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※各号の特集タイトルをクリックすると、その号の「目次」と「はじめに」(ねらい)をご覧いただけます。
 定価は各600円(税込)です。ただし179号までは各400円(税込)、合併号のみ800円(税込)。

●194号(2009年10月) 定価:600円(税込)

「女性の力」で地域をつくる――山口県の「生活改善」の現場から―― 山口大学准教授・辰己佳寿子+農文協

 本誌154号で、山口県の生活改善実行グループによる集落点検活動や地域づくりの取組みを取り上げてから10年が経過したのを機に(「むらの一〇年後を育てる『集落点検活動』」1999年10月)、10年後の現在の活動を検証し、生活改善運動の意味を改めて確認した特集。

 山口県の生活改善の取組みは、かまどの改良や自給野菜づくりなどの家庭内での生活改善にとどまらない。グループ員は、早いうちから家の農林業の主要な担い手となっただけでなく、集落点検活動を行なって地域の将来ビジョンを構想しそれを集落全体で共有化して集落をあげての豊かな地域づくりに取り組むなど、地域づくりの中核となって活動を展開してきたところに特徴がある。それが今どうなっているか。山口県農林水産部農山漁村・女性対策推進室の協力を得て、阿武町宇生賀地区、周南市鹿野渋川地区、岩国市美和町瀬戸ノ内集落、山口市秋穂中津江地区の四地区でそれぞれ複数回取材を行ない、まとめたのが本特集である。

 これら四地区の取組みにはそれぞれの独自性があるが、過疎化・高齢化などの流れに抗して、魅力的な「住みやすい地域づくり」「後継者が帰ってきたくなる地域づくり」をすすめていることは共通で、ある地域では、二〇年前に集落点検を行なった際の厳しい予想=過疎化による田畑の荒廃「山の里くだり」を防ぎ、ある地域では多数の新規定住者やUターン者を地区に呼び込んでいた。

 その「住みやすい地域づくり」は、衣食住や子育てなど生活を担っている女性ならではの感性が活かされ、バランスがとれている。しかもその持続性がすごい。生活改善が生き方にまでなってしまっているのである。現代の地域づくりとして学ぶことは大きい。

●193号(2009年7月) 定価:600円(税込)

日本の「むら」から未来を想像する 哲学者 内山節

 金融危機からはじまった世界同時不況は、投機とは関係のない企業や人々までをも巻き込んで進行し、深刻な影響を与えている。

 この不況について、哲学者の内山節氏は、1929年の世界恐慌がニューディール政策によってではなく、強い統制をはかることのできる戦時体制の確立と大戦による生産力の破壊によって克服されたことを引き合いに出しつつ、現在の不況の克服もそう簡単ではないだろうとし、かつ、この危機は、産業革命以来の近代の経済のかたちが限界にきていることを示すものだと指摘されている。つまり、手を打なければ自滅、手を打っても破綻のリスクが大きいという進退窮まった経済状況の下で、近代そのものの根本的転換が求められているというのだ。

 そこで内山氏は、人々の生活から自立した巨大な経済システムや権威と化した貨幣の克服をめざし、「貨幣愛」へのケインズの危惧、地域マネーの元となったゲゼルの「劣化する貨幣」、取引きのなかに文化を見いだした渡植彦太郎の「半商品」の概念などを紹介するとともに、現代社会にとって代わるべき新しい社会の像を、かつての日本のむらの共同体から提起。

 かつてのむらは、人間だけでなく、農業をとおして結びつく地域自然をも含んだ<自然と人間の共同体>であり、欲望を捨てて自然と一体化し自然(じねん)の世界に環ることを理想とするむら人の<生死を超えた共同体>であった。むらの機能だけでなく、このような農村的な精神世界全体を取り戻さねば近代を超えることはできないと内山氏は指摘する。

●192号(2009年4月) 定価:600円(税込)

都市が〈村の暮らし〉に学ぶ時代――世界経済危機と「ローカリゼーション」への転換 懐かしい未来ネットワーク編

 世界金融危機からはじまった世界同時不況は、私たち日本の経済や社会にも深刻な影響を与えている。その元凶になった、膨大な投機マネーによる金が金を生み出すような「カジノ経済」は言うまでもなく問題だが、財政赤字や貿易赤字も意に介さずモノを大量に消費しまくるアメリカへの輸出や、中国やインドなど急成長をとげている国々への輸出も期待する、必要を超えてモノを生産し輸出によって無限の経済成長をはかろうとする「外需依存の実体経済」もまた異常ではないだろうか。

