農文協へ

アラカルト(月報・読者カード他から) 

■江戸時代農業の世界史的位置

―フロンティアのなくなったのが現代世界の特徴である。資源浪費型の欧米とは対照的に、フロンティアのないところで、土地を大事にし、資源の徹底利用(リサイクル)をした近世日本人の物つくりの姿勢には今後いっそう学ぶべきものがあるように思う。(「日本農書全集」第45巻・月報1 川勝平太氏)



■日本近代化の基盤としての農村

―明治維新が世界史に前例がないほどの短期間に劇的な成立を見たのは、我が国の農村にも既に近代的な精神倫理が宿っていたゆえである。…全国無数の篤農家が技術革新を推し進めており、その情報は素早く的確に伝達されていた。近代日本社会の基本がすべて醸成されていたのである。農村もまた日本近代化の基盤であった。(「日本農書全集」第38巻・月報9 谷沢永一氏)



【農文協論説委員会発】

●「美しい村」と「美しい都市」の連携―江戸期の「生産革命」に学ぶ◆アジアのアルカディア(桃源郷)◆それは、山への着目から始まった◆江戸期の生産革命をもたらした自給の精神と「勤勉革命」◆資源活用のあくなき追求が生んだ「植物資源立国」◆ゼロエミッション(廃棄物ゼロ)の都市◆農産加工が個性的な地方都市をつくった
「現代農業」1998年10月号主張/syutyo/1998/199810.htm



■江戸時代のマンタリテ

―「農書全集」は、江戸時代社会の定性的分析にとって、まことに貴重な素材を提供してくれる。
 たとえば、農書は、書斎にこもった学者の産物というよりは、実際に働く農民や生産者の筆によるものが多い。農事日誌はもちろん、経験に基づく記述を通して、他では得られない庶民の考え方が描かれている。…農書の深層に潜む当時の人々のマンタリテを読み取る、といった利用も可能である。(「日本農書全集」第61巻・月報2 速水 融氏)



●大分県日田市 杉森進太郎様78才から

 『日本農書全集・第70巻・学者の農書』の読者カードが届きました。
 今回送られてきたのは「旅のしおり」。なんだろうと思いきや、今度4月中頃日田市民700名が濃尾平野方面へ旅行にいかれるそうで、杉森さんの作った「旅のしおり」がそのしおりとして本採用になったということでした。
 「『日本農書全集・第70巻・学者の農書』で大蔵永常の著書の内容を具体的に知ることができましたので、バス15台の日田市民の皆さんに、永常の功を広く深く知らせたいと考えています」とのこと。思わぬところで農文協の本も役に立つかと思えば嬉しいですね。このしおり、全て手書きの味わい深いものです。濃尾平野の地図が描かれており、旅の順路にあわせて、16〜17世紀の合戦の場所や、活躍した人物、歌われた俳句などが丁寧に書き込まれています。浜松城の近くには『日本農書全集・第70巻・学者の農書』に出て来る日田市出身の有名人大蔵永常を指して「日田の農学者大蔵永常この地方で農業をすすめる」などと書き込んであります。



●東京大学農学部創立125周年記念農学部図書館展示企画

農学部図書館所蔵資料から見る「農学教育の流れ」
http://www.lib.a.u-tokyo.ac.jp/tenji/125/

『綿圃要務』二巻(大蔵永常著 天保四年)刊本 『綿圃要務』生葉の図、花の図、モモ(綿花)の図
http://www.lib.a.u-tokyo.ac.jp/tenji/125/01.html



●農文協図書館 /nbklib/

江戸農書のうち、宮崎安貞・貝原楽軒著『農業全書』11巻を蔵書している。和綴じ定本表紙、巻之一から巻之十は宮崎安貞、巻之十一は貝原楽軒著で国政、藩政と農業のあり方を説く。このほか、大蔵永常著『除蝗録』『農具便利論』上、中、下もある。
江戸農書
/nbklib/book/10edonousyo1.html



■『百姓伝記』の著者は知っていた!
―300年前の土着菌についての記載―

〈ふるき藪に白きかびの付処有(つくところある)ものなり〉
 これは『百姓伝記』に記載されている「しのぶ土」すなわち腐葉土についの説明の一部である。腐葉土に植えればどのような木でも必ず活着する。自然界にも腐葉土は存在するが、それを見分けるのはむずかしい。そこで、その腐葉土をつくるための素材として、川瀬に積もった砂、深山の土、田んぼのいなご土(上質の壌土)とともにあげられているのが、この〈ふるき藪に白きかびの付処〉の土だ。
 この〈ふるき藪に白きかびの付処〉の土こそ、土着菌にほかならない。三〇〇年前に記された『百姓伝記』の著者の眼力をとくと読まれたい。



■方言史資料としての農書の魅力

―方言史資料として、農書が一番魅力的だと思うのは、それが全国各地で作成されているという点である。…農書は、時代的には近世のものがほとんどであるから、これを利用することで、近世の全国的な方言の分布をつかむことができる。また、それと現代の方言分布を比較すれば、数百年間の方言の変動を明らかにできる。(「日本農書全集」第39巻・月報23 小林 隆氏)



●わが国最古の農書「清良記」

http://user.shikoku.ne.jp/myamamo/seiryo/show/i01.html
清良記の特徴は、戦国時代の領主・武士・農民・等の生き方を知る、南予地方唯一の郷土資料であると共に全30巻中の7巻は「親民鑑月集」と称せられる農書の記事で、これが我が国最古の農書として有名である。



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