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生物科学
Volume 54,No.3 2003

Mar.

目次

特集:樹木の形作りと生き方− 「枝葉末節」から本質へ

甲山隆司:はじめに……129

竹中明夫:木の形作りと資源獲得
―次の一歩はなにか―
……191
 植物は空間中に葉や根を配置して資源を獲得する.植物の形作りは動物のエサ採り行動になぞらえることができる.樹木の地上部の構造と光獲得機能についての研究は多い.しかし,それらの成果を樹木の生き方の理解へとつなげていくには,さらに乗り越えるべきハードルがいくつかある.それは,定性的議論から定量的議論へ,部分から全体へ,時間断面から木の生涯へ,そして周囲の個体との相互作用へと視点をひろげていくことである.そのためには,コンピュータを使ったアプローチも欠かすことができない.また,枝や幹の太さがどのように決まっているのかを理解することもさまざまな場面で重要となる.
キーワード:樹木,構造,機能,光

●鈴木 牧:シュートが作る木,木が作るシュート……139
 落葉広葉樹の樹冠で毎年生産される当年生シュートには,伸長成長・葉の展開・繁殖器官の生産など様々な機能を担うものがある.個々のシュートの機能的特性は,シュートサイズにより異なる.そのため,大枝や樹冠内のシュート集団のサイズ構造は,シュート数とともに,枝や樹冠の機能的特性を表す指標として重要である.また,生産されるシュートの量は,旧年部分の肥大成長量や繁殖量と強い関係がある.
キーワード:当年生シュート集団・肥大成長・繁殖豊凶

●長谷川成明:樹体内の光合成産物の移動と樹木のモジュール性……147
 樹木の資源獲得において,資源を獲得する過程のみならず,獲得した資源を配分する過程も重要な意味を持つ.樹木はモジュールの繰り返し構造をとっているが,これらモジュールは資源的独立性の高いユニットであり,モジュール内の葉が生産した光合成産物はモジュール内で優先的に利用されているのではないかと考えられている.
 繁殖におけるモジュールの資源的独立性について,ヤマハンノキを材料に炭素安定同位体を用いたトレース実験を行った.ヤマハンノキのモジュールは繁殖において資源的に独立なユニットであることが示された.
キーワード : 光合成産物,資源配分,炭素安定同位体,同位体トレース法,モジュール性

●種子田春彦・舘野正樹:シュート内の物質分配は茎の通導機能と力学的支持機能のどちらを規範として行われているのか?……154
 シュートにおける葉と茎への物質分配は,個体の生長速度,生活史戦略に対して重要な影響を持つ.私たちは,理論的な考察と茎の性質の実測値をもとに,被子植物では力学的支持機能を,裸子植物では通導機能を規範としてシュートが葉と茎との物質分配を調節していることを示した.
キーワード:物質分配,シュート,通導機能,力学的支持機能

●城田徹央・作田耕太郎 :「樹形のパイプモデル」は「樹形」をどこまで説明できるだろうか?―スギとヒノキの場合―……163

 「樹形のパイプモデル」は樹木の幹や枝の構造を記述する便利なツールである.このモデルは幹や枝と葉の量的バランス,枝分かれの法則,水の流れなど,樹形に関するさまざまな仮説を導き出す.この論説ではスギとヒノキを対象としてこれらの仮説を検証し,新しいパイプモデル理論のとらえ方を提案した.
キーワード:パイプモデル,心材と辺材,水移動,スギとヒノキ,年輪

●梅木 清:シラカンバの樹木モデル―データ収集からモデル構築まで―……172
 樹木の3次元的な構造と生理機能をコンピュータ上で再現するモデル(構造的・機能的樹木モデル)を紹介し,シラカンバを材料にデータ取得から初歩的な構造的・機能的樹木モデルを制作するまでの過程を説明した.このモデルで再現されている樹木の機能は,一次枝による受光・光の遮断と光強度に応じた枝の成長・生残,個体の成長である.制作された樹木モデルはシラカンバ林の発達過程を本物らしく再現した.
キーワード:構造的・機能的樹木モデル,シラカンバ,一次枝,林内の光分布

●隅田明洋:木を見て森も見る―幹・枝構造の成因と群落動態へのかかわり―……181
 広葉樹の幹・枝の骨格構造は,隣接する樹木間におこる空間の獲得競争の過程を反映したものと考えられる.研究対象とする樹種とそれに隣接する樹種の幹・枝構造を同時に測量して3次元データにおきかえ解析を行った結果,枝の広げあいの競争に弱い樹種があることがわかってきた.このような構造が形成された過程を,当年生シュートから群落スケールまでの構造や動態に関する既知の調査結果をもとに推定した研究例を紹介する.
キーワード:広葉樹,枝構造,隣接個体間競争,森林構造

●久保拓弥:樹木・森林生態学「よく出る」誤用統計学の基本わざ……188
 樹木の個体・個体群・群集の問題を取りあつかう生態学のデータ解析ではさまざまな統計学的手法が駆使される.同時にこれらの手法についてよく理解されぬまま間違って用いられている事例も散見する.ここではよく普及しているごく簡単な誤用二例を紹介する.対数変換してから直線回帰することで生じる問題,そして「割り算指標」とその分母の間で「負の相関を創作」してしまう失敗である.どちらも観測データの「確率分布を見ない」解析方針に原因がある.統計学的なデータ解析では背後にある確率論的モデルを考え,それらに合致した統計学的手法を採用しなければならない.
キーワード:確率分布,推定,統計学

English_conents

Special feature : Architecture formation for the tree strategy: from a shoot module to a whole tree mechanisms.

Kohyama Takashi:An introduction(129)

Takenaka Akio:For further understanding of the functional aspects of tree architecture
development(131)

Suzuki Maki:Shoots made by a tree, a tree made with shoots(139)

Hasegawa Shigeaki:Transportation of photosynthate and modularity of trees(149)

Taneda Haruhiko & Tateno Masaki : Shoot biomass allocation: mechanical vs. hydraulic design
(154)

Shirota Tetsuoh & Sakuta Kotaro:Can‘the pipemodel of tree form’explain‘the tree form’- In the case of Cryptpmeria japonica and Chamaecyparis obtusa(163)

Umeki Kiyoshi:Functional-structural treemodel for Betula platyphylla : from data collection to model development(172)

Sumida Akihiro:See the forest for the trees - Formation of skeleton structure of trees in relation to forest dynamics(181)

Kubo Takuya:The basics of common‘mis’application in the field of tree and forest ecology(188)


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