2004年9月第1回新彊兵団酪農技術交流訪日研修団

2004年9月21日から10月11日まで、新彊兵団酪農技術訪日研修団16名は北海道を中心にして日本の酪農家・酪農関連施設・農協を視察しました。以下は同行した農文協中国関係顧問張安明氏による視察総括と視察団員徐潔さんの視察感想文です。

新疆酪農訪日研修視察の総括

張安明

1.全体的な印象

1)酪農産業の全般が視察できた。

乳牛の育成(育成牧場)・飼育、生乳の出荷・加工・販売、排泄物の処理、淘汰牛の処理加工、酪農の機械・薬品の製造、そして政策部門、共済部門、農協組織等いわゆる酪農にかかわるすべての部門を視察することができたため、今後の新疆酪農全般の発展を考える上で、非常に意味が大きいと視察団は一番高く評価している。


2)多彩な酪農経営を知ることができた。

ゆとり酪農や自然共生型酪農等の視察を通じて、ひたすら乳量を追求している新疆酪農の経営者に新たな価値観が示された。自然との共生、酪農経営者の幸福、長期的な経営視点等が研修団に深い印象を与えた。


3)酪農経営の基礎的な技術から先端分野まで視野が広がった。

子牛の育成、搾乳技術、飼料作り等酪農経営の基礎的な部分について勉強ができたと同時に、搾乳ロボット、排泄物処理、乳質検査、原虫病研究等の先端研究分野にも触れることができた。


4)日本の農協組織に多大な関心を寄せた。

初日のホクレン訪問から質問が農協の細かな運営方法に集中した。酪農の関連についていえば、特に日本の指定団体制度(ホクレンの一元集荷多元販売)に関心が集まった。日本の農協にいろいろな問題があるかもしれないが、これからもう少し系統的に日本の農協を中国の農業関係者に紹介する必要があると今回の研修を通じてつくづく感じた。


5)研修団の真剣な姿勢が各研修先に好印象を与えたことで、今後の酪農交流に道を開いた。

各研修先では、研修団は、概況説明、施設案内を真面目に聞くだけではなく、とにかく熱心に質問する。質問の細かさ、鋭さに各研修先の担当者が驚いたと同時に、研修団の学ぶ意欲を感じた。そのため、研修団が継続交流を行いたいと希望するたび、各研修先も積極的に応じてくれた。特に標茶の酪農家達は新疆の酪農を見に行きたいと熱意をみせた。

研修団長は今後客員研究、長期研修等の形で北海道農政部等の部門と交流できる手ごたえを確実に手にしたと話している。

2.研修先ごとの研修概況(時系列)

ホクレン農業協同組合連合会

○主な対応者:鳴海(酪農畜産企画課課長)、黒館(酪農部生乳共販課考査役)

○主な研修内容:ホクレン生乳受託販売事業の概況、全国及び道内の生乳出荷動向、道内における用途別販売実績の紹介

○主な質問事項:農協の役割、全国、北海道及び市町村における各段階の農協間の関係、酪農補給金制度、家畜保険制度、農業共済制度、生乳の安全基準

○その他:研修団は日本の農協に多大な関心を持っている


北海道農政部畜産課

○主な対応者:加藤(酪農畜産課課長)、橋津(同主幹)、中兼(農政課主査)

○主な研修内容:北海道の農業、北海道の酪農の概況の紹介

○主な質問事項:酪農補給金制度、家畜保険制度、農業共済制度、生乳の安全基準

○その他:中国に親近感を持つ担当者は熱心に説明し、質問に答えてくれた。双方とも交流の意向を交わした


(社)北海道酪農検定検査協会

○主な対応者:金子(乳牛検定部部長)、熊野(生乳検査部部長)、竹本(札幌事業所所長)

○主な研修内容:牛群検定、生乳検査の歴史とその仕組みの紹介 検査設備の案内

○主な質問事項:検定検査協会の性格、検定検査結果の拘束力、検定検査における協会、農協、乳業メーカーの関係と役割

○その他:牛群検定によりよい牛が選抜され、乳牛全体の質向上に貢献していることが研修団の印象に残った。


株式会社タカキタ札幌支社

○主な対応者:末久(副支社長兼製造部長)、中山(技術部長)、小松田(営業部部長代理)、石川(貿易部長兼東京営業所所長)

○主な研修内容:会社の概況説明、製造工程の案内、製品の紹介

○主な質問事項:各製品の機能と販売価格

○その他:研修団は何種類の酪農機械を強い関心を示し、そして新疆酪農の特徴及び牧草機械の使用状況を紹介し、新疆に合わせて牧草機械の開発も要望した。タカキタさんは近いうちに新疆の酪農視察を実施し、その上で対応を考えると返事した。


よつ葉乳業株式会社十勝主管工場

○主な対応者:福田(管理部総務課課長)、若原(同係長)

○主な研修内容:工場の概況説明、製造工程の案内、製品の紹介

○主な質問事項:生乳検査の項目、農協との関係、乳質と乳価の関係

○その他:研修団は乳業メーカーと農協の決済において乳質と乳価がどのような関係をもつかについてたくさん質問した。中国では、この点において乳業メーカーと酪農家の間に問題が多発していると見られる。


