- 〈実践報告1〉地域に生きる力を身につける六年間の食農全体計画
山形県・米沢市立三沢西部小学校校長 伊澤良治- 〈実践報告2〉地域で育てる子どもたち――おとなが楽しむ・子どもを巻き込む
高知県南国市・農家 川村一成- 〈実践報告3〉地場産学校給食だからできる体験を
埼玉県・新座市立西堀小学校 栄養職員 猪瀬里美- 〈実践報告4〉地域で全世代をつなぐ食農教育の実践――住民参加型の地域づくりの視点から
鹿児島県串良町・柳谷自治公民館長 豊重哲郎- 〈実践報告5〉食と農がもつ学びの可能性
東京都・狛江市立緑野小学校教諭 田揚江里- 【質疑応答】
- 【コメント】
- 「地域の未来を切り拓く学力」の視点から
上越市教育長 小林毅夫- 「持続可能な開発のための教育(ESD)」の視点から
ESD-J事務局長 村上千里
- 神田嘉延(かごしま食農育ネットワーク)/藤本勇ニ(とくしま総合的な学習研究会)/常山昭男(KOOネット)/森川千鶴(おつまみ作り隊)/勝野美江(農林水産省)/田村学(文部科学省)/有賀茂人(農家)/千葉しのぶ(霧島食育研究会)/石田周一(グリーン)/守友裕一(宇都宮大学)
2005年7月9日、東京都江東区の東京ビックサイトで「地域に根ざした食農教育ネットワーク」設立記念フォーラムが開かれ、全国から教員、農家、栄養士、研究者、自治体職員など110名が参加し、大いに盛り上がりをみせた。
今なぜ、地域に根ざした食農教育なのか。それは、子どもも大人も、食と農という人間の生活の原点にさかのぼって体験を含めた学習をすることで、自然と人間、人間と人間の関係という根源から、生きる力を育みつつ、個性豊かな地域社会を形成していくことが重要だからである。(詳しくは『農村文化運動』177号を参照)。
こうした想いを背景に、本号では、フォーラムの記録を特集することで、地域の未来を切り拓く食農教育と、ネットワークの可能性を追求したい。
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本号の冒頭では、本ネットワークの代表委員である嶋野道弘氏(文教大学教授・前文部科学省主任視学官)が、本ネットのもつ意義を三つの視点から確認し、あらためてその可能性を述べている。また第I部では、内山節氏(哲学者・立教大学大学院教授)が「自然と人間、共同体のあり方から教育を見直す」と題した記念講演を行なった。この講演では、近世以降の日本の歴史を思想史として振り返りながら、地域共同体社会における人間の多層的な結びつきと、村がもつ教育力の重要性が指摘され、その上で農業や一次産業が見える暮らしの取り戻しと、地域教育の再創造が提起された。
そして第II部では小学校長、農家、栄養士、自治公民館長などさまざまな立場から、先進的な実践報告がなされ、食と農で地域を支える組織づくりや、全世代を巻き込んだ活力ある地域づくり、地域での子育て、地場産給食にかける学校栄養士の活動などが生き生きと語られている。
また、実践報告を受けた質疑応答では、食農教育を最初いやいや始めた男性教師が、子どもたちや地域のひたむきな取組みに接して自己変革をしたという質疑に拍手がわいたり、「食農教育を単に子どもたちの食農体験にとどめず、近代化のなかで失われてきたものを取り戻す大人自身の運動と重ね併せて捉えることが必要だ」と食農教育を深部から捉える発言が出るなど、活発な議論が展開された。その臨場感をご感得いただきたい。
さらに第III部では、地域研究会や協力団体の元気な主張から、全国各地で動き出している食農教育のネットワーク形成の広がりと深まりが情熱的に示された。
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このフォーラムの盛り上がりを受けて本号に登場している「かごしま食農育ネットワーク」、「とくしま総合的な学習研究会」、新潟「KOOネット」の地域研究会に続いて、山形でも報告者の伊澤良治氏を中心に、また秋田も組織の立ち上げが始まっている。こうした食農教育の運動を足元の地域からすすめていく上で本特集がお役に立てば幸いである。
なお本ネットワークの詳細や入会の方法等は、本号62頁、および「食農ネット」のホームページ(http//syokunounet/)をご覧ください。
農文協文化部