食と農の学習の広場ルーラル電子図書館田舎の本屋さん
Ruralnet・農文協食農教育1998年夏 創刊号

大根を育てて「凍み大根」をつくろう

山形市立高瀬小学校合の原分校教諭 小林 まち子

「凍み大根」をつくろう


 

1月17日(金)
あったかい 大根洗い ぬくぬくだ 千尋 

 

 

1月18日(土)
凍み大根 ゆでて楽しい わら通し 幸貴

 

 

1月20日(月)
カチンコチン凍み大根がポタンポタ 真樹

(平成八年度分校文集「合の原の子」より)


大根とさまざまにかかわる6か月(38KB)


凍み大根が作れるのは、真冬の厳寒期。
その時期を逃すと、せっかく作っても、かびが生えたり腐ったりしてしまう。積もった雪の中から大根を掘り出し、茹でて干す。凍み大根は、山形でも寒いところでしか作れない。

合の原分校は、山形市の中心から北東へ約15キロメートル、標高306メートルの山間の学校である。1月の大寒の頃には、校舎内でさえマイナス5、6度になる。1・2年生だけの分校で、今年度は1年生2名、2年生9名、計11名である。
分校には、1アールほどの「みどり畑」があり、いろいろな作物を育てている。児童の祖父母が、畑の先生として栽培活動を全面的に援助してくれている。

分校のある合の原地区の数件の家の軒下に、凍み大根が下がっているのを見つけた。子供たちに話すと、「おばあちゃんが作る。」「茹でて干すと、いつまでも食べられるんだって。」などと教えてくれた。
 次の年、凍み大根を作ることを前提として、みどり畑で大根を育てた。たくさんの大根がとれ、砂場に埋めておいた。

3学期が始まって間もない1月中旬、7、80センチも積もった雪と土を掘り起こし、埋めておいた大根四10本を掘り出す。埋めたところがわからなくなり、わいわいと大騒ぎ。みんなで洗い、凍らないようにして乾かしておく。翌日、畑の先生に教えてもらいながら、皮をむき、適当な大きさに切る。外に竈と鍋を用意し、薪を燃やして湯を沸かし、大根を茹でる。茹であがった大根は、箸で穴をあけ、わらを通す。2つの大根のわらとわらを結び、竿に掛ける。1、2年生の子供たちには、「結ぶ」という作業がなかなか難しいが、全部の大根を干し終わる頃には、とても上手になる。


わらを通すのはなかなか難しい

干しておくと、夕方から凍り始め、朝にはかちんかちんになっている。日が当たる日中、水分がぽたぽた落ちる。この繰り返しで、約1か月、大根の水分がなくなり、からからの凍み大根ができる。うまく乾燥させると1年は保存できる。

凍み大根を水につけて戻すと、子供たちはその変化に驚く。黄色みがかっていた大根が白くなり、太くなり、ふにゃふにゃになるからである。竹輪や昆布などと一緒に醤油で煮ると、分校中に大根の匂いが広がる。「凍み大根なんて年寄りの料理で嫌いだ」などと言っていた子さえ、「おいしい、おいしい。」と食べる。凍み大根を家庭に持ち帰った子供たちは、家族とともに料理して味わう。

凍み大根作りをとおして、親の世代が忘れかけたこの地域の良さを子供たちとともに味わうことができたと思っている。


もどる