帯広畜産大学

○主な対応者:石橋(理事・副学長)、岡本(地域共同研究センター・センター長)

○主な研修内容:大学及び地域共同研究センターの概況説明、新疆との交流状況の紹介、新疆からの留学生との懇談、畜産フィールド科学センター、原虫病研究センターの見学

○主な質問事項:様々なサイレージの作り方、原虫病の研究状況、新疆からの留学生の生活状況

○その他:大学は研修の案内を基本的に新疆からの留学生に任せた。そのため、研修団と留学生との交流が出来た。そして研修団の一部団員は原虫病の研究状況に大きな関心を示した。特に超一流の原虫病研究設備を熱心に見て回った。


釧路地区NOSAI標茶支所

○主な対応者:大和田(標茶町農協代表理事専務)、松口(支所長)、久保田(同獣医師)

○主な研修内容:標茶町酪農の概況説明、NOSAI仕組みの紹介、手術室、検査室、薬品倉庫の案内、酪農家の見学、地元との懇親会

○主な質問事項: NOSAIの仕組み、酪農家とNOSAI運営の関係、手取りの乳価、各酪農家の収入状況 ○その他: NOSAI標茶支所はNOSAIの仕組みについて詳細に説明した。NOSAIの仕組みに関する研修団の質問がほとんど解消された。そして多彩な酪農経営を目の当たりにして、研修団の各団員はこれまでの酪農経営理念を考え直す必要性を感じた。


新彊兵団訪日研修の感想

徐 潔


新彊兵団科委、新彊兵団農業局、新彊農墾科学院の管理者及び研究員、新彊兵団の農牧場の畜牧担当の管理者と専属職員が、新彊農墾科学院王新華副院長の引率のもとに、兵団と新彊の酪農の水準を向上させるため、国家外専局の批准を得て、新彊兵団高生産乳牛二本立て飼料給与法技術プロジェクト訪日研修団に参加しました。一行16名は2004年9月21日から10月11日まで日本の北海道で乳牛飼育の研修を行いました。私自身も学習者の一人として研修の全課程に参加しました。研修についての個人としての感想を農山漁村文化協会に簡単に報告します。


私たちの訪日研修のために農文協が手配した学習方法は非常に効果的で、私たちは日本酪農の発展の歴史を知ることができただけでなく、日本酪農の飼育管理全課程について学習し、理論と実践を結びつけることができました。学習を通じて、日本酪農の歴史はすでに130年余りになるが、真に大規模化が始まったのは前世紀60年代中期であることを知りました。特に北海道開発と国民の身体素質向上という観点から、日本政府は酪農に対する一連の補助や優遇政策及び法律を制定し、酪農業発展のために酪農家を支援しつつ、国民の牛乳と乳製品の消費を促進してきたこと、これによってこの40年の間に日本の酪農は急速に発展し、大規模化を実現したことを知ることができました。この15年の間、牛乳の生産量と品質は安定的に増加向上し、酪農関連の農業機械や乳製品加工なども同様に比較的高い水準まで発展してきています。

日本での学習期間中私たちが最も感銘を受けたのは、日本政府が国民の身体素質向上を非常に重視し、あらゆる点で人間を基本としていることでした。日本人は、自分たちの牛乳生産量はアメリカやイスラエルに及ばないが、必要とする労働力はアメリカやイスラエルよりはるかに少なく、牛乳の品質も世界トップクラスであると主張していました。

農協は、経営条件や農民の社会的地位向上のために、農民が相互協力の精神に基づいて設立した組織です。全国の各県市町村にはみな自分たちの農協があります。北海道だけでも153個の農協があります。農協の管理者は全て農協のメンバーから選挙によって選出され、農協には自分の生産基地や産業があり、農協に加入した酪農家のために、生産資金、飼養技術、獣医技術、生産物販売など一連の問題を解決することができます。農協は農業と牧畜業発展において代えることのできない重要な役割を果たしているのです。全国都道府県の各レベルの農協の間には横のつながりと協力関係があります。通常、町レベルの農協では解決できない問題は道レベルの農協と協力して解決し、道レベルの農協の解決できない問題は全国レベルの農協と協力する形で解決することができます。このような協力関係は一定の条件や規則の基礎の上に成り立っています。農協の資金は、第一に農民の出資金によって賄われており、第二に販売と投資となっています。農協は牛乳と乳牛の検査鑑定結果を通じて農民を指導し、牛の質や牛乳の生産量と品質を改善させます。

農業は気候などの自然要因に最も影響を受けやすい産業であり、一戸一戸の農家では自然災害による損失を挽回することがとても困難です。農家が安定的に経営を行うために、日本政府は農業保険制度を設け、農業共済組合を設立させました。農業共済組合の会員は農家であり、組合はあらかじめ農家に一定の保険料を収めてもらい、農家が災害や家畜の疫病に遭遇し損失を被った時に、農家へ保険料を支払い、農家の経済的損失を減少させます。被災農家が継続して安定的経営を行えるように、政府も一部の費用を補填します。現在北海道には21の農業共済組合があり、酪農のリスク防御に重要な役割を果たしています。

