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生物科学
Volume 56,No.2 2005

Jan.

目次

特集:移入種による生物多様性の攪乱

●巻頭言:「自然誌学」の方法(朝倉彰) ……65
●松浦啓一:移入種による生物多様性の攪乱……66
 本特集は,日本分類学会連合によるシンポジウム「移入種と生物多様性の攪乱」をもとにしたものである.日本分類学会連合には27学会が加盟して生物の分類学や生物多様性研究の発展のために活動している.この特集では様々な分類群における移入種の実態を示すとともに,在来の生物への影響について言及し,さらに移入種問題の解決の方向性も示唆している.
キーワード:日本分類学会連合,生物多様性,移入種,攪乱,分類学
●五箇公一:外国産クワガタムシの商品化がもたらす生態リスク……69
 近年,我が国ではペット昆虫として大量の外国産クワガタムシが輸入されており,外国産種の野生化とそれに伴う生態影響が懸念されている.国立環境研究所では,クワガタムシの地域固有性を把握することを目的として,外国産および日本産クワガタムシ各種地域系統のDNA分析を進めている.また,外国産系統と日本産系統との交雑による遺伝的浸透のリスク評価を行うために系統間の交雑実験も行っている.それらの結果からアジア域におけるクワガタムシの大規模な分化の歴史を垣間見ることができるようになった.同時に,「外来寄生生物の持ち込み」というリスク評価の一環として,クワガタムシの寄生性ダニにおける遺伝的分化の実態調査も進めている.
キーワード:クワガタムシ,侵入生物,交雑,寄生生物
●芝池博幸:無融合生殖種と有性生殖種の出会い―日本に侵入したセイヨウタンポポの場合―……74
 セイヨウタンポポは約100年前に日本列島に侵入した外来種で,市街地の増加を背景に分布域を広げたと考えられてきた.近年,外来種と在来種の交雑による雑種性タンポポが報告されたことから,タンポポの形態や生態に関する知見の再検討が必要となった.遺伝マーカーを用いた解析から,雑種性タンポポは3タイプに大別され,それぞれに特徴的な頭花の形態や分布域をもつことが示された.在来種の保全という観点からは,雑種性タンポポと在来種タンポポの交雑や後代の動態に注目する必要がある.
キーワード:環境指標,外来種,雑種性タンポポ,表土改変,身近な生きもの調査
●上杉哲郎:外来生物法の制定と対策について─……83
 外来生物による生態系等への悪影響が国内外で問題になっている.政府は,これに対処するため,特定外来生物被害防止法を制定した.本法は,侵略的な外来生物を特定外来生物に指定し,その輸入,飼養,譲渡,野外放棄等を規制するとともに,野外に存する外来生物の防除を進めるための措置を規定し,あわせて,被害を及ぼす疑いのある外来生物(未判定外来生物)の輸入制限・審査の措置等を定めている.本法制定の背景と経緯,法律の概要と課題について紹介する.
キーワード:侵略的外来生物,外来生物法,特定外来生物,未判定外来生物,防除
●瀬能宏:多様性保全か有効利用か―ブラックバス問題の解決を阻むものとは……90

 ブラックバスは自然水域へ侵入後,爆発的増加とその過程の捕食の影響により,在来の生態系を激変させ,生物多様性を著しく低下させる.そのため,多様性保全のためには移殖放流の有効な規制や駆除による個体数の抑制が必要である.しかしその一方でバス釣り人や政治家を後ろ盾とした公益法人,釣り業界がこの魚を釣りの対象として有効利用しようとしており,生物多様性を保全する立場にあるものとの間に争いが絶えない.本稿では問題の解決を阻む最近の動向について紹介し,対立の構図について論じる.
キーワード:ブラックバス,生物多様性,有効利用,社会問題
●春日井勲 共生説:光栄養が先行する様式……101

 これまで共生説では細胞進化の過程において,宿主となる生物に酸素呼吸能が付加された後にラン藻による光栄養能が付加されたという様式が受け入れられてきた.しかし,従来の共生説を吟味し,酸素非発生型光合成を行うラン藻の存在,物質の授受による共生体の適応度,地球上における生物集団拡大の時系列といった点に着目した結果,ラン藻による光栄養能を獲得した後に,酸素呼吸能が付加されたという経過によっても十分説明しうることが判明した.さらに近年の分子系統的解析は真核生物における葉緑体の起源の古さを示唆している.以上のような背景から本論文では,共生説における光栄養が先行する様式を提案し考察する.
キーワード:共生説,ラン藻,酸素非発生型光合成,光栄養,酸素呼吸
●小野山敬一:ベゴンほか著『生態学――個体・個体群・群集の科学[原著第3版]』を読んで思っ たこと……101

●書評―『楽しき挑戦―型破り生態学50年―』
『マハレのチンパンジー』/『哺乳類の進化』/『脊椎動物デザインの進化』/『地球生物学』/『水生昆虫の世界』/『植物生活史図鑑I, II』/『鳥の起源と進化』
●三中信宏:“みなか”の書評ワールド

English_conents

Special feature: Problems of introduced species

Asakura Akira : Methodology in natural history(65)
Matsuura Keiichi : Introduced species threat to biodiversity of native organisms(66)
Goka Kouichi:Ecological risks caused by commercialization of exotic stag beetles(69)
Shibaike Hiroyuki : Agamospermous triploids meet sexual diploids: a case study of Taraxacum officinale in Japan (74)
Uesugi Tetsuro : Establishment of the Invasive Alien Species Act and associated measures(83)
Senou Hiroshi : Conservation and use of biodiversity - stumbling blocks found in the case of blackba(90)
Kasugai Isao : Symbiosis theory: the pattern that is preceded by phototrophism(101)
Onoyama Keiichi : A review of“Ecology : Individuals, Populations and Communities. Third Edition”(110)

Book reviews(115)
Book reviews by Minaka(123)


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