『農村文化運動』 183号 2007年1月

「小さな加工」の時代がはじまった
――農家の個性を生かす農産加工の経営戦略――


[目次]

はじめに

I 多様で個性的な「小さな加工」が生み出す豊かな暮らし

一、小さいことはいいことだ
――農村加工の強みとよさを生かし、地域農業を豊かにしよう
株式会社 東洋商会・全国農産加工開発研究所 高木敏弘

コラム 添加物の塊のような加工食品は子どもたちに食べさせたくない
食品ジャーナリスト 安部 司

二、販売ルートの開発による「小さな加工」の集積と、地域づくりの展望
――JA甘良富岡の実践から
元JA甘良富岡営農事業本部長・現JA-IT研究会副代表委員 黒澤賢治

カコミ 地域の食文化を武器に都市住民を呼び込む「ちいじがき 蕎麦の里」

三、個性豊かな甘楽富岡の「小さな加工」――4つの事例 農文協文化部

1 コンニャク、まんじゅう、味噌――加工が楽しくてたまらない白石さん

2 モチ米加工――ハレの日の食文化を支える鶴田さん

3 ジェラート――地元食材で地域の新しい食文化を創造し発信する「じぇら21」

4 乳製品――山間地の自然を生かし技術を伝承する神津牧場

四、直売所の充実に農産加工は欠かせない
――「母ちゃんハウスだぁすこ」の事例から
JAいわて花巻生活推進部次長 高橋テツ

五、農家の自然な営みとしての個性豊かな農産加工と地域づくり
民俗研究家 結城登美雄

II 「小さな加工」――経営・販売の工夫のしどころ

一、「小さな加工」の個性を生かす経営戦略の着眼点と実際
(有)小池手造り農産加工所代表 小池芳子

カコミ 知識や技術を公開!農産加工の豊かな関係性を創る時代がきた
――「加工ねっと」で全国のヒト・モノ・情報が交差  農文協文化部

二、23の加工所が連携し、「南信州」という地域ブランドで100品を押し出す
――販売で「生きがい農業」の手助けをする「南信州うまいもの直販」の活動
南信州うまいもの直販代表 小松勝文


はじめに

 今、地域独自の資源を生かした農家の「小さな加工」に、熱いまなざしが注がれている。添加物で画一的な味にした工業製品としての加工食品が飽きられ、多様で個性豊かな農家の手づくり加工品が求められているのである。そのような農産加工を農家経営や地域づくりからみれば、農家の生きがいや所得の実現のうえでも、地域の豊かな食文化や暮らしの形成のうえでも、大きな意味がある。

 そこで本号では農家の「小さな加工」について特集することにした。

 第I部では、(株)東洋商会の高木敏弘氏が、第1章で地域の新鮮な素材を生かす「小さな加工」のよさと強さを指摘し、その可能性について強調するとともに、JAなどはかつての加工事業の失敗などから農産加工に消極的になりがちだが、自ら加工するのでなく、多様で個性的な「小さな加工」の販路開拓に励んではどうかと提起している。

 またベストセラー『食品の裏側』を書いた安部司氏はコラムで、自らが関与した添加物まみれの食品メーカーの加工食品の実態を暴露し、手づくり加工の良質さを浮き彫りにしている。

 そして、第2章、第3章のJA甘良富岡の取組みは、右の高木氏がいう販売ルート開発を地で行く実践で、多様で個性的な「小さな加工」を地域に集積し豊かな食文化を形成する路線のうえに、都市生活者の帰農まで展望している。

 そのほか第4章ではJAいわて花巻の「母ちゃんハウスだぁすこ」における農産加工の存在意義が指摘され、第5章では、民俗研究家の結城登美雄氏が、地域自然との豊かな関係性のなかに農産加工を位置づけ、地域づくりを自然と人間の関係から深く考察している。

 このように、よさと強さをもった「小さな加工」であるが、その条件を生かしきれず、経営採算があわず休止に追いやられ、遊休している加工施設も相当数あるといわれる。そこで第II部で、農家の農産加工が経営的視点を持つための勘どころや、販売のノウハウを掲載した。指導に生かしていただければ幸いである。

 なお、この特集の執筆者の過半は、「地域資源活用 食品加工総覧」の執筆者でもある。指導の際には本総覧も併せてご利用ください。

農文協文化部


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