月刊 現代農業
ルーラルネットへ ルーラル電子図書館 食と農 学習の広場 田舎の本屋さん

土つくり・施肥改善


表面・表層施用  有機物マルチ  堆肥マルチ   土中ボカシ・土中マルチ  根まわり堆肥  

ボカシ肥   化学肥料ボカシ  完熟堆肥  中熟堆肥・未熟堆肥   放線菌堆肥  中温発酵

戻し堆肥  石灰追肥   苦土の積極施肥  流し込み施肥  糖度計診断


表面・表層施用(ひょうめん・ひょうそうせよう)

検索語「表面施用」か「表層施用」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

 有機物を土へ深くすき込まず、土の表面に置くか表層の浅い部分に入れることをいう。

 土をよくするには、有機物を土のなかにすき込むのが一般的。だが、考えてみれば、畑の全面に有機物をすき込むようになったのは機械化以降。日本の伝統的な有機物利用は、落ち葉、作物の茎葉、雑草などを、主に刈敷、敷ワラなどとして利用、つまり表面施用が中心だった。刈敷、敷ワラは作物の株元のまわりに敷かれ、根を守る役目を果たす。そうして根を守るために使われた有機物はやがて土に入り土を上からよくしていく。敷ワラはまた土の流亡を防ぎ、雑草の防止にもつながっていた。

 土の表面や表層はたいへん通気性がよく、こうした環境でふえる微生物が、作物の生育にとって害になることはあまりない。むしろ、有機物を分解しながら、作物の生育にとって有効な有機酸やアミノ酸、ビタミンなどを生み出してくれる。土の団粒化がすすんで土がフカフカになる。土の表面や表層では「土ごと発酵」が起こって、土の中のミネラルを作物に吸われやすい形に変えてくれる。微生物が出す二酸化炭素は、作物の光合成を活発にするのにも役立つ。土の表面・表層を大事にするということの意味は深い。

 本誌で取り上げている、土ごと発酵、有機物マルチ、堆肥マルチなどはすべて有機物の表面・表層施用技術といえる。微生物の力を借りることで、少量で大きな効果をあげることができる、有機物活用の小力技術である。

▼特集「有機物マルチで土ごと発酵―土は上からつくる」04年10月号62頁


有機物(ゆうきぶつ)マルチ

検索語「有機物マルチ」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

 マルチとは「根を覆う」という意味で、作物の生育中に、根を守るために有機物を表面施用し土を覆うことをいう。有機物は基本的に生のままでよい。大別すると、雑草草生やグラウンドカバープランツ、薄上秀男氏の提案する「菜っぱマルチ」などは、「生きた有機物」によるマルチ。そして、敷ワラや堆肥、落ち葉、モミガラや刈草、米ヌカや茶ガラ、コーヒーカス……などの様々な有機質素材を運び込んでマルチする方法は「死んだ有機物」によるマルチ。

 一般に普及しているポリエチレンやビニールのマルチは、草を抑えたり、地温を調節したり、水分を保持したりする効果があるのに対し、有機物マルチはこれらの効果に加えて微生物やミミズなど小動物まで元気にしてしまうのが大きな特徴。有機物と土との接触面では、じわじわと「土ごと発酵」が起こって、いつの間にか土がフカフカになり、土中のミネラルも作物に吸われやすい形に変わる。有機物マルチに生えたカビが空中を飛んだり、土着天敵のすみかになったり、空中の湿度を調節してくれたりもするので、病害虫がふえにくい空間にもなる。

 こうして、生育中は微生物や小動物による土壌改良・食味アップ・防除効果などが期待でき、収穫後は腐熟した有機物としてすき込むことで、次作のために利用できる。堆肥つくりを省略できるのも有機物マルチの醍醐味だ。

 有機物マルチの素材はその地域にあるものなら何でもよい。和歌山県の山本賢さんは、絨毯工場から無料で入手できる羊毛クズをバラ園の通路に敷き詰めて効果を上げている。素材による効用の違いを明らかにすることが今後の課題である。

