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生物科学
Volume 61,No.4 2010

Jun.

目次

特集:好蟻性昆虫の隠れた多様性

巻頭言:ニュージーランドと日本の森林はパラレルワールドなのか?(酒井暁子)……193

丸山宗利:好蟻性昆虫の多様性……194
 アリと共生する昆虫のことを好蟻性昆虫という.好蟻性は昆虫のさまざまな分類群で進化しており,アリとの関係も多様である.好蟻性昆虫は潜在的に非常に多くの種がいると予測されているが,多様性の解明には程遠い.好蟻性昆虫の生態の概要を説明するとともに,日本産種を中心とした具体例を挙げ,その多様性について紹介する.
キーワード:好蟻性,種多様性,分類,寄主特異性,生態的区分

小松貴・丸山宗利:アリヅカコオロギ属研究の現状……200
 アリヅカコオロギ属は世界的に広く分布する好蟻性昆虫で,アリの巣の中で巧みにアリの攻撃をかわし,アリから餌を奪い取りながら生活している.近年,本属にはこれまで知られていたより多数の種が存在しており,種毎にバリエーションに富む生活様式を持っていることがわかってきた.ここでは,アリヅカコオロギ属についてこれまで行われてきた研究に加え,分子系統・行動生態の観点から著者が現在行っている研究の概要を報告する.
キーワード:アリヅカコオロギ属,寄主特異性,スペシャリスト,ジェネラリスト

矢後勝也:好蟻性シジミチョウ類の多様性と進化……208
 多くのシジミチョウ類の幼虫には,アリと単なる共存から共生,片利共生,寄生,捕食に至るまでの様々な関係が見られる.ところが,これらの間には明瞭な区分がつかないものもあり,その関係は実に多様である.このような相互関係の多彩な進化を遂げてきた根底には,アリを制御する化学的,音響的,視覚的信号を発信する好蟻性器官の発達と同時に,シジミチョウ類の幼虫自体の食性転換が大きく関わっている.本稿では,幼虫が保持する好蟻性器官を紹介するとともに,シジミチョウ科の各高次分類群が持つ好蟻性器官,シジミ幼虫のアリとの相互関係,食性の多様性などにも触れながら,これらの生態的特性に関わる進化仮説を概説する.また,分子系統に基づいた好蟻性シジミチョウ類に関する最新の進化論をレビューする.
キーワード:好蟻性器官,分類体系,共生,寄生,食性転換,分子系統

上田昇平・市野隆雄:オオバギ属植物幹内に共生するアリとカイガラムシ……219
 熱帯雨林のみに分布するアリ植物の幹内には,アリとともにカイガラムシがほぼ必ず共生しており,この3者は緊密な相互依存関係にある.我々はこの3者共生系がどのように起源・多様化したのかを明らかにするため,東南アジアのアリ植物オオバギ属に共生するヒラタカタカイガラムシ属の分子系統解析をおこなった.その結果,進化的時間スケールで見るとカイガラムシは,植物—アリ共生系ができてからずっと後になって,新たに参入したことが明らかになった.
キーワード:アリ植物,共生,東南アジア,熱帯雨林

北條賢・秋野順治:好蟻性昆虫の化学生態学……227
 社会性昆虫として知られるアリは個体間のコミュニケーション能力が発達しており,他の生物に対して排他的に振舞う.そのため,好蟻性昆虫はアリのコミュニケーションを欺くことで,アリ社会に上手く入り込んでいると考えられる.近年の研究から,好蟻性昆虫はアリが発する化学物質を盗聴することで利益を得ていることや,自らが発信する化学物質によってアリの行動を操作していることが明らかにされてきた.一方で,アリは自らのコミュニケーションシステムを変化させ,好蟻性昆虫を排除する能力を発達させているようである.好蟻性昆虫の洗練された化学戦略は,化学情報を巡るアリとの競争の結果,進化してきたと考えられる.
キーワード:フェロモン,アレロケミカル,コミュニケーション,擬態

高橋雅雄:鳥類の子殺し……234
 鳥類において子殺しは広く見られる現象であるが,その適応的意義は事例ごとにさまざまである.本稿では,鳥類の子殺しを,加害者—被害者間の血縁関係と,子殺しが起きた状況や背景,行為が生む利益の3つの視点を基に11タイプに大別した.また,地域個体群間,近縁種間の比較も,近年,少数ながら行われはじめ,子殺しの発生のメカニズムや環境条件の解明が試みられている.本稿では,ここ20年の行動生態学における子殺し研究の発展を踏まえ,鳥類社会における子殺し現象の進化的意味を論じた.
キーワード:鳥類,子殺し,血縁関係,適応,比較研究

書評―『保全鳥類学』/『化石の記憶古生物学の歴史をさかのぼる』/『昆虫科学が拓く未来』/『日本の動物法』


English_conents

Sakai Akiko:It NZ’s forest a parallel universe?(193)
Special feature:Biodioersity of myrmecophilious insects
Maruyama Munetoshi:Biodiversity of myrmecophilous insects(194)
Komatsu Takashi & Maruyama Munetoshi:Current state of researches for Myrmecophilous ant cri-ckets(200)
Yago Masaya:Biodiversity and evolution of myrmecophilous lycaenid butterflies(208)
Ueda Shouhei & Itino Takao:Symbiotic interaction between ants and scale insects inhabiting myrmecophytic Macaranga plants(219)
Hojo K. Masaru & Akino Toshiharu:Chemical ecology of myrmecophilous insects(227)
Takahashi Masao:Infanticide in birds(234)
Book reviews(252)


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