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食育活動
No.11 2008

9

どうする 食料高騰時代の学校給食――地場産食材活用で残食もコストも減らす


◆年間60種類の地場産食材を活用! “旬”を活かした給食を支える食材の調達と献立づくり
──匝瑳市野栄学校給食センターの実践から 編集部……6

◆県内産70%以上の給食は残食もコストも減らす 地元商工会との連携からうまれた〈ふるさとの味〉
──佐賀市立東与賀小学校の実践 森の新聞社 森千鶴子……14

◆緊急アンケート 食材費高騰を乗り切り地場産食材を活かす方法を探る 編集部……22

◆憧れの農家のお兄ちゃんが〈職としての農〉を伝える
 給食と栽培体験をつなぐ出前授業で子どもたちは本気になる!
 熊本県・玉東町立玉東中学校栄養教諭 松本珠美……26

◆給食委員会はここまでできる 給食による食育はぼくらにおまかせ!
 愛知県・尾張旭市立白鳳小学校校長 青木光枝……34

◆【コラム】小麦粉アレルギー対策に効果あり! 目からウロコのビックリ米粉給食
 食育・料理研究家 坂本廣子……40

◆【インタビュー】学校給食法改正──給食を食育にどう活かすか?
 文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課 学校給食調査官 田中延子(聞き手 編集部)……42

《食と農の応援団コーナー》“食”からはじめる「性」と「生」の教育
◆【講演会ライブ】愛するため愛されるため あなたは「ここ」に生まれてきた
 助産師・思春期保健相談士 内田美智子……47

◆今年も「食と農の応援団」が大活躍! 
 ぐんま食育フェスタ2008&食育推進セミナー開催レポート 編集部……58

《トピック》「地域に根ざした食育」はどんな実践手法ですすんでいるか
──「地域に根ざした食育コンクール」の7年をふり返る
 農文協提携局内 地域に根ざした食育推進協議会事務局……64

【実践から学ぶここが決め手! 食育最前線の取組みから】
 むらの合言葉は“目覚めのみそ汁” 子どもの食生活見つめ直しから地域の食文化を掘り起こす
 宮崎県・西米良村教育委員会 教育総務課 浜砂真二……74

【図解 親子で学ぶ!おもしろ食べもの加工(2)】
 空き缶でつくれる!簡単わたがし製造機 おやじの休日の会代表 岡本靖史……80

【副菜が上手にとれる旬菜料理教室(3)】「さといも(里芋)」
──縁起物で秋の味覚を彩る! 食育サークルSUN代表 管理栄養士 小出弥生……84

緊急アンケート 食材費高騰を乗り切り地場産食材を活かす方法を探る

◆編集部

 本号の特集を組むにあたって、編集部では給食での食材費の現状と現場での対応についてアンケートを実施した。
 アンケートの対象は、本誌と、農文協の食雑誌(『うかたま』、『食農教育』)の読者、約二二〇人。主として給食センターや小中学校の栄養士の方々である。発送数の約三二%にあたる、七〇人の方々から回答をいただいた。
 アンケートをみて最初に驚いたのは、七〇人全員が食材費の値上がりを感じているという事実。そのなかでも子どもたちに質の高い給食を届けたいという現場の思いが、ひしひしと感じられる回答も多かった。
 以下、寄せられたアンケートの内容をご紹介したい。

給食食材値上がりの現状とその対策

給食をめぐる動きを伝える新聞

 値上がりしているという回答が多かったのが、小麦粉や小麦粉製品、肉類、乳製品、加工食品、調味料である。その一方で、地場産野菜や米については、比較的安定しているようである。

 食材費は、一食当たり平均で二四四・二円である。アンケートには、今年から値上げした、あるいはこれから値上げを検討しているという回答も散見され、メニューの工夫をして値上がりに対処しているが限界(青森県・自校方式:以下自と略す)との声も寄せられている。

 こうした値上がりの影響は、献立に表れている。以下に示したのはその一例だ。

  • デザートの回数や量を減らす。
  • 果物の回数を減らす。
  • 肉類や魚介類では、安いものに変更する。
  • 牛乳を二五〇mlから、二〇〇mlに変更した。

献立をどうつくる?

 回数や量を減らす、単価の安い食材に切り替えるという方法のほかに、さまざまな工夫を聞くことができた。

 まず第一に多かったのが、これまで使っていた加工品を手づくりに切り替えるというもので、自校方式、センター方式を問わず七人の方がそう書いている。例えばトンカツの場合、加工品を買えば一個あたり約五〇円かかるのに対し、手づくりにすると三五円程度ですむという(群馬県・センター方式:以下セと略す)。

 重要なポイントは、材料が値上がりしたから単純に安い食材に切り替える、という発想ではないということだ。限られた条件でよりよい給食をつくりたいという現場の思いには、頭が下がる思いがする。

 見た目に気を使っているというところもある。例えば肉を挽肉にしてピーマンにつめたり、ナスの間にはさんだり、あるいはウナギを小さくした分を、副菜を一品多く添えて補っているという(高知県・セ)。

地場産物をどう活用するか?

 値上がりへの対応として散見されたのが、「地元の食材を取り入れる」という答えで、七人から寄せられた。その一方で、地場産食材のメリットはそれほどないという意見も(北海道・セ)。

 そこで、改めて地場産物を給食に活用しているというところに問い合わせて仕組みを尋ねたところ、次のような話を聞くことができた。

 地元の農家は高齢の方が多い。できるだけ多くの農家に、少量ずつでも出してもらえるように、規格はゆるくしている。価格は新聞に載る市場の相場をみて、その七掛けを基本にしている。市場に出荷できないという人も、給食センターに持ちこんでくれている(兵庫県・セ)。

 六頁の匝瑳市の事例のように、地域の農家の実情に合わせて規格をゆるくするというのが、地場産物を給食に取り入れるひとつのポイントであるようだ。

 もうひとつ、地場の食材を安く仕入れるポイントは、豊富に出回る旬の時期に利用することである。

 しかし、地場産物だけでは安定して食材を確保できないので、表3から読み取れるように、複数のルートを確保しているところが多い。

これからの課題は?

 今回のアンケートでは、食材が値上がりするなかで、国産品に変えたという声も寄せられた(二件)。ギョーザ事件など、食品の安全性にかかわる問題が出てきた影響とみられるが、現状を前向きに乗り越えたいという現場の声だ。

 また、二三頁の新聞記事のように、米飯の回数を増やしたというところも一件あった(兵庫県・セ)。米飯の場合、パン食の約半分の単価ですむという価格面でのメリットもあるというのがその理由だが、この機会に、和食メニューに注目し、地域に伝わる伝統的な料理や旬を生かす知恵を見直したいという声も寄せられた(鹿児島県・セ)。

 その時に地元の旬の食材を使いたいという方々も多いと思われる。そのためには、生産者や業者など、地域のなかに協力者をつくる取組みが必要といえそうだ。