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生物科学
Volume 62,No.1 2010

Sep.

目次

特集:色と模様の生物学

●巻頭言:瀬戸内海の渚と原子力発電所 生物多様性と温暖化を調整する(石田健)……1

●吉元英一・近藤滋:チューリングパターンと動物のパターン形成:脊椎動物の皮膚模様と昆虫の翅脈パターン……2
 自発的パターン形成のモデルである反応拡散モデルは動物の模様パターン形成モデルとして知られているが,他に反応拡散モデルの関与するパターン形成はほとんど知られていない.ところが,ベッコウハゴロモという昆虫の翅脈パターンにはチューリングパターンの痕跡が確認でき,そのパターン形成の過程に反応拡散モデルのようなメカニズムの関与が示唆された.反応拡散モデルは形態形成の過程で広く用いられているのかもしれない.
キーワード:翅脈,パターン形成,反応拡散系,チューリングパターン

●二橋亮:トンボにおける色と模様の進化……9
 トンボは,チョウと並んで色や模様に著しい多様性が見られるグループである.トンボは昼行性で,基本的に視覚によって相手の認識を行うため,色や模様は,性選択や種間競争にとって欠かせない形質として機能している.本稿では,トンボの色と模様の多様性について紹介するとともに,その進化機構に関わるメカニズムについても,筆者の研究もふまえて紹介したい.
キーワード:トンボ,色彩多型,形質置換,メラニン合成

●越川滋行:ショウジョウバエにおける体色と模様の進化……19
 ショウジョウバエは動物の体色や模様の進化の研究に非常に適した材料である.とくに近年,メラニン色素の生成とその配置がどのように制御されているかの研究が進んでいる.異なった環境に生息する同種系統間での体色の違いや,性的二型の形成機構が分子レベルで明らかになりつつあるほか,腹部や翅にみられる模様の形成機構についても大きく理解が進みつつある.本稿ではショウジョウバエの体色,模様研究の近年の流れと著者らの研究をあわせて紹介するとともに,それらが生物の模様の形成に関わる一般則としてどこまで適用できるか,さらに今後の課題についても議論する.
キーワード:ショウジョウバエの体色と模様,cis制御領域とtrans制御因子,遺伝子発現の進化,Winglessモルフォゲン,Drosophila guttifera

●佐々木伸大:植物色素の排他性—アントシアニン色素とベタレイン色素—……30
 植物の4大色素のうちの2つであるアントシアニン色素とベタレイン色素は植物の花や葉,果皮などで合成されており,特に花色としてその色彩や模様を作り出して我々の目を楽しませてくれる.しかし,不思議なことにこれまでにこれら2つの色素を併せてもつ植物種は報告されておらず,この2つの色素の排他性は古くから植物学の謎とされてきた.近年になってこれらの色素の合成経路が明らかとされ,それに関わる遺伝子についての報告が増えており,これらの情報がこれら2つの色素の背反性を解き明かす上で手がかりとなるものと思われる.そこで,本稿ではアントシアニン合成経路とベタレイン合成経路をもとにこの排他性について議論したい.
キーワード:アントシアニン・ベタレイン・フラボノイド・花の色・花の模様

●山野井貴浩・佐倉統:高校生物Uの「進化」に関する教科書分析
—進化の定義・自然選択・突然変異・種に注目して—
……39
 日本の高校生物の教科書および資料集と,米英の高校生物の教科書と大学の一般教養で使用されている教科書において,進化に関する内容の比較を行った.その結果,日本の教科書は進化の定義がされるのが遅い傾向があること,種の定義を大進化の定義の後にしていること,DNA(染色体)の変化だけでなく形質の変化まで含めて突然変異と定義していること,自然選択の説明に生存競争や適者生存という言葉を使っているなどの問題点が明らかになった.
キーワード:新学習指導要領,中等教育,進化教育

●談話室:松田裕之:生物多様性条約第10回締約国会議の心配事……46
 2010年10月,名古屋で生物多様性条約(CBD)第10回締約国会議(CoP10)が開催される.気候変動枠組み条約(UNFCCC)の京都議定書の際と同様,日本は議長国として生物多様性に関わる議論を纏める重責を担う.CBDでは「2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」という2010年目標がある.CoP10はその達成度評価と継続目標を議論する重要な会議である.UNFCCCでは「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)という組織があり,多くの科学者がそれに参画し,科学的知見を条約に反映させる仕組みがある.CBDでは,2010年目標に続く2020年目標と2050年目標がSubsidiary Body on Scientific, Technical and Technological Advice(SBSTTA)と呼ばれる組織で集約されているが,科学者が助言する明確な体制ができていない.そのため,IPCCを模した「生物多様性と生態系サービスに関する政府間プラットフォーム」(IPBES)と呼ばれる組織を作ることが,CoP10で提案される.CBDの場で科学者が果たす役割が,先進国と途上国の対立を調停するものではなく,むしろ対立を煽るものになりかねないことを心配する.

●小特集:編集委員が選んだ新入生に薦める100冊……49

●書評—『匂いによるコミュニケーションの世界—匂いの動物行動学—』/『地球温暖化と昆虫』/『理系の扉を開いた日本の女性たち—ゆかりの地を訪ねて』


English_conents

Ishida Ken:Seashore and nuclear plant at Seto Inland Sea : arranging bio diversity and climate change(1)
Special feature : Color and shape in a living thing
Yoshimoto Eiichi & Kondo Shigeru : Comparison between Turing pattern and pattern formation in animals : skin pattern in vertebrates and wing venation pattern in insects(2)
Futahashi Ryo : Development and evolution of color pattern diversity in dragonflies(9)
Koshikawa Shigeyuki : Evolution of color and pattern in Drosophila(19)
Sasaki Nobuhiro:The exclusiveness of anthocyanins and betalians in higher plants(30)
Yamanoi Takahiro & Sakura Osamu : Analysis of the Japanese high school Biology II. Textbook with special reference to the four keywords : evolution, natural selection, mutation, and species(39)
Matsuda Hiroyuki : Concerns on the 10th Conference of Parties for Convention on Biological Diversity(46)
Special feature 2 : 100 books recommended by editorial board(49)
Book reviews(62)


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