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「アクを除いて色よく仕上げる ナスジャムのもっと上手なつくり方」コーナーより

熊毛農産加工グループのナスジャム。地域特産のナスをたっぷり使った絶品ジャムだ(写真はすべて依田賢吾撮影)

熊毛農産加工グループのナスジャム。地域特産のナスをたっぷり使った絶品ジャムだ(写真はすべて依田賢吾撮影)

皮は剥かないほうがよかった!

山口県周南市・熊毛農産加工グループ

大反響のジャムがさらに進化

 周南市特産のナスを使ってつくる熊毛農産加工グループのナスジャムづくりはもう10年以上も続いている。そのつくり方は、2011年と2012年の2度にわたって、本誌で紹介してもらった。

 ナスの皮を剥き、皮だけを別に煮て色汁を作り、さらにレモン汁を加えて発色させる。皮を除いた実のほうは砂糖と一緒に煮詰めておき、そこに発色させた色汁を入れる。これで、きれいなナス色でリンゴのような味わいのナスジャムが完成だ。

 このアイデアに「ナスでこんなにきれいなジャムがつくれるなんて」と当時も大きな反響があり、実際に挑戦した読者も多かった。

 あれから6年。もともと誰でも簡単につくれるナスジャムだったが、「さらに簡単なつくり方があると最近わかったの。手間も減って断然ラク」と代表の外山マツエさん。さっそく新しいつくり方を教えてもらった。

熊毛農産加工グループのみなさん。右から西村照子さん、田村和江さん、外山マツエさん、大園美由紀さん(写真はすべて依田賢吾撮影)

熊毛農産加工グループのみなさん。右から西村照子さん、田村和江さん、外山マツエさん、大園美由紀さん(写真はすべて依田賢吾撮影)

皮を剥かないから断然ラク

新・ナスジャムのつくり方
(巻頭カラーの写真ページでも紹介しています)

材料(配合比)

 ナス(イチョウ切りまで済んだ状態で)1kgに対して、砂糖400g、レモン汁150ミリリットル

手順

(1)ナスをよく洗い、ヘタと尻の部分を切り落とす。傷などがある部分は取り除く。中にタネがあるナスは使わない。

(2)縦に4等分に切ったら、厚さ1〜2mmほどにイチョウ切り。

(3)切ったナスをボウルに入れ、分量の半分の砂糖を加えてよく混ぜる。どんどんナスから水分が出てくる。しんなりするまで10分ほどおくと煮詰めやすい。

(4)鍋にナスを移し替え、強火にかける。焦がさないようにしゃもじなどで底からよくかきまぜながら煮詰めていく。出てくるアクはアク取り器などですべて取る。

(5)30分ほど煮たところで残りの砂糖を加え、さらに煮詰めていく。

(6)砂糖がよく混ざったのを確認して、レモン汁を加える。魔法がかったように色がみるみる変わってきれいなピンクになる。

(7)糖度計で確認し、砂糖を加えて調整もしながら、48度になるまでさらに煮詰めていく。48度を超えたら火を止めて完成。

 新しいナスジャムのつくり方を上にまとめた。今月号の巻頭カラーでも紹介したのであわせて見てほしい。

 以前と変わったのは「皮を剥かない」ところだ。それまで色よくなめらかなジャムをつくるためにと、あたりまえのように皮を剥いていたが、ジャムの販売で日頃世話になっている方から「皮を剥かなくてもできるはず」と提案されたのがきっかけ。実際に挑戦してみたところ、見事に色のよいナスジャムができてしまったのだそうだ。

 たとえば10kgのナスでジャムをつくれば、100本以上のナスの皮を剥かなくてはいけない。色汁を別に作る手間もかかる。それらがまったく必要なくなった。「年も重ねてきたから、作業が少しでもラクになるのは本当にうれしい」というのは、メンバーみんなが感じていることだ。

ナスは皮をつけたままイチョウ切り。朝採れたばかりの新鮮なナスなので切りやすい。4人がかりで一気に刻んでいく

ナスは皮をつけたままイチョウ切り。朝採れたばかりの新鮮なナスなので切りやすい。4人がかりで一気に刻んでいく

 さらに「皮ごと使うので、むしろできあがりのジャムの色のムラが出にくくなった」と外山さん。また、皮が持つ成分もムダなく入るところがいいとも思っている。

 ナスは1〜2mmの厚さにイチョウ切りして細かくなるので、煮詰めれば軟らかくなり、皮の歯触りが気になることもない。

 以前は皮と実を別々に煮ていたところが一度ですむようになり、砂糖とレモン汁の量も減らせた(それぞれナス1kgに対しての割合が500g→400g、230ミリリットル→150ミリリットル)。

鍋で煮る間に出たアク。9kgのナスでつくると写真くらいのアクが出る。これをしっかり取るのが大事なポイント

鍋で煮る間に出たアク。9kgのナスでつくると写真くらいのアクが出る。これをしっかり取るのが大事なポイント

アクを取りながら煮詰めるだけ

 ナスジャムに使う材料はナスと砂糖とレモン汁だけ。細かく切ったナスに砂糖を加えると大量の水分が出てくるので、それだけで鍋で煮詰めてジャムをつくる。 

最後は糖度計で確認する。できたジャムは密閉で1年間は保存できる

最後は糖度計で確認する。できたジャムは密閉で1年間は保存できる

 10kgのナスでつくる場合、ヘタなどを取り除いて細かく切ると、鍋に入れる時には約9kg。火にかけてジャムに煮詰めるのに約1時間。この間にどんどん出てくる大量のアクを取らないとジャムの色がくすみ、味も悪くなる。これを丁寧にすくい続けるのも、おいしく色よく仕上げるポイントだ。煮詰め終わると7〜8kgのナスジャムができる。

糖度計がないときは、ジャムをスプーンですくって水に落としてみるとよい。十分煮詰まってジャムになっていれば、水面に広がらずに水底まで固まって落ちるのでわかる

糖度計がないときは、ジャムをスプーンですくって水に落としてみるとよい。十分煮詰まってジャムになっていれば、水面に広がらずに水底まで固まって落ちるのでわかる

「ペクチンを入れて硬くして、もっと煮詰める時間を短くすることもできるけど、素材の味をできるだけ活かしたいから入れないのが私たちのこだわり」だそうだ。

地域で採れたイチゴとキウイを使って、現在3種類のジャムをつくっている。どれも1本100g入り税別350円で、直売所などで販売

地域で採れたイチゴとキウイを使って、現在3種類のジャムをつくっている。どれも1本100g入り税別350円で、直売所などで販売

 今では地域の小学生は3年生になるとナスジャムづくりを体験するし、ナスジャムがふるさと納税の返礼品にも選ばれた。さらに、昨年からナスジャムづくりに、新規就農した大園美由紀さんが参加してくれるようになった。ますます盛り上がるナスジャムづくり。この楽しさはまだまだ続く。

 この取材時に撮影した動画が、ルーラル電子図書館でご覧になれます。 https://lib.ruralnet.or.jp/video/

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2018年9月号
この記事の掲載号
現代農業 2018年9月号

特集:秋、キノコにわくわく
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農家が教える 手づくり加工・保存の知恵と技 農家が教える 手づくり加工・保存の知恵と技』農文協 編

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