食農教育 No.73 2010年3月号より
サツマイモ
市販のイモから苗をとる!
宮城・大郷町立大松沢小学校 奥平大和
一個のイモで二〇〜三〇本の苗
低学年の生活科では、サツマイモの苗を購入してから畑にサツマイモを栽培することが多いのですが、それではサツマイモの命のつながりを実感することができません。そこで、スーパーから買ってきて食べているサツマイモ(ベニアズマなど)にも、新たな命を育む力があることを理解させるために、苗をサツマイモから直接育ててみることにしました。
四月になったらダンボールの箱(リンゴ用の大)を用意し、ワラ・米ヌカを混ぜた腐葉土・サツマイモ・バーミキュライト(無菌・無肥料の軽い用土)を下から順に入れた苗床をつくります。この箱に水をかけると米ヌカを混ぜた腐葉土が発熱して三〇℃ほどの温床になります。東北地方は、四月でも夜間は寒くなるので箱ごとビニールで覆うと一週間くらいで萌芽し、五月下旬までに種イモ一個当たり二〇〜三〇本の苗(三〇cm程度)をとることができます。
葉柄のキンピラ、イモあめ、ツルのリース……
自分たちで育てて採取した苗を、十分暖かくなった六月になってから畑に植えました。植え付けた苗にはもうすでに根がでているので、ていねいに畑に植えて一〇日間ほどは水やりをまめにやって葉がしおれないようにしました。
サツマイモは十月末ごろに収穫しますが、その前に葉柄を湯がいてからキンピラ風に炒めものにして食べました。葉柄にはサツマイモの甘い味わいがあり、シャキシャキした歯応えがありました。
とれたサツマイモは、モミガラで焼きイモにして食べただけでなく、ダイコンおろしの汁を使ってイモあめをつくって食べました(ダイコンに含まれるアミラーゼでイモのデンプンを糖化させる)。さらに保存食として干しイモをつくったり、ツルでクリスマス用のリースをつくるなどして、サツマイモを利用し尽くす知恵も学びました。
市販のサツマイモから芽がでて、みんなびっくり!
みんなで苗を植える
農家の母は教材開発の知恵袋
ところで、ダンボール温床のヒントは、給食の残食などを堆肥にしていた、学校農園用のダンボールコンポストにありました。ダンボールに腐葉土などと米ヌカを入れ、適当な湿度になるように水をかけてかき混ぜておくと、米ヌカが発酵して四〇℃ほどになっていました。この温度を利用すれば、サツマイモの温床としての熱源になると思いました。
私の実家は宮城県蔵王町の農家です。七三歳の母がいまも畑作を行なっており、むかしの農業の知恵袋になっています。母の友達や兄弟もたくさんいて、私にいろいろと情報提供してくれます。このサツマイモの苗づくりの方法も、彼らの経験談を総合し、母と私で合作したものです。
ダンボール温床のつくり方
日の当たる暖かい場所に設置。十分な湿り気があるように水をかけ、腐葉土が発熱しているかどうか、ときどき手を入れて確認。温度が低ければ水を足したり、米ヌカを足して腐葉土をかき混ぜる。高ければそのままでよいが、35℃以上になると逆に生育が悪くなる
この記事の掲載号『食農教育 2010年3月号(No73)』オドロキいっぱい!マイ野菜/一人いっぽんマイ野菜!/容器の工夫でおもしろ栽培/センター方式でもやれる! 地場産給食 ほか。 [本を詳しく見る]
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『そだててあそぼう サツマイモの絵本』たけだひでゆき 編/にしなさちこ 絵 ファンタジックな絵で描くサツマイモの不思議な世界。イモになる根とならない根はなにがちがう?葉だけを埋め込みとイモができるか、「お助けいも」の強い生命力の秘密、江戸時代の絶品「塩蒸し焼いも」澱粉とりなど。 [本を詳しく見る]
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