月刊 現代農業
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ラベルに書いてないこと
・予防剤と治療剤の話 …… 72ページ
・残効の話 ……… 84ページ
・混用の話 ……… 88ページ
・値段の話 ……… 92ページ
・有機JASで使える農薬の話 …… 96ページ
・農薬の捨て方の話 …… 100ページ

農薬ラベルを読み解く
・農薬の名前の話 …… 46ページ
・成分の話 ……… 50ページ
・登録の話 ……… 58ページ
・剤型の話 ……… 64ページ

「成分の話」コーナーより

商品名:ジマンダイセン水和剤
農薬には、いろんな名前があるんデスネ

Q 農薬を名前じゃなくて「成分」で呼んだり、数えたりすることもありますよね?
「成分」って何のことかイマイチわからない……。

A 農薬は病害虫に効く有効成分と、その働きを助ける補助剤でできています。

有効成分は農薬の心臓

 例えばジマンダイセンの成分は、マンゼブ80%と界面活性剤等20%。病原菌に効く有効成分はマンゼブで、界面活性剤等は補助剤だ。ジマンダイセンで病気が抑えられるのは、マンゼブが病原菌に触れて、おもに胞子の発芽を抑制、植物体に侵入するのを防ぐから。農薬の心臓は、この有効成分だ。

 ちなみに「マンゼブ」は正式な化学名(化学構造に基づいた名前)じゃない。化学名はとーっても長くてとても覚えられないので、農薬の有効成分名には、国際的に通用する略称が使われている(成分の略称を「一般名」「ISO一般名」と呼ぶこともある)。

 マンゼブだって十分とっつきにくいが、その化学名に比べれば、はるかにマシといえるようだ。

ジマンダイセンの補助剤は展着剤

 一方、補助剤とは、有効成分が作物に付着するのを助けたり、害虫の体内に入りやすくしたりするための成分のこと。ジマンダイセンの場合は界面活性剤なので、展着剤のようなものが入っていると思えばいい。補助剤には他に、乳化剤や溶剤、粘土鉱物や炭酸石灰などもある。なかには葉の表面のワックスを溶かしたり、クチクラ層を傷めたりする補助剤もあり、薬害の原因となることもある(89ページ)。

A 名前は違うけど有効成分が同じ薬剤はけっこういっぱいある。それらを一覧にしてみました。

対象の品目や病害虫、剤型が違う

 商品名は違うのに成分は同じ。じつはそんな農薬がけっこういっぱいある。大阪府の草刈先生によると、いくつかパターンがあるらしい。

 ひとつは、特許切れの有効成分で作ったコピー剤の「ジェネリック農薬」(92ページ)。

 もうひとつは、対象作物によって薬剤を作り分けたパターン。殺菌剤のアフェットとフルーツセイバーは同じ成分だが、それぞれ主に野菜用、果樹用に特化して登録をとっている。

 また、成分含有量を大きく変えて、対象病害虫や散布方法を変えているパターン(ライメイとオラクルなど)、剤型によって名前を変えているパターンもある(モレスタンとパルミノなど)。たくさんあるので、対象作物が違う剤を除いて、主な農薬を一覧にしてみた(左ページ)。

名前だけ違うまったく同じ薬剤もある

 中には、売り先によって名前を変えているだけのパターンもある。例えばネオニコチノイド系の殺虫剤スタークル顆粒水溶剤とアルバリン顆粒水溶剤(ともに)は成分も剤型も登録内容もまったく一緒。ジェネリック農薬ではなくて、開発メーカーらがスタークルは農協(系統)、アルバリンは商系経由で販売するために、名前だけを変えているのだ。

 このパターンもけっこうあって、ガスタード微粒剤とバスアミド微粒剤(ともに。ガスタードが農協経由)や、混合剤でいえばカンパネラ水和剤とベネセット水和剤(カンパネラが農協)などがある。

 これは本当に紛らわしいと思う。農協と資材屋、両方から農薬を買っている農家も多いはず。さまざま事情もあるようだが、農家のためにも、同一成分散布による抵抗性回避のためにも、ぜひちょっと考えてもらいたい。

有効成分対象同じ有効成分を含む農薬
MEP ガットキラー、ガットサイドS、サッチューコートS、スミチオン、スミパイン、パインサイドS
TPN ダコソイル、ダコニール、パスポート
アセフェート オルトラン、ジェイエースジェネレートスミフェート
アミスルブロム オラクル、ライメイ
イソキサチオン TDエース、カルホス、カルモック、ネキリエースK
イミダクロプリド アドマイヤー、ガウチョ、タフバリア、ブルースカイ
エトフェンプロックス アークリン、サニーフィールド、トレボン
カルボスルファン アドバンテージ、ガゼット
クロチアニジン ダントツ、ベニカ
シアントラニリプロール エクシレル、エスペランサ、バズ、バディート、プリロッソ、ベネビア、ベリマーク
シクロプロトリン シクロサールU 、シクロパック
ジノテフラン アルバリン、スタークル
シペルメトリン アグロスリン、イカズチ、ゲットアウト
シメコナゾール サンリット、モンガリット
ストレプトマイシン アグリマイシン、アグレプト、ストマイ、ヒトマイシン、マイシン
ダイアジノン エキソジノン、ショットガン、ダイアジノン
チアメトキサム アクタラ、アトラック、クルーザー
チウラム アンレス、キヒゲン、チウラム、チオノック、トレノックス
チオシクラム エビセクト、リーフガード
テブコナゾール オンリーワン、シルバキュア
フルジオキソニル ウイスペクト、セイビアー
フルスルファミド ザ・つまごい、スキャブロック、ネビジン
フルベンジアミド フェニックス、ペガサス
プロベナゾール Dr.オリゼ、オリゼメート
ペルメトリン アディオン、エンバーMC、ガードベイトA、カダンAP
ホスチアゼート ガードホープ、ネマトリン、ネマトリンエース、ネマバスター
マンゼブ グリーンダイセン、ジマンダイセン、ペンコゼブ
ミルベメクチン コロマイト、ダニダウン、ダニボーイ、ミルベノック
メタアルデヒド スネック、ナメキール、ナメトックス、マイキラーほか
メトミノストロビン イモチエース、オリザトップ、オリブライト
有機銅 オキシンドー、キノンドー、サンキノリン、ドキリン、バッチレート、有機銅

※いずれも同じ作物に登録のある同一成分剤。    はジェネリック農薬

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2018年6月号
この記事の掲載号
現代農業 2018年6月号

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