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生物科学
Volume 56,No.3 2005

Apr.

目次

特集:生命圏倫理学:“農”の視点に立って

●佐藤英明:命倫理から生命圏倫理へ,“農”の視点からの構築 ……129
●秋葉征夫:農学教育における生命圏倫理学の誕生……130
 地球上の多種多様な生物群と共に人間は生活してきた.人間,生物群そしてそれを取り巻く生態系・環境を生命圏と考えると,農と農学は生命圏と協調し,共存し,生命圏の恩恵を引き出してきた歴史を持つ.これからも私たちが生命圏の中で持続的に共存するためには,生命圏の一員としての農学系研究者・学生の健全な思考と倫理が求められる.本稿では,農学系教育の倫理学としての「生命圏倫理学」について,(1)生命圏,(2)農と農学,(3)バイオエシックスと農,(4)農学教育における生命圏倫理学の誕生,(5)東北大学における生命圏倫理学,に分けて述べた.
キーワード:生命圏倫理学,農,農学,生命圏,農学系教育科目

●畠中和生:生命圏倫理学の論点―倫理学の視点から―……135
 小論の目的は,倫理学の視点から生命圏倫理学の論点を整理することにある.ここでは,その論点を,農業倫理学,環境倫理学,生命倫理学のそれを統合するものと理解する.中心には農業倫理学の論点が位置するが,環境倫理学,生命倫理学との重なりと違いも同時に確認する.その結果,生命圏倫理学の論点は,(1)食料の安全性の問題,(2)農業資源の枯渇の問題,(3)自然環境・生態系の破壊の問題,(4)工場的農業のあり方と動物福祉・自然の権利の問題,(5)食料生産の独占的支配の問題,(6)家族農業の減少の問題に整理される.
キーワード:生命圏倫理学,農業倫理学,環境倫理学,農業生命倫理学
●斎藤和佐:特集論文の鳥瞰
……145
 本稿は,前掲畠中論文で示された生命圏倫理学の諸論点を,後掲の各論考の主題と対応させることにより,本特集「生命圏倫理学の誕生と展開」を鳥瞰した小論である.
キーワード:生命圏倫理学,農業倫理学
●池上正人:植物バイオテクノロジーと安全性評価……148
 植物バイオテクノロジーのうち倫理上問題になるのは,遺伝子組換え技術である.多くの消費者は,遺伝子組換え技術により作り出された作物(組換え作物)に対して漠然とした不安と疑いを抱いている.それは,事実に基づく正確な情報が足りないためである.正確な「情報」と「事実」をしっかりつかんだ上で,社会・倫理面をも併せて,消費者は組換え作物の是非を判断してほしい.本稿では,遺伝子組換え食品について,食品としての安全性および植物の生態系への影響について解析する.
キーワード:分子育種,実質的同等性,パブリック・アクセプタンス
●佐藤英明:安全性,資源保全,動物の権利及びヒトの生命倫理からみる現代の家畜生産とアニマルテクノロジー ……155
家畜生産やそれを支えるアニマルテクノロジーに対し,批判がある.それは主に安全性,資源保全,動物の権利などを考える中での批判である.一方,家畜生産は医薬品・化粧品生産,移植医療への素材提供にも影響を与えているが,その安全性についても危惧されている.これらの批判や危惧がどのようなものであり,どのように考えるべきか紹介する.またアニマルテクノロジーはヒトの不妊治療へほぼそのままの形で導入されている.遺伝子組換え医薬品生産やヒトへ移植可能な臓器生産にも影響を与えている.ヒトの生命倫理とも関わる点についても考察する.
キーワード:家畜生産,家畜資源,安全性,アニマルテクノロジー,体細胞クローン,生殖細胞,遺伝子改変家畜,不妊治療,医薬品,異種移植
●早川洋一:受精能力をもたない精子―異型精子研究の現在―……164

 精子は雄がつくる受精の担い手であるが,動物によっては正常状態において受精する精子(正型精子)の他に受精能力をもたない精子を形成するものがある.このような精子は異型精子と呼ばれ,無脊椎動物では多くの例が知られている.近年,脊椎動物の魚類でも異型精子をつくるものが発見された.異型精子には,系統的に異なる動物群の間でも受精能力喪失の要因である無核化などが,減数分裂の欠如や不均等な核分裂を伴う減数分裂を経て起きるといった共通点が多く認められる.異型精子形成の適応的意義も,個々の動物の繁殖生態を反映したものが示されつつある.
キーワード:異型精子,正型精子,精子形成,カジカ上科魚類
●小野山敬一:LaPorte著『自然類と概念的変化』を読んで……179

●書評―『kupu - kupuの楽園 熱帯の里山とチョウの多様性』/『環境の思想家たち』/『リスク,環境および経済』/『遺伝子組換え食品 どこが心配なのですか』/『昭和農業技術史への証言第2集』
●三中信宏:“みなか”の書評ワールド

English_conents

Special feature:Biosphere ethics : a new subject for agricultural science

Sato Eimei : From bio - ethics to biosphere ethics(129)
Akiba Yukio : Biosphere ethics in education of agricultural science(130)
Hatakenaka Kazuo : On the main topics of biosphere ethics : from the viewpoint of philosophical ethics(135)
Saito Kazusa : A bird’s - eye view of feature articles(145)
Ikegami Masato : Plant biotechnology : safety assessment of transgenic plants on health and environment(148)
Sato Eimei : Animal production and biotechnology of today evaluated by the standpoint of the food safety, resource management, animal right and human bioethics(155)
Hayakawa Youichi : Non - fertile sperm : morphological and functional studies on parasperm(164)
Onoyama Keiichi : A review of“Natural Kinds and Conceptual Change”(179)

Book reviews(184)
Book reviews by Minaka(189)


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