和歌山県・原眞治さんの堆肥マルチの方法(武田方式)とその効果
ジャガイモ畑

▼特集「有機物でマルチ」04年4月号50頁


堆肥(たいひ)マルチ

検索語「堆肥マルチ」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

 堆肥を土の上に敷いて根を覆うことをいう。

 土をよくするために堆肥を土のなかにすき込むことがよく行なわれているが、たくさんの堆肥を入れて土と混ぜるのは時間と労力がかかる。また、未熟な堆肥を使ったり、堆肥を深く入れすぎたりすると、かえって害がでる恐れがある。そこで堆肥を土に表面施用すれば、少量ですむし、未熟なものでも害のでる心配が少なくなる。しかも、堆肥により土壌水分が安定し、土の表層の、通気性のいい環境でふえる微生物が土をフカフカにしたり、有機物を分解しながら作物の生育にとって有効なアミノ酸などを生み出したりしてくれる。まさに土ごと発酵、有機物マルチ効果が生まれる。

 良質な堆肥を使えば、さらに大きな土壌改良効果も期待できる。AML農業経営研究所の武田健氏によれば、良質な堆肥マルチと土の接触面では、土壌の水分と酸素が一定に保たれる。微生物や小動物がよく繁殖して静菌作用を高め、土の団粒化がすすみ、保肥力(塩基置換容量)の高い土ができる。その結果、養分過剰のために生育不良をおこしているような土でも、根が伸びやすくなり、生育が一変するという。事実、堆肥マルチを生かしている農家では、土の表層に白い細根がふえて作物がつくりやすくなった、などの事例が生まれている。

 マルチ作業の省力化や、堆肥の種類による効果の違いを明らかにすることが今後の課題。

▼「堆肥マルチと土の接触面でスゴイことが起こる」武田健03年10月号128頁


検索語「土中ボカシ」か「土中マルチ」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

土中(どちゅう)ボカシ・土中(どちゅう)マルチ

 土中ボカシは未熟な素材を土の中に入れて土中で発酵させる方法。ボカシ肥をつくる手間が省ける。土のなかでうまく発酵させるために嫌気性の微生物資材(ラクトバチルス、カルスNC-Rなど)や酸素を発生させる資材を併用する農家が多い。  

 一方、土中マルチは分解しにくい有機物を深さ10cmくらいの根回りに施用するやり方。愛知の水口文夫さんは松葉、ヨシ、麦ワラなどで土中マルチ、株元が過湿にならず、細根が増え、根こぶ病など病気にかかりにくくなるという。茨城県の松沼憲治さんの「踏み込み温床」方式も一種の土中マルチ。ベッドの下にモミガラ、くん炭、鶏糞、土着菌ボカシ肥などを入れ、その発酵熱で地温を保ち、土つくりにも生かす。こうした未熟な有機物のよさを生かすという発想が、土ごと発酵にもつながっている。

水口さんの土中マルチ栽培のようす
植え穴に2〜3握りのくん炭ボカシ

▼「松葉土中マルチは雨水を切り 根コブ病などをよせつけない」水口文夫88年8月号 268頁/「連綿と続く『踏み込み』で三九年連作ハウスが一番おいしい」松沼憲治98年12月号206頁


()まわり堆肥(たいひ)

検索語「根まわり堆肥」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

 植え穴に、つまり根のまわりによく発酵した堆肥を施用する堆肥施用の小力技術方法。少量の堆肥を効果的に生かすことができる。水口文夫さんによると、畑全面にすき込んだり溝を掘って中に入れる場合と比べ、施用量は100分の1ですみ、それで同等ないしそれ以上の効果があるという。根まわりの土が固結しないでふかふかし、根が伸びるのに必要な酸素が十分補給される。また、堆肥の微生物が定植初期に根圏に定着し、次から次へと伸びる新しい根にも住み着いていくので、根圏微生物を豊かに維持し、土壌病原菌から根を守る効果も期待できる。根圏微生物の分泌物には酸素やホルモンなどが含まれ、耐水性団粒を作ったり、根を活性化する働きがある。

▼「二〇分の一の量でも、効果は二倍の根まわり堆肥」水口文夫96年10月号50頁

 

 

 

 


ボカシ(ごえ)

