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黒炭岩手一号窯製炭法

 4.製炭方法(1)〜(3)


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 4. 製炭方法

(1)炭材の立て込み

  1. 炭材を立て込む前に、窯室内地盤に残っている木炭を綺麗に掃き出さなければならない。

  2. 立て込みの良否は、炭質や収炭歩留まりに大きく影響するから、炭材は内壁に密着するように、しかも炭材と炭材の間に隙間のないように堅く直立させて立て込む。

  3. 排煙口前には丸物を立て、窯の中央に行くに従って太い炭材を立て込む。

  4. 炭材を立て込む際は、炭材の太い方(元口)を上にして、直立に、密に立て込まなければならない。


(2)上木の効用と上方

 炭材を立て込んだ上に載せる上木は、火廻りを迅速ならしめ、炭材の損傷を防ぐために必要な物である。   
 窯に向かって縦に積み上げでも、横に積み上げても、どちらでも差し支えない。   
 上木の積み上げは、炭材の立て込みと同様に、隙間のないように密に積み上げなければならない。   
 窯の天井に近接する部分には、細い枝木枝条を詰め込む。また、立て込んだ炭材に接する部分には、太い上木を用いるようにする。


(3)点火

炭材の立て込みが終わったら、直ちに点火の準備をする。
点火順序
  1. 点火室に3寸径位の台木を窯の方向に2本敷き、その上に枯木または細い皮付き材などを横積みにする。

  2. 横積みにした枯木または細い皮付き材の上に炭火を乗せ、点火する。

  3. 炭火の上に、更に、枯木または細い皮付き材横積みに乗せる。

  4. 順次、太い材を乗せていく。

  5. 皮付き材に点火すると、火勢が強まる。

  6. これと同時に、点火室の外側に、石または煉瓦などを用いて、通風口を造る。
    通風口の台石は高さ3寸(9cm)、掛石は約1尺(30cm)位のものを用いる。

  7. 掛石の横幅は、窯の大小によって異なる。
    渡し10尺(3m)窯の場合は、横幅6寸(18cm)とし、その上に粘土と石で交互に積み重ねて通風口とする。

  8. 通風口の上、1尺2寸(36cm)の位置に6寸角(18cm角)位の焚き口を造る。
    焚き口の蓋は、煉瓦またはブリキ板を用い、開閉できるようにしておくが、空気が入らないようにしておく。

  9. 燃料は、焚き口から補給する。

  10. 口焚を行って、点火をしようとする際は、煙道口は加減蓋で全部覆ったままにしておく。
    炭材に着火するまで口焚を続けるが、加減蓋は炭材に着火するまで全部覆っておく。
    これは、排気口より水分を多量に含んだ「えぶり煙」を早期に排出させるとともに、窯底に熱を誘導し、炭材の蒸気乾燥を促進させるためである。

  11. 蒸気乾燥は、排気口の温度73℃位になってから5時間くらい継続する。夜間に行うのがよい。

  12. 火勢が強まるにつれ、炭材の温度は上昇する。
    導管より水分を発散するとともに、炭材は収縮する。
    この炭材から水分を発散させて、炭材が収縮することによって、木炭の皮付き収炭率をよくする。また、木炭特有の亀裂を形成させる。

  13. 窯内の火勢は徐々に強まり、排気口より排出する煙色は次第に濃色になる。排気口の温度が55℃位になったら、排気口の口の広さを2分の1程度に縮小して蒸気乾燥を行う。

  14. 排道口の温度が75℃位に上昇したら、煙道口を閉じている加減蓋を2〜3回に分けて開放して、口焚を盛んにする。
    煙道口を閉じていた加減蓋を取り除くと、着火の早い窯では、約5分間位の後に「黄肌煙」となる。臭気が鼻を刺激する。

  15. 一般的には、煙道口の温度が、75℃位〜82℃位で上木に着火する。 炭材や窯の種類によって異なるが、煙道口の温度が65℃位で上木に着火するものもある
    初窯と2回目の窯は、高温で着火すると灰化率は少ないが、着火の好時期を逸すると、炭質が粗悪となる。
    口焚時間を長くして、炭材の蒸気乾燥を丁寧に行うことと、着火温度とは炭質を決定付ける。
    特に、着火温度は炭質に決定的な影響を与える。
    点火室の煙色を注意深く観察していると、炭材の下方より黄肌煙が吹き出す。この時が着火開始時点となる

  16. 炭材下方から黄肌煙が吹き出したら(上木に着火したら)、使用炭材が細い物であるか、太物であるか、蒸気乾燥の進行程度などを勘案して、完全着火時期を割り出し、口焚を止め、焚き口を密閉する
    連続製炭時の温まり窯冷や窯、炭材によって異なるが、煙道口の加減、通風口の調節、着火の加減で調節する。

     
同じ形式の窯であっても、窯によって性格が異なる。注意しなければならないことは?

煙道口を開放すると、どの窯も黄肌煙を出す。
これは、上木が炭化し始める時に発生する煙である。
上木の一部が炭化し終わると、一時的に煙は澄んだ白色の白煙となり、刺激臭も薄まる。
ところが、数時間経過すると、再び黄肌煙となり、臭気が鼻を刺激するようになる。
この時、再び、点火室の炭材の下方から黄肌煙を吹き出すものと出さないものがある。
この時点で、点火室の炭材下方から黄肌煙を吹き出す窯は、この時点が着火時期となる。

このことから、着火時期によって窯は、2種類に分類できる。
焚き口を密閉する好時期が異なることとなる。

窯によって着火時期が異なるのであるから、数回の実験を重ねて、
 
  1. 最初の上木煙(黄肌煙)で着火する窯であるのか

  2. 最初の上木煙を経過した後、数時間後に発生する2度目の黄肌煙で着火する窯であるのか

を見極めなければならない。   

着火の適当・不適当が収炭率と炭質に強く影響するので、着火の時期の見極めが大切である。     
着火時期の見分け方
  1. 炭材と炭材の間より黄肌煙を吹き出すとき

  2. 煙道口より排出する煙色は黄肌色となり、臭気鼻を刺激し、遠く雲のごとく棚引くようになった時

  
また、煙道口の温度が65℃位で着火する窯もある。
岩手一号窯ではこの傾向が大きいので、岩手1号窯では65℃で位で口焚をを止め、焚口を密閉する窯もあれば、炭材や上木の大小によって異なるが、約2時間経過し、煙道口の温度が82から83℃に上昇したところで煙道口を調節する。

煙道口の調節は、2〜3回で終わるようにするとよいが、炭材の蒸気乾燥の程度と口焚(着火)の施行状況に十分な注意をはらう必要がある。

煙道口の温度が83℃ともなると、炭材自体の頭部が炭化を始めるので、遅くとも、煙道口の温度が 83℃になる前に、焚口の密閉をすべきである。

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