『農村文化運動』 180号 2006年4月

「地域に根ざした食育」の提案


[目次]

はじめに

序 「食育元年!」――全力をつくして「食育の推進」に取り組もう

I 農家の自給の思想と食意識の変革
――『日本の食生活全集』が提起したもの

 一、「農村空間」が新しい時代をつくる――農文協創立65周年を記念して

 二、無限に広がる食と農の世界――『日本の食生活全集』完結を記念して

 カコミ 日本の食生活全集 刊行にあたって

II 地域に根ざした食育を「農村空間」から展望する

 一、「ふるさと力」が「教育」をどんどん変えはじめた

 二、「総合的な学習の時間」成功のため、村の小中学校の図書館を本気で整えるとき

 三、21世紀の「むら」づくり――学校区コミュニティーの形成

 四、地場産給食で、「地域に根ざした食育」を

 五、地域のみんなで「食のビジョン」づくりを――農業・農村の「あさって」を考える

 六、都会人の食意識を変えて、農業・農村の未来をひらく――農文協の新雑誌『うかたま』に込めた思い

III 21世紀社会の展望――個性豊かな地域社会形成のために

 農村と都市の交流・融合で、21世紀の個性的な地域社会をつくる

付 農水省の食育関連補助事業(2005年度)一覧


はじめに

 2005年、食育基本法が施行されて内閣府に食育推進会議が設置され、食育推進基本計画が策定されようとしているが、今後、県段階や市町村段階でも同様に食育推進計画が策定され、官民をあげて食育が推進されていくはずである。その意味で2006年度は「食育元年」にあたる年だといってかまわない。

 そこで本号では、食育についての農文協の考え方を明らかにするために、「序」で、食育基本法の意義を考察し食育の全面的推進の立場をのべた後、以下の3つの柱を立て、農文協論説委員の手による食育関連の『現代農業』「主張」を整理して掲載することにした。

・第I部 農家の自給の思想と食意識の変革――『日本の食生活全集』が提起したもの

・第II部 地域に根ざした食育を「農村空間」から展望する

・第III部 21世紀社会の展望――個性豊かな地域社会形成のために

 農文協が食意識の変革に取り組むにいたった直接の契機は10年の歳月をかけて完成させた『日本の食生活全集』の編集と普及であった。日本人の食生活が商品経済の影響をさほど受けていない昭和初期に日本の伝統的な食生活の原点を求め、その当時台所に立っていた農家のおばあさんたちがご健在のうちに、食事づくりの聞き書きをし、後世に残そうとしたのである。そこで見えてきたのは、地域の自然を生かして食の自給を行ない一家の食生活をまかなう農家の女性の知恵であり、地域の自然と調和した地域固有の食文化だった。

 そこで農文協は大量の輸入農産物にささえられた飽食時代の食のゆがみをただすとともに、農村空間がもつ根源的意味を明らかにし、農都両棲社会の形成など農村空間が領導する自然と人間の調和のための「農村空間革命」を提起してきたのである。

 食育基本法は、食と健康の視点だけでなく、食文化と地産地消、地場産給食、食料自給などトータルな視点で食育をすすめようとしているが、これらの問題は、心ある個人や団体が基本法に先立って自主的にすすめてきた運動でもあった。基本法ができたいま、それぞれの運動の情報を共有して相互理解を深め、それぞれが自分の運動を掘り下げて、場合によっては連携しつついっそう活発に食育の推進に取り組みたいものだと思う。

農文協文化部


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