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黒炭岩手一号窯製炭法

 5.煙の色の変化と製炭


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 5. 煙の色の変化と製炭


煙色の状態は、ある程度窯から離れて、煙道口・煙突などから排出する煙を見て判断する。晴天時、曇天時、雨天時、風の強さなどの諸条件によって微妙に変化する。

(1)燻煙(えぶりえん)

 点火初期に燃材が燃焼して生じる褐色の煙のことをいう。
 速やかに要害に排出すべき煙である。

理由
 炭材が熱せられると、最初は水蒸気を多量に含んだ重い煙が出始める。
 この煙を燻煙という。
 この煙は、排気口を通して速やかに排出し、窯内の熱対流を早める必要がある。

(2)水煙(すいえん)

 蒸気乾燥中に発生する煙である。
上木や立木は、直接火焔に接触せずに燃材から発生する蒸気によって熱せられて、盛んに蒸気を発生する。
 排気口の温度が55℃位に達した時点から、排気口を縮小して着火準備を始める。
 炭材から水分を発散させて、炭材が収縮することによって、木炭の皮付き収炭率をよくする。
 また、 木炭特有の亀裂を形成させる。

(3)黄肌煙(きはだえん)

 上木及び炭材の一部が燃焼する時に発生する煙である。
 炭化を開始し、木酢を含んだ蒸気の煙で、刺激臭辛酸味(しんさんみ:辛さと酸っぱさの混じった味)がある煙で、鼻を刺激する。
 着火時の煙の特徴である。

(4)本黄肌煙(ほんきはだえん)

 炭材炭化中に発生しする煙で、鼻を刺激する。
 大焼の始まる頃から発生する煙である。
 煙道口の温度が82℃前後になったら、煙道口の調節を始める。
 この調節の方法は、炭材の太い、細い、あるいは、炭材の乾燥の程度、窯内湿気、着火などを総合して判断して、煙道口を調節する。

(5)白煙

 炭化最盛期(大焼の終わる頃)を経過した頃に発生する白色の煙を言う。
 タール分の抽出が盛んで辛みと焦嗅 が混じり合った刺激と臭いがある。

(6)白青煙

 大焼が終わり、煙道口温度200℃位の時点から青煙と混じり合って発生する。
 窯によっては、230℃位から精錬を開始する。

(7)青煙

 煙道口の温度が250℃位になると青煙が発生する。
 水蒸気が少なくなり、窯内の炭材から木ガスが発生し、その木ガスが燃焼する時に発生する淡青色の煙である。   
 窯内は、精錬期となる。

(8)水あさぎ煙

 炭化末期の精錬最盛期に生じる淡青色の煙である。   
 精錬最盛期であるから、窯内に多量の空気を送風して木炭を赤熱し、炭質を堅硬緻密にする
 この操作を、「精錬」、「煉らし」、「嵐」などと言っている。

(9)煙切(えんぎれ)

 煙道口から出る煙の色が無色となる時期を指している。   
 煙道口に手を当て、直ちに掌を握ってみて、掌に水分が着く時は、炭材の窯底に 接している部分に未炭化な部分が残っている。
 また、炭材に未炭化部があると、煙道より排出する煙に臭気があり、鼻を刺激する。   
 煙道より排出する煙に鼻を刺激する臭いが無く、掌に水分が付着しないようになるまで精錬を継続 し、十二分に炭化を行ってから消火する。   
 鼻や掌で炭化の進み具合を判断することは、夜間に「精錬」が行われる場合、重要な判断手段となる。
    
岩手一号奥行10尺標準窯の製炭手順について

[1] 炭材の立て込みが終わったら、直ちに口焚を開始する。

[2] 火力が強まってくると、排気口より排出する煙色は次第に濃くなる。    

[3] 排気口の温度が55℃位になったら、排気口を狭める。

[4] 窯内の上木に延焼させないように火力を調節し、窯内の炭材の蒸気乾燥を図る。

[5] 排気口の温度が73℃位になったら、排気口を塞いでいた加減蓋を2〜3回に分けて開放する。

[6] 煙道口を開放してから約5分ぐらい経つと、煙道口から黄肌煙が排出し始める。    臭気があり鼻を刺激する。

[7] 焚き口から窯内を覗き、炭材の隙間から黄肌煙が吹き出していることを確認し、焚き口を密閉する。

  1. 煙道口の温度が65℃位になると、窯内の上木に着火する。
    この時、点火室の炭材の隙間から黄肌煙を吹き出すので、目で確認することができる。
    連続製炭している窯の時は、この時点で口焚を止めて焚口を密閉する。

  2. しかし、初窯や、窯内に湿気がある時、蒸気乾燥が不十分である時は、口焚を継続する。
    口焚は煙道口の温度が75℃〜82℃位になるまで継続し、焚口を密閉する。

  3. 通風口のサイズは、横幅は6寸(18cm)、高さ2寸5分(7.5cm)とする。また、煙道口を2分の1に狭める。

     
  4. 煙道口の調節については、着火を始めた時点(煙道口温度65℃)までに3分の1または2分の1に狭める。
    煙道口を開放しっぱなしにしておくと、窯内の火勢が強まりすぎて上木と木炭の頭部を損傷することとなる。

     
  5. 煙道口を全部開放して着火した場合には、温度の上昇を見極めながら、2〜3回に分けて煙道口を2分の1〜3分の1に狭める。


[8] 煙道口の温度が200℃〜230℃位になり、煙道口から排出する煙色に青みが増してきたら、通風口(通風口のサイズは、横幅は6寸(18cm)、高さ2寸5分(7.5cm))を徐々に開く。

[9] 煙道口の温度が250℃位になったら、通風口を全開にする。

     注:
  1. 煙道口の引きがよいと、8〜9の過程で青煙の吹き返しが起こり、窯内から動物の唸り声のような音が聞こえてくる。

  2. 精錬末期になると、窯内で燃焼する木ガスの炎が通風口から吹き出してくる。

       
  3. 窯内に発生する木ガスの一部は常に天井部に充満しているから、炭材が灰化することはない

  4. 窯の大小によって、煙道各部や通風口の比率を適当な大きさに造ることが大切である。 (通風口の幅は窯の奥行の1割)

 
[10] 通風口から窯内を覗き、炭材の下部まで赤燃していれば、窯を密閉し、窯内の炭材が完全に消火するのを待つ。

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