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農文協増刊現代農業>定年帰農2006 地域に生きる「もうひとつの人生」_編集後記

定年帰農2006 地域に生きる「もうひとつの人生」

現代農業2006年5月増刊

【編集後記】

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『定年帰農 6万人の人生二毛作』の発行から早8年。来年からの「2007年問題」を目前に控え、各自治体は競い合うように「団塊世代誘致策」を打ち出し始めた。だが、本号で結城登美雄さんが指摘しているように、「どこかがちがう」という違和感をぬぐいきれない。それらは高度成長期の企業誘致やバブル期のリゾート誘致同様の、「外部の力頼み」の地域再生策ではないか。

 そんなことを疑問に思いながら、大分県主催の「ふるさとづくりフォーラム」に参加したとき、興味深いことを知った。同県のNPO法人数は、人口当たりで九州一なのだという。そのことを知って、これまで本誌で紹介してきた同県の事例にひとつの共通性があることに気づいた。たとえば、人口2800人の姫島村は全国一安い給与で206人の役場職員の仕事を確保(05年5月号『グリーンライフが始まった!』)。また、湯布院の旅館「亀の井別荘」では20室で100名以上の従業員が働き、「玉の湯」では20室で80人以上、「夢想園」では30室で80人が働いている(04年11月号『なつかしい未来へ』)。あるいは旧安心院町の松本集落は、56世帯のうちその3割に当たる16世帯がU・Iターン(05年8月号『若者はなぜ、農山村に向かうのか』)。

 これらに共通することを、「亀の井別荘」社長の中谷健太郎さんの言葉を借りて言えば、「村の、つまり地域の経済にとって大切なのは、その経営体が何人の能力を支えていけるかです」ということだろう。だが昨今の国の農政は、逆に「どれだけ農家の数を減らせるか」をめざしているかに見える。一方で地域の農家の数を減らし、一方で過疎対策、そして団塊誘致という矛盾。

 旧清川村産業課長の衛藤康晴さんは、現役時代も定年後も、どれだけ小さな農業で、どれだけ多くの人が地域に生きていけるかを、自らの身をもって村の内外に示してきた(本号)。地域に再びにぎわいを取り戻すのは、農業の規模拡大でも団塊誘致の甘言でもなく、「このように生きたい」と思わせる「地域に生きる『もうひとつの人生』」の発信によるのではないか(甲斐良治)

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