 そこで本号では、本誌188号に登場していただいた懐かしい未来ネットワークの協力を再び得て、脱グローバリゼーションと地域づくりについて特集をした。

 第I章で、世界的なオピニオン・リーダー、ISEC(環境と文化のための国際協会)のヘレナ・ノーバーグ=ホッジさんは、グローバル経済をして「人びとに不幸せをもたらす経済」であるという。そして、コミュニティ的な分かち合いの関係を地域に作っていくことや、自然や命との深いつながりをいま一度取り戻すことが大事だとし、ローカリゼーションの運動を食と農から始めることを提起している。

 それにつづく第II章、第III章では、日本各地でのローカリゼーションの動きについての報告や、危機の克服とローカル化推進についての懐かしい未来ネットワークの提言がなされ、最後の農文協の長いあとがきでは、農家の自給の思想に依拠することや地域性に配慮する必要が提起されている。

●191号(2009年1月) 定価:600円(税込)

タイにおける地域再生運動に学ぶ―「アグロ・フォレストリー」への転換と「次世代への継承」に着目して

 世界を混乱に陥れている金融危機と世界同時不況は、金が金を生み出すかのような転倒した経済社会のあり方を転換し、まっとうな社会を築いていくことの必要を人びとに教えた。

 そのようなまっとうな経済社会を形成していくには、地域資源をじょうずに活かす農業を確立し地域自立をはかっていくことをベースに、社会全体の産業や暮らしのあり方を変革していくことが必要なのではないか。そのような思いから、農業近代化で地域の農家が借金づけになったことへの反省から始まった、タイ東北部における地域再生の取組みを紹介。

 そこでは「インペーン」という土着の農民組織によって、森林を生かした複合農業「アグロ・フォレストリー」への転換がすすめられている。この農業は風土を活かした、市場経済に左右されない農業で、1997年、通貨バーツが下落、倒産・失業など激しい混乱に陥ったタイの経済危機の際も大きな影響をうけず、却って農村に若いものを受け入れることができて、人びとは大きな自信をつけてきたという。

 本号では、このような農業確立の取組みとともに、コモンズとしての森林についてのタイ農民のまなざしや民衆知の意義、近代的な労働観とは異なった遊び的要素も入った労働のあり方、地域の子どもたちを対象とした地域自然や技術や文化を学ぶワークショップなども紹介。

●190号(2008年10月) 定価:600円(税込)

世界食料危機と地域コミュニティの再生 ─どう生きる? 危機の時代─

 2007〜2008年、深刻な食料危機が途上国を襲ったが、そこには途上国の債務問題や、補助金付きの安い輸出農産物で途上国の食料自立を奪ってきた新自由主義的な経済グローバリゼーションの問題があった。しかもその危機は、石油需給のひっ迫、マネーゲーム、食料とエネルギーの競合、気候変動や生物多様性の危機による生産基盤の脆弱化など、複数の危機的状況が絡み合っており、現代は、これら一連の問題の一体的な克服が求められる人類史的な転換点にあると言える。

 そこで本号では、画一化を進めつつ支配を深める経済グローバリゼーションに抗して、食料自給を実現し豊かな地域コミュニティを形成する道を、國學院大学の古沢広祐教授に提起していただいた。教授は食料主権を、地域の多様な生態系とその生態系に適応して人びとが築いてきた多様な地域独自の食文化(尊厳性)という視点から深め、新しい世界の未来像として、固有な風土に根ざした個性的で多様な地域が共存共栄する世界を提起されている。

 また、以上の提起を裏づける形で、アジア学院講師の長嶋清氏は、アジアの留学生とともに開発した自給的な有機農業の技術や日本の農家との交流から生まれた朝市のアジアでの広がりについて、日本国際ボランティアセンターの壽賀一仁氏は破綻状況にあるジンバブウェの国の経済からは自立した、ある共同体での食料自給と地域再生の取組みを紹介していただいた。

●189号(2008年7月) 定価:600円(税込)

場の教育 ─食・農・環境・地域からの再編─

 近代の学校教育では、地域や伝統的な生活様式と切り離された西欧の科学的知識を教えることに主眼がおかれ、子どもたちは教育を受ければ受けるほど「故郷に戻れない人間」に育っていった。それは188号で取り上げられたインドのラダックだけでなく、ミクロネシアでも、エスキモーでも、そして明治期以降の日本でも同じである。