検索語「ボカシ肥」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

 油カス、魚カスなどの有機質肥料を発酵させてつくる肥料。その限りでは有機発酵肥料だが、山土や粘土、ゼオライトなどを混ぜ、根回りに施用するなどの工夫がみられる。有機物を分解させることで初期のチッソを効きやすくし、土を混ぜることでアンモニアなどの肥料分を保持し肥効が長持ちする。微生物がつくるアミノ酸やビタミンなども豊富。これを根の回りに施すことで、根圏の通気性をよくするとともに、根圏微生物相を豊かにし土壌病害を抑える効果も期待できる。ボカシ肥は、土の化学性、物理性、生物性をよくする総合的な肥料だ。

 ボカシ肥の歴史は古いが、近年、米ヌカと土着菌の利用によって、ボカシ肥は「農家がつくる肥料」として急速に広がった。米ヌカは、水を加えるだけでも発酵してボカシができるが、この時EM菌などの微生物資材を使う人も多い。土にすき込んでも害はでにくく、リン酸、ミネラルが豊富な発酵肥料だから作物は病気に強くなり味もよくなる。発酵を進める微生物の固まりでもあり、作物残渣など田畑にある有機物を土ごと発酵へ向かわせるリード役にもなる。

 そして、米ヌカボカシをつくるとき、竹林などから採取した土着菌を入れれば、その地域の有用微生物が豊富な米ヌカ土着菌ボカシができ、これを種菌にすれば、さまざまな地域資源を良質のボカシ肥にすることができる。油カスや魚カスだけでなく、オカラや茶ガラなどの食品廃棄物、カキガラ、海藻、自然塩などの海のミネラル…。農家がつくるボカシ肥は、素材もつくり方の工夫もどんどん広がっている。

▼「図解 ボカシ肥づくり秘伝」編集部00年10月号27頁/「米ヌカボカシで、ニラ畑の雑草抑制選別もラク」石井稔99年5月号214頁

 


化学肥料(かがくひりょう)ボカシ

検索語「化学肥料ボカシ」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

 単肥あるいは化成肥料に米ヌカなどを混ぜて発酵させてつくる肥料。代表的なものにMリンPKがある。過リン酸石灰、塩化カリに米ヌカ、微生物資材のMリンカリンをまぜて発酵させる。微生物にとり込まれたり、有機酸と結びつくためか、リン酸が土に固定しにくくなり、カリや過石に含まれるカルシウムもよく効くようになる。

 有機質のボカシ肥に化成肥料を混ぜてつくる化成ボカシもある。薄上秀男氏は、ボカシ肥の菌、特に酵母菌は化学肥料(無機栄養分)を消化吸収利用できる能力を持っており、化成ボカシをつくるためにはこの酵母菌にしっかり働いてもらうことが大事だという。化学肥料で酵母菌が増殖し、酵母に含まれる各種のビタミン、ミネラル、アミノ酸、その他ホルモンが菌の死滅分解によって作物に利用される。つまり、化成肥料をエサにして増殖した菌が、化成肥料を高級有機発酵肥料に変えてくれるわけだ。

▼特集「化学肥料だって、ボカせば上等有機肥料」95年10月号119頁

 

 

 


完熟堆肥(かんじゅくたいひ)

検索語「完熟堆肥」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

 素材の有機物がよく分解・発酵した堆肥のこと。未熟有機物を施用すると、土の中で急激に増殖する微生物がチッソ分を奪って作物にチッソ飢餓を招いたり、根いたみする物質を出したりすることがある。また、家畜糞中に混じっている雑草の種子を広げてしまうなどの可能性があるため、有機物を発酵させて堆肥にする方法が昔から広く行なわれている。購入肥料が少ない時代には、よく分解させてチッソなどの肥効が表れやすい堆肥にする必要もあった。

 何をもって完熟堆肥と呼ぶのか、意見が分かれるが、完熟は完全に分解しつくしたという意味ではなく、土に施しても急激に分解することなく、土壌施用後もゆるやかに分解が続くていどに腐熟させたもの、という解釈が一般的。堆肥の温度が下がり、切り返しをしても温度がさほど上がらず、成分的には、有機物のチッソの大部分が微生物の菌体またはその遺体となり、C/N比が15〜20になったものをいう。

