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生物科学
Volume 56,No.1 2004

Oct

目次

特集:進化と創造主義

●巻頭言:ポスト“ポスドク”問題(上田恵介) ……1
●ユージニー C スコット:アメリカの公立校における創造論と生物進化論―比較の視点―……2
 創造論運動とは公立校の生物進化教育に反対するアメリカの保守的キリスト教徒の運動である.聖書の「創世記」を直解するヤング・アース派と知的設計者としての神の存在を強調するインテリジェント・デザイン派の2種類あるが,「生物進化論は宗教と対立する粗悪な理論である」,「生物進化論と創造論を教育上同等に扱うべきである」という前提を共有するため,両者には共通点が多い.公立校カリキュラムを定める州議会,教科書採用を決める学区教育委員会,科学を教える教員に圧力をかけ,生物進化教育の弱体化に成果をあげている.
キーワード:創造論,創造科学,インテリジェント・デザイン,生物進化論,公教育
●鵜浦裕:創造論運動の時期区分、戦略、人口統計,要因 ―スコット講演の補足―……15
 第一にアメリカの創造論運動史を反進化論州法成立の1920年代,創造科学の公立校導入を目指した1970年代,80年代,創造論の公教育導入を禁止した1987年の最高裁判決から現在までの時期に分ける区分と各時期における特徴的な運動戦略を紹介し,第二に生物進化を否定するアメリカ人の割合を時系列的かつ国際的に紹介した統計をとりあげ,第三に創造論運動の強さの秘訣を宗教的伝統,教育制度,ローカル・ポリティックスに求めた.
キーワード:創造論,創造科学,インテリジェント・デザイン,生物進化論,公教育
●佐倉統:創造論・進化論・科学コミュニケーション ――スコット講演へのコメント――……20
 進化論はダーウィン以来,常に社会的に大きな影響を与えてきた.これは一方で創造論のような反科学的な反応を呼び起こしたが,他方では専門家と社会とのコミュニケーションの回路が常に用意されているということでもある.科学離れが指摘される昨今,進化論のこの特徴は大きな強みであるともいえる.社会からのねじれた反応を抑制しつつ,進化生物学と社会との健全な関係を促進していくことは容易ではないが,日本の科学全般にとっても試金石となる問題であろう.
●瀬戸明久口:日本における進化論の導入─「受容」vs.「抵抗」モデルを超えて─……23
 これまで日本における進化論は,さまざまな「抵抗」によって正しい「受容」が妨げられたと理解されてきた.明治期における進化論は「歪曲」されて導入されたため,社会進化論に偏ってしまった.最近の研究では皇国史観からの「抵抗」も存在したことが指摘されている.さらに戦後のネオ・ダーウィニズム受容も,ルイセンコ理論や今西進化論による「抵抗」を受けたとされる.しかし本稿では,これら従来の歴史理解は「受容」と「抵抗」のみに注目した偏った歴史叙述であることを批判したい.従来の歴史観にもとづいて,アメリカの創造論と日本の抵抗勢力を安易に比較するのはやめた方がよい. キーワード:歴史叙述,ホイッグ史観,「受容」vs.「抵抗」モデル,「鎖国」「黒船」モデル,創造論
●小林万里:野生動物の楽園―北方四島の自然生態系とその保全―……31
●川井唯史:世界のザリガニ類の系統と進化……39
●書評―『甲殻類学――エビ・カニとその仲間の世界――』/『軟体動物二十面相』/『ママ,南極に行く!』/『アニマルテクノロジー』/『生物の形の多様性と進化―遺伝子から生態系まで―』/『線虫の生物学』
●三中信宏:“みなか”の書評ワールド

English_conents

Special feature: Evolution and creationism

Ueda Keisuke : Small market of academic positions for increasing post-doctroral fellows in Japan(1)
Scott E. C. : Creation creationism and evolution in American public school: a comparative perspective(2)
 Unoura Hiroshi : The creationist movement: its periodization, strategies, demographics, and factors ―As a supplementary to Dr. Scott’s Lecture―(15)
Sakura Osamu: Creationism, evolution, and science communication (20)
Setoguchi Akihisa : Introduction of Darwinism in Japan: beyond the “reception”vs.“opposition”model(23)
Kobayashi Mari : Paradise of wildlife: natural ecosystem and its conservation in the Northen Territories(31)
Kawai Tadashi : Evolution and phylogeny of crayfish worldwide(39)
Book reviews(52)
Book reviews by Minaka(58)


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