 ところがいま、地域固有の知恵や生活文化を見直し、それらを学習していくことにより、アイデンティティを取り戻し、かつ生きた学習をしていこうという教育の動きが、世界で、そして日本で、生まれてきた。

 本号では、地域を教材化することにより、子どもたちの魂がゆすぶられ子どもたち自身の生き方が問われるような学習のあり方を追求している小学校教師の授業実践の紹介を入り口に(第1章)、世界各地ではじまった「place-based education 地域に根ざした教育」の胎動(ECOPLUSの高野孝子さん執筆)や、間伐や道普請など地域の人びとと一緒に行動し、地域の生活文化から学ぶ山村留学の実践(グリーンウッド自然体験教育センター 辻英之さん執筆)、教科書の単元に沿って地域の人びとの固有名詞が配置された、地域と結びついた社会科のカリキュラムづくり(元兵庫県日高町立府中小学校教諭 森垣修さん執筆)などを詳しく掲載(第2章)、第3章で、教師が多忙さから抜け出し、地域とのかかわりをもてるように保障する学校経営の実際を特集。

●188号(2008年4月) 定価:600円(税込)

ローカリゼーションの胎動 ─食と農・エネルギー・金融・教育・医療─

 私たちは戦後、自由貿易を進展させ経済成長と貿易拡大を進めることが生活水準を向上させ、貧困をなくす道だと信じこまされてきた。しかし事実は逆で、成長のための成長、貿易のための貿易を進める経済グローバル化は、世界各地に禍をもたらしているのではないか。

 そこで本号では、経済グローバル化に対して、食と農を中心にローカリゼーションの運動を展開し、エネルギーや金融、教育、医療などまで地域化を進めていこうとしている「懐かしい未来ネットワーク」の考え方や取組みを紹介していただき、世界のあちこちで胎動が始まったローカリゼーションの運動の理論的・運動的支柱であるヘレナ・ノーバーク=ホッジさんの原稿も、同ネットワークのご厚意で発表させていただくことになった。

 ヘレナさんは、インドのラダックで近代化の弊害を目の当たりにし、経済グローバル化に対抗して、多様で個性豊かな自然とコミュニティを取り戻すローカリゼーションの道を提起している。食や農をめぐる問題と、格差社会化や環境問題、心身の健康の問題など農業以外の問題を根源で統一的にとらえて、問題の解決に向かっていければと思う。

●187号(2008年1月) 定価:600円(税込)

農地・水・環境の保全向上に女性の力を!

 二〇〇七度より、国の事業で「農地・水・環境保全向上対策」が始まった。農村の混住化・高齢化がすすむなか、先達の築いた農地・水・環境を集落ぐるみで次世代に引き継ぐための事業である。具体的には、用排水路の維持管理や景観形成といったいわゆる一階部分の共同活動のうえに、二階部分としての環境にやさしい営農活動が想定されている。つまり、農地・水・環境といった地域資源を守りつつ、それを生かした地域振興につなげる、一種の地域づくり運動といえるのである。

 そこでつくられる活動組織には、農家だけでなく、学校・PTA・自治会・NPO・土地改良区、さらには関係する都市住民も含められる。農業の基盤を守るのは、もはや土地を所有する農家だけでなく、都市の生活者を含めた国民全体であるという認識が、この事業の底流にある。

 その活動でネットワークを築き、新しい地域づくりへと深化・発展させるには、生活視点にたって地域を考える農村女性の力が不可欠だということから、本特集は企画された。

●186号(2007年10月) 定価:600円(税込)

「むらの思想」と地域自治

 昨年末に、新しい教育基本法が成立した。そこには、教育の目標として、「伝統と文化を尊重し、(中略)我が国と郷土を愛する(中略)態度を養うこと」が掲げられている。

 では、「伝統」や「文化」とはいったいなんであろうか? 本特集は、そんな問いに哲学者の内山節氏が真正面から向き合い、心ある農家の方々に語りかけた講演録である。

 内山氏は、「道徳心」「武士道」といった支配する側がつくりあげた儒教的な精神論の対極に、村に生まれ、村で暮らし、そして村に死んでいった人々が築いた「民衆の思想」「むらの思想」を対置する。