 完熟堆肥は通常、長期間堆積し、その間何度か切り返しを行なってつくられるが、水分や空気、堆肥素材のC/N比の調整などに充分留意し、積み込み初期に一気に80度ぐらいまで温度を上げる高温発酵で、45日で完熟堆肥をつくる方法もある。これに対し、50〜70度に抑える中温発酵という考え方もある。また、完熟堆肥をつくったり入手することが難しいなかで、中熟堆肥を空気が多い表層に施用する農家も多い。完熟堆肥とちがい、微生物のエサがある程度含まれており、土の微生物を活性化する力が強く、団粒化など土をよくする効果は大きい。完熟堆肥は安全に使え、肥料的な効果は期待できるが、微生物による土の改良(菌耕)をめざすなら中熟堆肥がよいといえそうである。

▼「『四五日でできる堆肥』で儲かる農業が見えてきた」編集部01年10月号202頁

 


中熟堆肥(ちゅうじゅくたいひ)未熟堆肥(みじゅくたいひ)

検索語「中熟堆肥」か「未熟堆肥」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

 中熟堆肥は、雑草の種子を殺すなど、未熟の害を除くために、一度は高温発酵させるが、まだまだ微生物のエサが多い状態の堆肥。未熟堆肥はほとんど発酵していないもの。大分の西文正さんは、完熟堆肥より中熟堆肥のほうがエサが残っているぶん微生物がよく働き、畑にいろんなキノコが生え、キノコが生えた年ほどナスやトマトがよくできる、という。西さんが使う堆肥は牛糞にバークを混ぜて3カ月ぐらい積んだもので堆肥はまだ熱い状態。これを空気が多い表層10cmのところに表層施用しすき込む。未熟堆肥を使う場合も、米ヌカボカシと未熟堆肥をいっしょに畑にふり、浅く10cmに耕し、3週間から1カ月おいていい菌をじっくり殖やして、つまり土ごと発酵させてから定植する。

 土ごと発酵という新しい着想によって、害ばかりが指摘されてきた未熟堆肥や、未分解の有機物の価値を見直す動きが広がっている。

▼「中熟堆肥を表層での土ごと発酵で活かす」編集部00年11月号214頁


放線菌堆肥(ほうせんきんたいひ)

検索語「放線菌堆肥」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

 放線菌を豊富に含み、耕地に施して病気を防ぐ力が強い堆肥。ジャパンバイオファームの小祝政明氏が開発。放線菌が生産するキチナーゼは、根腐萎ちょう病や青枯病などを引き起こすフザリウム菌の細胞壁のキチンを分解するので、これらの病気を抑制するほか、有機物分解能力に優れ、作物の生育促進にも働く。

 発酵過程の最初から最後まで中温発酵で、放線菌が優勢となる60度前後の中温に保つ。病気を引き起こす低温菌を死滅させつつ、高温にしないことで発酵が長時間持続し、有機物の分解を促す。

 耕地にはそこによく馴染んだ微生物がせめぎあって暮らしており、よその微生物が入り込む余地が少ない。放線菌堆肥は、堆肥自体が放線菌の馴染んだ専用の住処とエサでもあるので、耕地に定着して効果を発揮する。

 なお、この堆肥には同じく中温菌の枯草菌や酵母菌なども多く含まれ、放線菌と同様に働いていると考えられる。

▼「悪臭解消、驚異の減量! 堆肥化施設が生まれ変わった 放線菌堆肥・作り方編」編集部02年10月号214頁

 


中温発酵(ちゅうおんはっこう)

検索語「中温発酵」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

 一般に「堆肥」というと発酵温度が高いほうが良質になると思われがちだが、必ずしもそうとは限らない。小祝政明氏によると、堆積初期の温度が80度ぐらいまで上がる高温発酵では、糖分・デンプン・タンパク質など分解しやすいものだけが分解し、オガクズやバークなど難分解性の物質はほとんど分解せずに終わってしまう。いっぽう、最高温度が65度程度で、50〜60度で推移する中温発酵では、積算温度が高く、かつ温度が高すぎることによって生じるタンパク変性も受けづらいので、放線菌をはじめとした多様な菌が増え、さまざまな分解酵素を分泌する。その結果、分解しにくい繊維質などまで分解が進み、土壌の団粒化促進に大きく貢献する、という。

