黒炭岩手一号窯製炭法
2.築窯の順序 (2)排湿及び通気装置
2 築窯の順序
- ■ (2) 排湿及び通気装置
窯底は水分が停滞しやすく、また、水分が侵入しやすい箇所である。排湿装置は窯底部と基盤との間に設け、窯底と基盤を絶縁させ、地下水が窯底に侵入しないようするものである。
また、窯底の下を外気が通り、窯底を可能な限り乾燥させるようにする仕掛けが排湿及び通気装置である。
排湿装置
湿気のある窯で炭化を行うと、炭化時間が長くなり、炭の上部は灰化し、下部に未炭化部ができやすい。灰化量が激増し、炭質も悪化し、収炭率は減少する。このような製炭を行うに当たっての負の面を防止するひとつの対策として排湿装置が考案された。
窯底となる部分を1尺2寸(36cm)位掘り下げ、底面に末口2寸(6cm)位の枝条材または割木を1寸5分(4.5cm)位離して敷き並べる。
その上に末口1寸5分内外の枝条材などを隙間のないように敷き並べ、その上に土留をおこなう。
土留の方法は、新聞紙、和紙、古双子(使い古した手習い帳)または雑草などを敷いた上に壌土を6寸(18cm)の厚さに盛土する。
そして、その上に、粘土を2寸(6cm)の厚さに打ち堅め、凹凸のない窯底を作る。
通気装置
次に、この排湿装置と外部とを連結する通気口を作る。
窯の設置場所が乾燥しており、排湿装置が必要ない場所であっても、通気口は通気の関係上必用である。
排湿装置を作らない場合、着火・炭火の時に木酢液が窯底に溜まるため、排煙を妨害することとなる。
特に、初窯で着火後から炭化の過程で木酢液が窯底に溜まり、排煙を妨害することとなり、炭材下部に未炭化部を残す結果を引き起こす場合が多い。
窯底の排湿及び通気装置は、炭化を促進させるとともに、炭化末期の煙切れをしやすくする。
- 通気口の作り方
- 口径3寸5分(10.5cm)位で、長さ4尺(120cm)の丸太を四つ割りにして、心材部を削り落とす。
四つ割りにした丸太を元のとおり組み合わせたときに、削り落とされた心材部の空隙が1寸(3cm)角位になるように削り落とす。
- 心材部が削り終えたら、再び元のとおり組み合わせ、数カ所縄で縛る。
- 窯底の排湿装置から点火室の両側を通し、窯口前2ヶ所で地面より突き出るように設置する。
- 次に、窯口前に突き出た状態になっている通気口の先は、地面より約2寸(6cm)位下のところで切り落とす。
心材部を削り落として作った、約1寸(3cm)角の穴(通気口)を開閉することによって、窯底を通して極少量の外気を炭化室に送風する。
操作の方法は、着火するときに開き、消火の際に密閉する。
炭化中、通気装置によって外気を送風すると、炭化末期の木ガスの燃焼を盛んにし、灰化を防止するとともに、煙切れしやすくなる。
この通気装置の良否は窯底の作り方次第である。窯底を作る時、土の厚さに十分に注意を払わなければならない。
粘土は厚くなると窯底面が裂けやすくなる。裂けが大きいと、窯底からの外気の流入が多くなりすぎ、木炭下部が砕けてしまう結果となる。
経験によるものであるが、排湿装置上部の窯底の厚さは、壌土6寸(18cm)、粘土2寸(6cm)、すなわち、壌土6寸(18cm)+粘土2寸(6cm)=窯底の厚さ8寸(24cm)が適当である。