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生物科学
Volume.69,No.3 2018

Jun.

目次

巻頭言:研究者と釣り人(藤原宏子)……129

溝口元:日本の大学理系学部における生物学教育と生物学史……130
今日、日本の理系学部生物学専攻の学生でも高等学校時代の理科の履修では化学の履修率はほぼ100%に近いものの、生物を必ずしも全員が学ばなくなっている。そのため、生物学の履修に不安を感じる学生も少なくなく、大学教育でのケアが求められている。その一環として、従来、文系一般教育科目として設置されることが多かった科学史が理系共通科目として設置される傾向が見られ始めた。そこで、大学の理系学部の生物学教育における生物学史の導入およびその効果を検討するため、これまでに大学等で開講されていた生物学史の講義および刊行された生物学史に関する著作を中心に、生物学史とはどのようなものを指すか、また、その内容はどのようなものであったか、を整理した。
キーワード:生物学史、生物学教育、科学教育、専門教育、教養教育

岡部拓也:葉序の究極要因……140
葉や花など植物の側生器官の規則的な配列を葉序という。葉序はほとんどの種子植物、シダ植物、蘚類で観察される一般的な現象であり、形態的収れん現象とみなすことができる。最も一般的な螺旋葉序には、配列の数学的規則性という有名な問題に加えて、規則配列の間の変化(葉序転移)という別の問題が存在することが葉序法則の発見当初より知られている。後者に着目することで前者の謎が解けることがわかった。葉序とはどういう現象か。葉序の研究史を概観し、葉序の究極要因を解説する。
キーワード:シンパー・ブラウンの法則、葉序転移、黄金角、収れん進化

河野和男:古典、哲学、実学―結果を出した育種過程からの証言……154
昨今のわが国では「いつ役に立つのかわからないような社会科学よりも、結果に直結する実学に重きを移せ」とする動きが活発化している。これに対して社会科学系の人たちから「社会科学の目標である哲学はあらゆる科学の源泉である」とする発言が相次いだが、抽象的な社会科学擁護論が今さら政治や行政に対して説得力を持つとは考えにくい。本稿はほぼすべての局面が理想的に進んだ育種過程からの、実学で成果を上げたのは即実利を求めた結果ではなく、古典、教養、哲学に基づく人間と社会、歴史についての洞察力を優先させた故であることの具体的証言である。
キーワード:巨大科学プロジェクト、Impact factor、遺伝子特許、キャッサバ育種、Accountability

清水勇・細将貴:シーボルトのJamainu(ヤマイヌ)とOokame(オオカミ)……165
フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトは江戸参府旅行中にJamainu(ヤマイヌ)とOokame(オオカミ)という和名の動物を手にいれた。そのうちのJamainuの標本をオランダの分類学者コンラッド・ヤコブ・テミンクが検分し、Japansche wolf(ニホンオオカミ)とし、これを大陸のオオカミに匹敵するが、ハイイロオオカミ(Canis lupus)とは形状の異なるオオカミの一種と考え、Canis hodophilaxという学名を付けて『自然史・生理学雑誌』(1839年)で発表した。テミンクはさらに、シーボルトが小野蘭山の『本草綱目啓蒙』などを参考にして作成した研究ノートから情報を得て、『ファウナ・ヤポニカ哺乳類篇』(1844年)にJamainuの特徴を詳しく記載した。ここでは、テミンクの二つの著述を翻訳し、それぞれを詳解するとともに、その標本をめぐる歴史的な経緯について論述した。
キーワード:シーボルト、ニホンオオカミ、ヤマイヌ、テミンク、ファウナ・ヤポニカ(日本動物誌)、本草綱目啓蒙

足達太郎:アフリカ昆虫学史序説……176
アフリカ昆虫学とは、アフリカに生息する昆虫にかんする知識の体系である。エスノサイエンスとしてのアフリカ昆虫学は、昆虫を食用や病気治療などに利用する際に、集団に共有される有用な知識を提供するものである。いっぽう、近代科学としての源流はヨーロッパ流の博物学にあり、そこから分類学や生態学が発展し、アフリカ植民地時代には応用的な医療昆虫学や農業昆虫学などが派生した。1970年にはケニアに国際昆虫生理生態学センター(ICIPE)が設立され、その活動には日本人研究者も関与しつつ、今日にいたっている。
キーワード:エスノサイエンス、博物学、応用昆虫学、ICIPE

追悼:長野敬先生追悼(鈴木邦雄)……188

追悼:長野敬先生―死生観・生物学史・民科生物部会―(溝口元)……192


English_conents
Eda-Fujiwara Hiroko : Scientists and anglers (129)
Mizoguchi Hazime : History of biology and biology education in science departments of Japanese universities (130)
Okabe Takuya : Ultimate factor of phyllotaxis (140)
Kawano Kazuo : Classics, philosophy and practical science-A testimony from a breeding program that produced results (154)
Shimizu Isamu & Hoso Masaki : Jamainu and Ookame of Siebold. (165)
Adati Taro : Introduction to the history of African entomology. (176)

Suzuki Kunio : Obituary : Mourning for the late Dr. Kei Nagano(1929.6.6〜2017.10.25) (188)
Mizoguchi Hazime : Obituary : Dr. Kei Nagano (192)




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