 村で生きた人々の信仰感(神仏習合の世界)や、村人がいかにして「個」を形成してきたのか、あるいは家業として引き継がれてきたかつての経済活動をどうとらえるか……。これら、われわれの意識の奥にある、もう一つの「日本的精神」を明らかにすることで、じわじわと浸透するナショナリズムや、猛威をふるう新自由主義的な経済思想に対抗する。

●185号(2007年7月) 定価:600円(税込)

地元学・地域学の現在――多様な個性的展開の可能性を見る――

 『増刊・現代農業』で地元学を大きくとりあげて(「地域から変わる日本 地元学とは何か」2001年5月発行)から、6年が経過した。その間に地元学は、地域学と名乗るものも含めて大きな広がりをみせ、地域の人々が自らの地域を見直し、よりよい暮らしをつくりあげていくための道具となっている。

 そこで、この特集では、地元学・地域学の現在の到達点を明らかにするとともに、それがもっている現代的意味を考えてみることにした。

 地元学の取組みのその先に、地方と都市生活者が手を携えて進んでいく道を望見する地元学の視点の掘り下げや、国連で進めている「持続可能な開発のための教育」(ESD)の学習方法について、地元学の手法と国際開発協力における参加型開発の手法を比較しつつ深めるなど、地元学を創造的に深める試みも紹介する。

●184号(2007年4月) 定価:600円(税込)

「持続可能な地域づくり」――12のキーワード――「生涯現役社会」「農村都市交流」「人づくり」の3視点から――

 持続可能な地域づくりを考える際に注目すべき12のキーワードについて、その運動の先駆的な担い手やその分野の専門家が、簡潔にその押さえどころを整理した。

 第1群は、朝市・産直、コミュニティレストラン、生涯現役社会、内部循環型経済など、自然との関係や人間どうしの関係の修復や、地域づくりの内容そのものにかかわるキーワード。第2群は、グリーンツーリズムや、農村と都市の交流・帰農などの農的暮らし、山村留学やNPOによる農村の生活文化の継承、エコミュージアムや自然学校など、都市と農村の交流・共生、融合にかかわるキーワード。そして第3群が、地域学・地元学や、食育・地域に根ざした食農教育など、人づくりや次世代の育成にかかわるキーワード。そこでは地域づくりをとおした大人自身の主体的力量の蓄積と地域共同の子育てが統一的に捉えられている。

●183号(2007年1月) 定価:600円(税込)

「小さな加工」の時代がはじまった――農家の個性を生かす農産加工の経営戦略――

 地域独自の資源を生かした農家の「小さな加工」には、大量生産方式でつくられる食品メーカーの加工食品にはないよさと強さがある。原料以上のよいものは基本的にはできないという食品加工にあって、「小さな加工」は新鮮でよい原料を近くから得られるという絶対的な強さを持ち、大量生産の工場ではできない高品質を実現できるからである。また、手造りの加工には、食品メーカーの画一的加工食品にはない個性がある。

 このように、強さとよさと強さをもった「小さな加工」であるが、その条件を生かしきれず、経営採算があわず休止に追いやられ、遊休している加工施設も相当数あるといわれる。そこで、農家の農産加工が経営的視点を持つための勘どころや販売のノウハウもまとめて、掲載した。

 日本農業がグローバリズムの波に洗われるなか、消費者の支持を受け価値を実現することの意味は大きい。その意味でも、行政やJAなどの指導機関では、小さな加工への経営視点の導入や、販路の開拓による小さな加工の地域への集積と農業の振興を、ぜひ進めていただきたい。

●182号(2006年10月) 定価:600円(税込) 

持続可能な「地域づくり」「人づくり」に向けて――「国連・持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」の総合的研究 中間報告

「国連・ESDの10年」は日本の政府とNGOの共同提案が国連で採択され、2005年からはじまったものであるが、わが国では2006年春3月、ようやく「ESDの10年国内実施計画」が策定され、政府による事業もはじまった。一方、民間レベルでESD推進に取り組んでいるESD―Jの団体会員は、先行的に取り組んできた環境教育や開発教育の分野だけでなく、広範な分野に広がり、合計96団体にのぼっている。

 しかし、まだまだESDが一般の人びとに十分知れ渡ったとはいえず、その理論構築や運動のいっそうの広がりが待たれている。そこで本特集では、立教大学の阿部治教授を中心として、文科省科研費(2004〜2007年度)で進められている「日本初のESDの総合的研究」の中間総括をしていただき、ESDの理論化の現在の到達点と課題を広く読者に提供することにしたものである。

