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あっぽづくり *1

 生まれ、育った土地、ふるさと。人はだれもふるさとをもっています。
 そこで食べるふだんの食事、盆、正月、祭りの食事は、それぞれがふるさとの味です。ふるさとの味はその土地土地、家々で<家庭料理>として伝えられてきました。いたるところにふるさとの家庭料理があります。

 南北3000キロに及ぶ日本列島では、食べものがじつに多様です。北の北海道と南の九州・沖縄で異なるのはもちろん、同じ県内でも山寄りの地域と海寄りの地域、農村と都市によって異なります。つくる材料だけでなく、つくり方から食べる時期、食べ方なども異なっています。それゆえふるさとの家庭料理は、それぞれの土地の個性、暮らしのスタイルを表現した味なのです。

 このシリーズは、全国350余地点で、大正末から昭和初期に家庭の”おさんどん”を担った方々から聞き書きし、その料理を再現していただいたものです。それらの食べものを、すし、もち、鍋ものといった料理別と、朝ごはん、お弁当、正月料理といったテーマ別に編成しました。これによって日本列島に伝承されてきたふるさとの味を通覧することができます。

 本シリーズはまた、料理を単に料理(レシピ)としてだけではなく、<食事(たべごと)>の世界として描きました。季節の移ろいや巡りくる行事、食材。子どもの成長と家族の安寧を願う主婦の思い。それらを食卓に反映し、あるいは活かす、<暮らしの営みとしての家庭料理>を再現しています。 

 そんな<ふるさとの家庭料理>を、日常の食事づくりや晴れの日の食べものづくりのヒントとして活用していただければうれしく存じます。

*1 写真:あっぽづくり(福井県大野市)
すなな(左奥の皿)を入れてあえもんあっぽを、小豆あん(左手前の皿)を入れて小豆あっぽをつくる。


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