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生物科学
Volume 65,No.4 2014

Apr.

目次

特集:人類進化学の現在

巻頭言:食材偽装表示問題と「種」の認識(溝口元)……193

海部陽介:人類進化学の現在:特集にあたって……194

諏訪元:人類が辿ってきた進化段階……195
ラミダス猿人(アルディピテクス・ラミダス)の発見によって,人類最古と思われる進化段階について多くが解き明かされた.それにより,従来の猿人(アウストラロピテクス類)は,樹上適応の制約から大方解放された地上の直立2足歩行に特化した人類であることが伺える.ホモ属の適応戦略はそうした基盤から生じ,テクノロジー依存とその継承の蓄積的発展へと突入し,現代人をも含む「新人」にまで辿りついた.本稿では,人類の進化の道筋を大局的に捉える「進化段階」について,現在からラミダスまで遡って概観し,教科書的表記とは異なる専門分野内の実際の議論について筆者の視点を紹介しながらまとめてみる.
キーワード:新人,旧人,原人,猿人,最初期の人類

海部陽介:フローレス原人Homo floresiensisの謎……205
インドネシアのフローレス島で発見された小型原人ホモ・フロレシエンシスHomo floresiensisは,従来の人類進化観に修正を迫る大きな衝撃を与えた.ダーウィン以来の研究の蓄積により,今では猿人から現代人に至る人類進化の大筋を記述できるようになってきている.フローレスの原人は,そうしたメインストリームの進化史とは異なる例外が存在することを知らしめた.さらにその極端に小さな脳は,人類にとって脳サイズあるいは知能とは何なのかという根本的疑問を投げかけてもいる.フローレス原人の研究は着実に進んでいる一方,異なる情報が氾濫して混乱を招いてもいるのが現状である.本稿では,最新の研究成果を紹介しながら,現時点での著者の理解を整理したい.
キーワード:ホモ・フロレシエンシス,原人,島嶼化

松浦秀治:ネアンデルタール人と初期の現生人類の並存問題 ―人類化石の年代推定に伴う難しさ―……215
現在では,人類が「いつの時代も地域を越えて1つの系統として,段階的にまた直線的に進化してきた」のではないことが認識されてきたが,どれくらい複雑であったかは明瞭でない.現生人類の起源論に関しても,ネアンデルタール人と現生人類の生息範囲と時代の重なりがどの程度あったかが課題になっている.本稿では,西アジアにおけるネアンデルタール人と初期の現生人類の並存問題に関して年代学的アプローチから検討した.その結果,現生人類のアフリカ単一起源説が支持されるとともに,地球上における現生人類の拡散が「(拡散の過程で遭遇した,まだ現生人類の段階に達していない)古生人類」との単純な「交替劇」でなかったことも示唆された.また,これに関連して,人類化石の年代推定に絡む諸問題についても言及する.
キーワード:人類進化,年代推定,ネアンデルタール人,現生人類,絶滅問題

太田博樹:古人類のゲノム解析〜ネアンデルタール人とデニソワ人……226
絶滅した古人類のゲノム配列決定が次世代シークエンサー技術の発展により立て続けに進められている.これら古人類の全ゲノム解析は,従来の古代DNA分析をはるかに凌駕するパワーを持っている.最近のめだった進展は,初期の現生人類と絶滅した古人類との交雑が現生人類ゲノムに少なからぬ影響を与えていることが明らかとなった点である.本稿では,ancient DNA analysis(古代DNA分析)がpaleogenomics(古代ゲノム学)へ移行しつつある“現在進行形の学史”とその成果について概説する.
キーワード:古人類,古代DNA分析,古代ゲノム学,次世代シークエンサー技術

西村剛:化石から探る話しことばの起源……236
人類進化に多大な影響を与えた言語の起源と進化は,話しことばという音声コミュニケーションの成立なくしては起こりえない.言語自体は化石にならないが,話しことばの基盤である脳構造や音声器官の形態と運動制御の進化は,人類化石にその答えの糸口を求めることができる.これまでの多様なアプローチを総合すると,話しことばの起源は,中期更新世に現われたホモ・サピエンスおよびネアンデルタール人にまでは遡れるようである.
キーワード:言語,コミュニケーション,ネアンデルタール

坂本洋典・森照貴・小泉逸郎:温泉・地熱地帯は生物多様性のホットスポットか?……245
温泉・地熱地帯は,物理化学的に特殊な生態系を創出する.今からおよそ50年前,江本義数により,我が国の温泉に棲息する「温泉生物」の総説が記された.本稿は,この江本総説を元にして,生態学の今日的な視点から温泉生物をとらえなおし,温泉生物を含む群集や生態系を研究することの重要性について考察する.
キーワード:温泉生態学,レフュージア,耐性,特殊環境


English_conents

Mizoguchi Hajime:Food fraud scandal and recognition of animal“species”(193)
Special feature:Recent advances in human evolution research
Kaifu Yousuke:Introduction(194)
Suwa Gen:The Evolutionary Stages of Human Ancestry(195)
Kaifu Yousuke:The Homo floresiensis enigma(205)
Matsu'ura Shuji:Timing and duration of possible contact between Neanderthals and early modern humans in western Asia, with remarks on the methods and problems in dating human fossils(215)
Oota Hiroki:Paleogenomics on extinct hominins-Neanderthal and Denisovan(226)
Nishimura Takeshi:Fossil evidence on the origins of speech(236)
Sakamoto Hironori, Mori Terutaka, Koizumi Itsuro:Are hotspring-geothermal areas biodiversity hotspots?(245)


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