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生物科学
Volume 63,No.3 2012

Mar.

目次

特集:複合適応形質進化の遺伝子基盤

巻頭言:科学的真理の探求とそれをどう利用するかは別問題か?―科学者の社会的責任論―(鈴木邦雄)……129

藤原晴彦:特集にあたって……130

沓掛磨也子:兵隊アブラムシによる自己犠牲的なゴール修復―分子基盤とその進化―……131
  一部のアブラムシは社会を営んで生活しており,兵隊階級が自己犠牲的な社会行動によりコロニーを防衛している.モンゼンイスアブラムシの兵隊は,捕食者によってゴール(巣)に穴があけられると,自分の体液を大量に分泌してこれを塞ぐというゴール修復行動を示す.本稿では,このゴール修復に関する最近の研究成果を紹介し,分子レベルから見たゴール修復行動の進化について論じる.
キーワード:兵隊アブラムシ,社会行動,ゴール修復,植物組織再生,メラニン合成

大島一正:植食性昆虫の寄主転換と種分化……141
  昔から分類学者は,同種と思われるまとまりの中にある,少しずつ異なる小集団の扱いに頭を悩ませてきた.個々の小集団の分類学的扱いはもちろんのこと,集団間に見られる違いがどのように維持され,そして各小集団はそのまま分化の道をたどるのだろうかと,疑問はつきない.そしてこれらは,現在においても進化生物学の重要課題として残っている.本レビューでは,植食性昆虫のホストレース分化に焦点を当て,新寄主への適応がどのように生殖隔離に寄与するのかを紹介する.とくに,近年新たに立ち上げたクルミホソガAcrocercops transectaという小型蛾類を用いた実験系から得られたデータを紹介し,適応進化に伴う種分化の可能性を議論したい.
キーワード:適応進化,種分化,エコタイプ,寄主転換,隔離障壁

宮澤清太:動物の模様を「混ぜる」とどうなるか?……149
  動物の体表にはさまざまな模様パターンが見られる.多彩なバリエーションは生物多様性の見本とも言えるが,それらは大きく二つの種類に分けることができる.「カッチリ模様」と「やわらか模様」である.模様パターンの異なる動物を掛け合わせるとパターンが変化するが,模様の種類によって「足し算」できる場合と「混ざる」場合がある.模様を「混ぜる」とどうなるか,数理モデルによるシミュレーションと実際の動物の交雑実験を通して考えてみた.
キーワード:動物の模様,交雑,パターン形成

田尻怜子:ぴったりとはまり合って動く関節は,どのようにできるのか?どうやってできたのか?―昆虫の肢の関節の発生と進化……157
  骨格の2つのピースがはまり合って動く関節は,様々な動物に存在する.ぴったりとはまり合うその精巧な形は,進化上どうやってできたのだろうか.進化をひもとくためにはまず,一個体の中で関節がどのようにできるのか,つまり関節の発生様式を知らねばならない.私は,昆虫の肢(あし)の関節の発生様式を細胞レベルで精査し,その知見をもとに進化のメカニズムの解明を目指している.本稿では,これまでの研究成果を概説する.
キーワード:関節,昆虫肢,外骨格(クチクラ),Notch

田中幹子・鬼丸洸:脊椎動物が体壁に対鰭を獲得するまでの長い道のり……166
  ナメクジのような体をした脊椎動物の祖先が,対鰭を獲得するまでにどのような変遷過程を経てきたのかという問題は古生物学者や発生生物学者によって広く議論されてきた.脊椎動物の体に最初の対鰭が出現したのは,一部の無顎類の古代魚の体壁であったと考えられているが,対鰭を持つ無顎類は現存しないために,対鰭の出現を促した発生プログラムの変化を理解することは難しい.しかし,現存する脊索動物であるナメクジウオの胚や対鰭を持たない無顎類であるヤツメウナギの胚の発生過程を形態的・分子的に検証することで,体壁に対鰭が出現するまでにおこった数段階にも及ぶ発生プログラムの変遷の歴史が見えてきた.
キーワード:四肢,脊椎動物,進化,ナメクジウオ,ヤツメウナギ

小林哲:モクズガニ類の侵略の生物学─V チュウゴクモクズガニの日本への侵入の可能性と在来種との相互作用……175
  モクズガニ属の特定外来生物指定の背景を紹介し,チュウゴクモクズガニの日本侵略の可能性を考察した.日本はここ数年で法的対応が整ったが,欧米と異なる環境を考慮する必要がある.大河川の流入するエスチュアリーは有明海ぐらいであり,近縁の在来種モクズガニが分布する.生物多様性も高く在来種との競合や天敵も存在する.よって日本は侵入に適した環境とは言えない.しかし盛んに取引きされ養殖される現状では野生化し在来種と交雑する可能性があり,法的規制は必要である.
キーワード:モクズガニ,チュウゴクモクズガニ,侵略的外来種,特定外来生物,日本への侵略可能性

書評-『クワガタムシが語る生物多様性』『モグラ-見えないものへの探求心』『セックス・アンド・デス-生物学の哲学への招待』


English_conents

Suzuki Kunio : A view of social obligation for scientists(129)
Special feature : Molecular bases for evolution of complex traits
Haruhiko Fujiwara:Introduction(130)
Kutsukake Mayako : Molecular basis and evolution of self-sacrificing gall repair by soldier aphids(131)
Ohshima Issei : Host shifting and speciation in phytophagous insects(141)
Miyazawa Seita : Animal color patterns and hybridization(149)
Tajiri Reiko:Development and evolution of joint morphologies in insect legs(157)
Tanaka Mikiko & Onimaru Koh : The long evolutionary journey to ward the acquisition of paired limbs(166)
Kobayashi Satoshi : Invasive biology of the mitten crab Eriocheir spp.-V. Possibility of invasion of Eriocheir sinensis into Japan and interaction with native species(175)
Book review(190)


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