 こうした中温発酵を上手に進めるには、C/N比の調整やエアレーションなどによる空気(酸素)の供給、水分調整などが重要で、その有力な方法として戻し堆肥方式がある。

▼「高温発酵よりも中温発酵がよい」小祝政明02年10月号224頁

中温発酵のイメージ
中温発酵のイメージ

(もど)堆肥(たいひ)

検索語「戻し堆肥」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

 出来上がった堆肥をタネ堆肥として、これから発酵させる素材に混ぜ、堆肥づくりに利用する方法。完成した堆肥を戻すことで水分調整がやりやすくなり、有用な微生物が入れられるので堆肥の発酵も速くすすむ。水分調整などに利用するオガクズの使用量を減らせるので、堆肥づくりの経費を安くすることもできる。鶏糞を活用した放線菌堆肥では、完成した堆肥を戻すことにより、堆肥中に大量にいる放線菌が鶏糞を覆って、悪臭の発生を防ぎ、病害抑制効果の高い堆肥にしている。

 畜舎の床の敷料および水分調整材として堆肥を戻す方法も、戻し堆肥と呼ばれている。家畜の感染症を抑制し、糞尿処理量を減らし、敷料や水分調整材の購入費を削減し、悪臭を防止し、さらにはいい堆肥ができるなど、多くのメリットがあり、これに土着菌を活かせばさらに大きな効果が得られる。

▼土壌病害を防ぐ堆肥 中温発酵『信末堆肥』の作り方」編集部03年10月号198頁/「戻し堆肥でつくる地域で人気のサラサラ堆肥」黒木久俊00年3月号304頁

 

 


石灰追肥(せっかいついひ)

検索語「石灰追肥」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

 普通は作付け前に施用する石灰を、生育の途中に追肥する方法。石灰は土の酸性を中和するために使うという従来の考え方、つまり土壌改良剤としての石灰に対し、石灰は生育に必要な肥料分(カルシウム)であり、生育の中〜後期に多く吸収されるから、それにあわせて追肥することが大事、とする考え方。ポイントは、炭カルではなく硫酸石灰や消石灰などの溶けやすい肥料を選ぶこと。過リン酸石灰にも、硫酸石灰という効きやすい石灰が多く含まれている。生石灰を水に溶いてウネ間に散布、第一リン酸カルシウムを溶かした石灰水をウネに穴をあけて施用するなどの工夫もある。石灰追肥を実施した農家は、ジャガイモがよくとれた、トマトの尻腐れがでなくなった、水に沈むトマトができたなどの成果をあげている。カルシウムがよく効いた葉は病気にもかかりにくい。

 ただし、「石灰追肥」は応急処置であり、石灰が効く条件づくりこそ大事という農家も多い。そのために、まず石灰、苦土、カリの塩基バランスをとる。現状では、石灰やリン酸が多く、苦土が少ない畑が多い。その場合は苦土の積極施肥でバランスをとると、石灰もリン酸もよく効くようになる。石灰は土が乾燥すると効きにくいので有機物マルチで土の湿度を維持したり、有機物施用で土の保水力を高めることも重要。堆肥をつくるときに生石灰や過石を混ぜて一緒に発酵させる方法もある。微生物がつくる有機酸と石灰が結びついた「有機石灰」になり、そんな堆肥では安定した石灰の肥効が期待できる。

▼「カルシウム物語 足りない、吸われていない、どう効かせる?」94年10月号21頁

 


苦土の積極施肥

検索語「苦土の積極施肥」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

 これまであまり意識されてこなかった苦土(マグネシウム)を積極的に施肥すること。AML農業経営研究所の武田健氏らが提唱。苦土をやったら見違えるほど生育がよくなったという事例が各地で生まれている。

