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生物科学
Volume 55,No.2 2004

Jan

目次

特集:日本の生物はどこまでわかっているか―既知の生物と未知の生物―

●窪川かおる:不思議な「生物科学」……65

加藤雅哲・松浦哲一:はじめに―日本分類学会連合の活動……66
 本特集は日本分類学会連合主催のシンポジウムの講演発表をもとにしたものである.日本分類学会連合は分類群間の垣根を超えて全生物の分類学を目指す連合で,26学会が加盟している.本特集では,日本の生物相の理解がどの程度達成され,未解決の部分がどれだけ残されているかについていくつかの生物群について考察している.生物多様性は生物学の重要なテーマであるばかりか,われわれの社会活動にも直結する問題である.
キーワード:生物種数,生物多様性,日本分類学会連合,分類学

柁原 宏:日本分類学会連合による日本産生物種数調……71
 2002年に発足した日本分類学会連合によって日本産の生物種数調査が行われている.国内の様々な生物群を専門とする80名の分類学者の情報提供により,2002年時点で我が国に生息することが知られている生物の種数は約9万種,推定総数はその3〜30倍であることがわかった.
キーワード:分類学,日本産生物,種数

●松浦啓一・瀬能 宏:日本に魚は何種いるのか ―既知種と未知種をめぐる問題―……79
 日本は魚類の多様性が極めて高い地域に属する.既知種は約3900に達し,全世界の魚種の15%を占めている.しかし,日本に生息する魚類の種数はさらに多くなると魚類研究者は予測している.未知種の数がどのくらいあるかを知るために魚種調査を実施し,その結果をまとめた.また,日本における魚類分類研究史を概観するとともに,未知種の報告速度を上げるため,魚類の分類学的研究の今後の方向性について検討した.
キーワード:魚類,多様性,未知種,データベース

●邑田 仁:マムシグサは1種か30種か―これから始まる種の構造解析―……87
 日本の植物相は,姉妹群に近縁なものが発見されておらず起源の古い系統群と考えられるものと,ごく近縁と考えられる多数の種を含む属が混在する多様なものである.しかし,現在の日本の植物相がどのように形成されてきたか,植物相を構成する各植物がどのような現状にあるのか,具体的にはほとんど明らかになっていない.どのくらいわかっているかの現状紹介として,形態的多型は著しいが遺伝的構造が見えないマムシグサ群と,形態変異の少ない広域分布種アオキのハプロタイプの地理的構造についての研究例をとりあげる.
キーワード:種,多型,地理的構造,アオキ,マムシグサ,テンナンショウ

●石田健一郎・中山 剛:葉緑体の水平伝搬がもたらした藻類多様性―切っても切れない原生動物との関係……95
 藻類の主要なグループは,細胞の基本的構造の違いなどにより区別されている.この「細胞の多様性」は,細胞内共生を介した葉緑体の誕生とその後の水平伝搬によって作られたものである.近年,各藻類群の起源(葉緑体となった共生者およびそれを取り込んだ宿主)が明らかになってきた.それは,藻類が葉緑体を持たない様々な原生動物群と切っても切れない関係にあること示しており,原生生物全体に対する我々の認識が大きく変わりつつある.
キーワード:藻類,原生生物,細胞内共生,葉緑体,多様化

●青木淳一:新種の宝庫,土壌ダニの世界……104

 哺乳類や鳥類の新種が発見されたら,テレビや新聞で大ニュースになる.しかし,土壌ダニ類(ササラダニ類)では新種の発見は日常茶飯事である.特別な場所でなくとも,身の回りにいくらでも新種が転がっていたのである.この45年間の研究によって,日本産のササラダニ類は630種が記録された.そのうちの400種が新種として報告された.ダニばかりではなく,土壌中には未知の生物がいくらでも潜んでいる.
キーワード:ササラダニ,新種,分類学,土壌動物

●青木重幸・黒須詩子:兵隊生産のロジスティック・モデ……109
 タケツノアブラムシなど,兵隊を出すアブラムシでは,コロニー・サイズNが小さいうちは兵隊をほとんど生産せず,コロニーが大きくなると多数の兵隊を生産することが知られている.なぜそうなるのかを,兵隊生産を組み込んだロジスティック・モデルで説明する.任意のi匹目の兵隊が生産される条件は,その兵隊が付加する防衛効果(限界防衛効果)をpiとしたとき,pi > {r(N)+Σpi−1}/(N−i)で与えられる(ただしp0 = 0)ことを示す.r(N)は,兵隊による防衛なしでの生殖個体1匹あたりの生産量(増加率)である.この不等式から,任意のi匹目の兵隊について,コロニー・サイズが大きいほど生産されやすいことがわかる.これは,防衛される生殖個体の数N−iが増えることにより,兵隊の防衛効率が上昇するのと,兵隊との天秤にかけられる生殖個体の価値r(N)が下がるためである.
キーワード:ロジスティック・モデル,兵隊アブラムシ,内的自然増加率,タケツノアブラムシ

●書評―
『生態観察ガイド 伊豆の海水魚』/『ヒューマン・エソロジー』/『群集生態学』/『群集生態学の現在』/『植物のかたち──その適応的意義を探る』/『植生環境学』―植物の生育環境の謎を解く―

●三中信宏:“みなか”の書評ワールド

English_conents

Special feature: How many species have we in japan?

Kubokawa Kaoru:Perspectives in Seibutsu - kagaku(65)
Kato masahiro & Matsuura Keiichi : Introduction to the symposium special issue(66)
Kajihara Hiroshi : Japanese Biota Species Number Survey, carrying out by the Union of Japanese Societies for Systematic Biology(71)
Matsuura Keiichi & Senou Hiroshi : How many fish species in Japan―known vs. unknown―(79)
Murata Jin:Should Arisaema serratum group be classsified into one or 30 species?−With reference to the geographic structure of Aucuba japonica widely distributed in Japan(87)
Ishida Ken-ichiro & Nakayama Takeshi:Algal diversity created by the endosymbiotic lateral transfer of plastids :intimate relationships with colorless protozoans(95)
Watanabe Yoshiro : Latitudinal Aoki Jun-ichi:Soil:A treasure house of new species of mites (104)
Aoki Shigeyuki & Kurosu Utako : Logisticmodel for soldier production (109)
Book reviews(117)
Book reviews by Minaka(123)


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