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黒炭岩手一号窯製炭法

 4.製炭方法(4)着火後の取り扱い


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 4. 製炭方法

(4)着火後の取り扱い

 煙道口の温度が着火時の煙道口の温度より下がらなければ、炭化が進行しているとみなしてよい
 煙道口の温度が83℃以上になると、自発炭化を開始しているものとみなしてよい。
 煙道口の温度が 83℃以上となるように、調整を怠らないようにする。

 特に注意すべきは、炭材が自動炭化する温度である83℃になる以前に、焚き口を密閉する操作を忘れてはならない。

 一般的には、通風口の調節は煙道口を2〜3回に分けて全開にしてから、始めるのが、着火の状況によっては、煙道口の調節の過程から始める。

 煙道口の温度が早期に83℃になるようである場合は、窯内の炭材が急激に炭化しているのであるから、この順序に固執する必要はない。

 臨機応変に対応すべきである。

炭質と収炭率を決定付ける最も大きな要素は炭化温度である

  1. 急激に窯内温度を上昇させると、木ガスが多く発生する
    木酢液を多く採取できるが、収炭率、炭質ともに悪化する。

  2. 収炭率、炭質をよくするためには、炭化温度をできるだけ低温の状態に維持し、精錬時に窯内温度を1,000℃以上に上昇させる

時間の経過とともに、黄肌煙は白煙となり、多量の煙を発生する。
この時、煙道より排出する煙の色は青煙となる。
また、煙道口を覗くと、透明となっている。
この時の煙道口の温度は、170℃〜180℃ 位である。

この状態を見極めたら、精錬を行う。

窯によっては、精錬を行うのに適した煙道口温度は23 0℃以上であることもある。
  1. 黄肌煙が白煙となり、多量の煙を発生している状態である。

      
  2. 煙道より排出する煙の色が煙道口付近で青煙であり、煙道口の温度が170〜180℃である。

      
  3. 煙道口より煙道内を覗くと、煙道口内にタールが付着し、煙色が透明となっている。


のように上に示した3つの状態が現れている状態になったら精錬を行う。

精錬の操作法

(1) 通風口を順次開く。

 窯によっては、通風口を開かなくとも、窯自体の作用で窯内の炭材と炭材の隙間に可燃性ガスを発生し、それが青煙を発して激しく燃え上がり、窯口から青煙の吹き返しが起こる。
 煙道口向かった煙の一部は煙道口から青煙を発生させるが、残りの青煙が窯口の方向に逆流し、通風口から吹き出す。
 この逆流した煙は通風口より侵入する空気と混合して、窯内で青煙を発生して激しく燃え上がる。

 この状態を繰り返すと、あたかも動物の呼吸するような音を発する。


精錬時において、立て積みした炭材は上部から順次、下部に向かって炭化していく。   

  精錬時の窯内での燃焼の特徴については、炭化中に発生する木ガスが炭材間の隙間から吹きだし激しく燃焼するわけだが、窯内で激しく燃焼するために、窯外から通風口を通して強く空気を吸引する。
 この時、木ガスのみが燃焼するため、炭材自身に直接空気は触れず、木炭自体は灰化しないという特徴がある。

  窯によっては、辛煙の発生する間は常に通風口に煙が返り、辛煙が終わり、白青煙になると、獣の呼吸するような音を発して燃焼し、通風口から間歇的に煙が吹き出す。
 この時、通風口からの吹き出しの開始時期が早すぎたり、強すぎたりすると、炭化末期の精錬時に木ガスの燃焼する勢いが弱くなってしまい、灰被りとなってしまうので、このような時は、通風口を縮小して、辛煙発生時と白青煙発生時の窯内の燃焼の強さを押さえることが必要である。

  辛煙や白青煙の早期から、窯内で過激に燃焼が行われると、灰被りすることは勿論、炭材が横裂したり、下部が折れたり、砕けたりする。また木口部に煎餅割れを生じることとなるので、通風口を狭めて窯内への空気の供給を調節する。 

 窯の焚き口を開け精錬を開始する適期は、炭材が赤色となって燃えている時である。
 この時を見計らって、狭めてある通風口を開き、精錬を開始する。

 精錬が開始すると、窯内において、炭材から青煙を発し、木ガスが高温で燃焼する。

精錬の終期

 窯内総ての部分が灼熱の状態で高熱を発し、窯底まで白熱し、炭材の下部まで赤白くなる。  
 こうなると、炭材の上から下まで総てが炭化し、未炭化部もなくなる。

 煙道口より煙道を覗き込むと、煙は無色透明である。
 また、煙道口の内部周辺に付着したタール分は高熱により灰白色となり、鼻を突く臭気は消え去っている。
 煙道口と通風口など総ての窯内への空気の流入口を密閉して、炭材の自然消火を待つこととなる。

 炭窯は、同じ様式のものを築窯しても、製炭過程については、微細な差異があることを避けることはできない。

 初窯から数回の試行錯誤を繰り返して、製炭操作に関する細部の差異を発見し、その差異を参考にしつつ、より良質な製炭が行えるように試行錯誤していくことが肝要である。   

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