日本政府の酪農発展における役割は、1)酪農家補助金政策、2)指定牛乳販売組織です。これらの政策によって酪農生産は後顧の憂いを解消でき、日本酪農は50年に渡って安定的に発展できたのです。  今回の学習を通じて、二本立て飼料給与法のエッセンスは乳牛の健康であり、良好な繁殖能力と乳生産能力が有れば、飼育農家も経済的利益をあげることができるということが解りました。この技術の基本は、乳牛に科学的に粗飼料を与え、乳牛の繁殖疾病を極力減少させることです。しかしこれを実現し牛を本当に良く飼育するには、酪農家や政府、関係各業者による長時間の努力を経なければならないでしょう。二本立て飼料給与法はその中の一部分に過ぎないのです。

我が国や兵団の酪農発展の状況と比較して、私たちの酪農生産にはまだ大きな差があり、発展の余地を大きく残しており、できることがたくさんあります。技術の観点から見ても、政府の政策の観点から見ても、日本の経験には私たちが学ぶべきものがたくさんあります。私たちは自分たちの国、地方、或いは酪農発展の具体的状況に基づいて、日本酪農の発展過程の経験を選択し学ばなければなりません。特に日本各地の農業共済組織や農協などの制度は非常に素晴らしく、これらが持ついくつかの成熟したやり方や経験及び理論体系は、私たちにとって学ぶべき価値があります。


私たちの今回の日本研修は農文協が手配したものです。研修の方法はさまざまで、室内での学習のみならず室内と現場を結びつける方法を採用して、さまざまな形式、さまざまな飼育方法の牧場をじっくり視察することができました。特に高原牧場や研修牧場などさまざまな乳牛飼育施設を重点的に視察しました。この他、農業試験場、農業共済組合、農協、獣医検査所、牛乳加工工場、食肉加工工場、消毒剤加工工場、農機製造工場などを視察し、研究技術者と話をすることができました。団員達はみな、多くの先進的養牛管理技術と経験を学ぶことができ、知識を増やすことができただけでなく視野を大きく広げることができたと感じました。

今回の研修は、午前中に講義、午後には連続して三種類の異なった乳牛飼育施設を見学するなど、時間配分に余裕が無く、内容も多岐に渡っていた。とても疲れ、時に食事の時間が遅れたりもしたが、団員は恨み言を言わず積極的に学習し、滅多に得ることのできない貴重な機会を大事にしました。講義の際には先を争って質問し、非常に活発な雰囲気を保っていました。日本側の同行者も「多くの視察団や研修団を受け入れてきたが、この団が最も真剣に学習し、講義中の質問も最も多く、座談会でも最も熱心です。」と話していました。全くこの通りです。我が国の酪農発展の水準はまだとても低く、バランスもとれていません。先進国、特に日本と比較しても本当に遅れています。私たちには、中国国民の身体素質の向上と中国酪農業の発展のために、海外の科学的酪農管理技術、先進的技術、先進的で実用的な経験の学習に力を尽くし、それらを持ちかえり、現地の実情と適合させ、学び取った新技術・新知識・新方法を実践に応用し、兵団の酪農発展のために貢献する責任があるのです。

今回の研修を通じて、私たちは日本の――特に北海道の酪農発展の過程と現状についてざっと知ることができ、強く印象に残りました。同時に国家外専局が私たちの研修経費を支援してくださったことに感謝します。更に農文協が私たち研修団の日本研修のために、たくさんの準備を行ってくださったことに感謝します。お陰様で、私たち団員16名は日本での学習期間中の研修、衣食住、観光に十分満足でき、綿密に組まれた計画によって何の事故も無く過ごすことができました。また各方面にはいろいろと心配りしていただき、訪れるところ全てで熱烈な歓迎を受けることができました。そして、現在発展中の日本酪農の最新の知識、最新技術、最新の方法、新しい経験、最新情報を、私たちが学んだり、見たり、聞いたりできるように最大限の努力を払ってくださいました。私たち研修団が訪問した時中国の国旗と日本の国旗が掲げられているところが三つありました。これを見て私たちは、中日民間文化交流と中日両国人民の友好関係が人々の心にしっかりと根付いたことを感じました。そして、両国人民の友好関係が永遠に続いていくことを感じました。


ここでもう一度、農文協全職員に対して感謝申し上げます。私たち新彊兵団訪日酪農飼養技術研修団の全団員に代わって、私たちを受け入れて下さった酪農家、農協、企業、工場及び道庁、大学などの関係各部門の皆様に感謝申し上げます。私たちは、今回の中日民間文化交流によって、農文協が我が兵団と良好な協力関係を打ち立て、我が兵団の酪農発展の状況を視察し、兵団に"酪農発展基地"を建設し、共に両国酪農及び牧畜業の発展を促進するよう希望しています。

ありがとうございました。


新彊兵団高生産乳牛二本立て飼料給与法技術訪日研修団

2004年10月15日


戻る