 現在は石灰や熔リン、あるいは堆厩肥などの入れすぎによって、リン酸や石灰、カリが過剰で、苦土が欠乏している畑が多くなっている。そこで、不足する苦土を硫酸苦土、水酸化苦土といった単肥で補う。苦土は葉の葉緑素の構成元素であり、酵素の成分でもある。また苦土はリン酸といっしょに吸収されるという性質をもつので、苦土の施用で、たまっていた「リン酸貯金」をおろすことができる。リン酸がよく効くようになると、やがてそれまでたまって動かなかった石灰やカリも吸われだし、石灰やカリを積極施肥するケースもでてくる。たまって動かなかった養分全体が動きだすようになるのが、苦土の積極施肥の醍醐味であり、そういう意味で苦土は「起爆剤」なのである。

 苦土単用で語られることが多い「苦土の積極施肥」だが、苦土とリン酸、苦土とカリと石灰の塩基バランス(5:2:1がいいといわれている)が大切で、バランスをとる形で苦土を生かすことが重要である。それには土壌診断や生育診断が欠かせない。武田健氏は苦土の積極施肥と糖度計診断は必ずセットで行なうことをすすめている。

▼特集「苦土でリン酸貯金をおろそう」02年10月号54頁/特集「苦土は起爆剤」03年10月号54頁

 


流し込み施肥

検索語「流し込み施肥」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

 田んぼの水口から肥料を流し込んで施肥する小力施肥法。手間がかからない、少量でも均一な施肥が可能、夜間や雨天でも施肥できる、安い単肥が使えるのでコストダウンが可能など、多くの利点がある。つなぎ肥も穂肥も、肥料を水口にドサッとあけるだけ。水口前の用水路をせき止め、そこで溶かして流せば水口に肥料が残ることもない。流し込み前は水深2〜3cmまで落水し、肥料を流したあとも10cmくらいまでかん水を続けると均一になる。粒状の化学肥料を、大型のポリタンクなどの中であらかじめ水に溶いておき、10mmのチューブで水口に落とすといったやり方もある。流し込み専用の肥料も発売されているが、単肥を中心とした、水溶性の比較的安い肥料で充分。家畜尿や海水なども流し込むといい。

▼「肥料ふりは水にまかせる 流し込み施肥」98年7月号カラー口絵/「安い、早い、雨でもできる、少量でもふれる流し込み施肥」安部清悟97年7月号202頁 

流し込み施肥、こんなやり方もある
水口の下に1斗缶などをおいて、その中に肥料を入れ、上から水を落とすだけ
中温発酵のイメージ

糖度計診断(とうどけいしんだん)

検索語「糖度計診断」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

 糖度計一本で作物の栄養状態がわかるという画期的な技術。これまで経験とカンに頼ってきた生育診断だが、糖度計なら経験年数を問わず、カンではなく数値で、簡単な生育診断ができるため若手や新規就農者を中心に人気がある。

 やり方は、作物の葉の付け根を糖度計の採光板で挟んでつぶし、糖度を読む。水分や養分は浸透圧の原理で薄いほうから濃いほうへ流れるため、糖度は生長点や花で高くなるのが正常。すなわち、正常に生育している作物は、どんなものでも、生長点に近い葉のほうが糖度が高く、株元のほうが糖度が低い。これが逆転していれば、水分や養分がなんらかの理由で作物に吸われていないことを示す。

 この糖度は施肥や天候条件、測定時間などによって変わるため、自分の目安をもつことが大事。自分の目安ができてくれば、早めの対策が打てるので、生育が健全になり、農薬を大幅に減らすこともできる。慣れてくれば、糖度計がなくても栄養状態がつかめるようになる。

 糖度=樹液(汁液)濃度または養分濃度であるとして、養分濃度診断と呼ばれることもある。

▼特集「糖度計診断で病気がへっておいしくなる」03年8月号152頁/「糖度計で生育診断虎の巻」武田健04年10月号155頁

2005年2月号のトップにもどる
現代農業のトップにもどる


ページのトップへ


お問い合わせはrural@mail.ruralnet.or.jp まで
事務局:社団法人 農山漁村文化協会
〒107-8668 東京都港区赤坂7-6-1

2005 Rural Culture Association (c)
All Rights Reserved