約165haの圃場を管理する横田農場は、毎年秋〜冬に暗渠を自主施工している。新しく借りた圃場や排水性が極端に悪い田んぼを中心に、昨シーズンは総距離5kmもの本暗渠を入れた。本誌では作業効率化のプロ集団としておなじみの横田農場、暗渠施工ではどんな効率化があるのだろう――。

溝は2カ月前に掘った

 1月8日の午前8時、ひんやり冷えた朝凪の中で、横田農場のスタッフ4人は営営と施工の準備を進めていた。この日の作業はコルゲート管の設置と、疎水材のモミガラ詰め作業。このモミガラ詰めが、超効率的なんだとか。すでに現場には、モミガラがぎっしり詰まったフレコンバッグが、20袋以上置かれていた。

 暗渠の溝は、トレンチャーで掘るのが横田農場流。前年秋の収穫後、11月頃に掘ってしまったという。トラクタで引っ張るスクリュー式トレンチャーなら、秒速0.75mで作業可能。田んぼ1ha分の溝を1日で掘削でき、総距離5kmを1週間で集中的に掘ってしまうそうだ。

 溝の掘削時には、とくに細かい勾配は気にしない。この地域は地下水位が高いため、暗渠管は常に水没状態となるためだ。排水路から水がなくなる秋や春に乾きやすいよう、水みちを作るイメージだという。

写真右:今回施工する約10aの圃場。前年借りた土地で、ぬかるんで収量が低い。とくに乾きにくいアゼ際に暗渠を通すため、補助事業外で施工(下の写真「今回の暗渠の配置」参照)(写真はすべて依田賢吾撮影)
写真左:秋にトレンチャー「OM1000A」(ニプロ)で掘っておいた暗渠の溝。漏水位置が高い場所などでは、施工までの間に溝が狭まることがある


今回の暗渠の配置
横田農場では、多くの暗渠を国の補助金「農地耕作条件改善事業」の枠内で施工する。ただし補助を受けるには、暗渠管の配置や管の直径など、「地域の実施主体の定める工法」に則らないといけない(茨城では「暗渠管はアゼから5m以上離す」など)ため、自由に計画したい場合は事業外で施工する。

バックホーで吊り下げ走行

 さて、この日の作業は①モミガラ詰め→②コルゲート管入れ→③モミガラ詰め→④水閘設置の順。①の作業時に登場したのは、クレーン機能付きのバックホーだ。これでフレコンを吊り下げて、溝に沿ってゆっくり走行。バッグの下の口を開け、モミガラを溝に直接充填していく。なるほど、確かに速い、速い。みるみるうちにモミガラがなくなり、どんどんバッグを替えては詰めていく。

 コルゲート管設置後のモミガラ詰め(③)も同じように進め、10a圃場、約130mの暗渠管設置とモミガラ詰めが半日で完了。4人は次の圃場へと向かっていった。

クレーン兼用のバックホーでモミガラ入りのフレコンを吊り上げ、モミガラを排出しながら溝の脇を走行。棒などを使って均一に詰め、暗渠管が地面に触れないようにする

吊り下げたフレコンからモミガラ補充

モミガラが入ったフレコンを、バックホーで吊り下げて走行。フレコン下の口から溝へと落としていく。4人作業で、バックホーの操作、投入するモミガラの調整、フレコンの準備・片付けなどを分担する。

この日使った「トヨドレンダブル」。60mm径で、集水能力に優れる。50m巻きなので、継ぎ足し回数も少なく省力

モミガラを20〜30cmの高さまで詰めたらコルゲート管を設置。横の土に触れないよう、溝の真ん中に置く。角やつなぎ目ではノコギリで管を切り、ソケットでつなぐ

*クレーン兼用ではない通常のバックホーでの吊り下げには、作業可能な機体や吊り下げ重量など、労働安全衛生規則により定められた規定がある。

管の上にまたモミガラを詰める。目減りを減らして長持ちさせるため、足で踏み込んで隙間をなくす。大量のモミガラを使うため、フレコンは約10mおきに交換

自主施工なら半額以下

 同等の暗渠の施工を業者に頼んだ場合、材料費や人件費、重機の利用賃などを含め、10a20万円ほどかかってしまう。でも、自分たちで施工すれば、かかるお金はコルゲート管ぐらいで、燃料費を含めても半額以下ですむ。メリットは大きい。

 横田農場では今年、バックホーを更新。今後も自主施工を進めていく予定だ。165haの春・秋作業をスケジュール通り回す舞台裏には、冬の地道な暗渠施工がある。(編)

この記事には続きがあります。本誌68〜73ページをぜひご覧ください!



モミガラ詰めの作業動画が、ルーラル電子図書館でご覧になれます。編集部取材ビデオから。
https://lib.ruralnet.or.jp/video/

 

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