●181号(2006年7月) 定価:600円(税込) 

農協共販を抜本的に見直す――「農家手取り最優先」「JAの販売事業の確立」をめざして

 JAの販売力の強化と販売事業の確立を戦略的課題として実践的に研究してきたJA―IT研究会が、農産物販売についての改革方針をまとめたJA全中やJA全農の責任者にもご参加をいただいた座談会で率直に意見交換。

 全国連の改革の基本的な方向についておおよその合意をみたその座談会を土台に、JA-IT研究会の代表委員、副代表委員がそこでの議論も引用して検討を加え、JAが生産者の立場に立って販売事業を確立するために何が必要かをさらに踏み込んで考察した。

●180号(2006年4月) 定価:600円(税込)

「地域に根ざした食育」の提案

 2005年食育基本法が施行されて内閣府に食育推進会議が設置され、2006年3月、食育推進基本計画が策定された。今後、県段階や市町村段階でも同様に食育推進計画が策定され、官民をあげて食育が推進されていくという意味で、2006年度は「食育元年」にといってよい。

 そこで本号では、食育についての農文協の考え方を明らかにするために「序」で、食育基本法の意義を考察し食育の全面的推進の立場をのべた後、以下の3つの柱を立て、農文協論説委員の手による食育関連の『現代農業』「主張」を整理して掲載することにした。
・第I部 農家の自給の思想と食意識の変革――『日本の食生活全集』が提起したもの
・第II部 地域に根ざした食育を「農村空間」から展望する
・第III部 21世紀社会の展望――個性豊かな地域社会形成のために

 食育基本法は、食と健康の視点だけでなく、食文化と地産地消、地場産給食、食料自給などトータルな視点で食育をすすめようとしているが、これらの問題は、心ある個人や団体が基本法に先立って自主的にすすめてきた運動でもあった。基本法ができたいま、それぞれの運動の情報を共有して相互理解を深め、それぞれが自分の運動を掘り下げるとともに、場合によっては連携しつついっそう活発に食育の推進に取り組みたいものである。

●179号(2006年1月) 定価:400円(税込)

食農教育で地域の未来を切り拓く――「地域に根ざした食農教育ネットワーク」設立記念フォーラムの記録――

 (1)子どもたちの「生きる力」を育み、(2)活力のある地域をつくることを目的に、「学校と地域の連携」のしかたや、地域資源の教材化の研究をすすめる「地域に根ざした食農教育ネットワーク」設立記念フォーラム(2005年7月9日、東京都江東区の東京ビックサイト)の記録。

 小学校教員、農家、栄養士、自治公民館長などさまざまな立場から、先進的な食農教育の取組みの報告がなされ、質疑応答では、食農教育を最初いやいや始めた男性教師が、子どもたちや地域のひたむきな取組みに接して自己変革をしたという質疑に拍手がわいたり、「食農教育を単に子どもたちの体験にとどめず、近代化のなかで失われてきたものを取り戻す大人自身の運動と重ね併せて捉えることが必要だ」と食農教育を深部から捉える発言が出るなど、活発な議論が展開された。食農教育の運動を足元の地域からすすめていく上で役だつ特集。

●178号(2005年10月) 定価:400円(税込)

農業と食品産業の連携――グローバリゼーション下の地域農業の発展戦略――

 輸入農産物が大量輸入され、卸売市場法改正により農産物の流通が大きく変貌をとげつつあるなかで、農業と食品産業との連携こそ産地がすすむべき道である。なぜか。連携してパートナーシップの関係を強化することにより、農業サイドにない加工や販売、その他のノウハウなど、連携先の各種の経営資源を自分のものにし、安定的な価格や、比較的に高い価格で販売していくことができるからである。

 原料・食材の手当てを海外にシフトした食品産業もある一方で、差別化の観点からこのような農業との連携を求める食品産業も少なくない。ところが農業サイドからの連携へのアプローチが少なく、あるいは安定した供給がなされないために、心ならずも食材を海外に求めざるをえない食品産業もある。その意味では、連携は単に農業サイドへの所得増をもたらすだけでなく、日本の食料自給率を実践的に高めていく道でもある。

●177号(2005年7月) 定価:400円(税込)

持続可能な地域づくりと子どもの教育――「地域に根ざした食農教育ネットワーク」の設立にあたって――

 2005年7月、(1)子ども達の「生きる力」を育み、(2)活力のある地域をつくることを目的に「地域に根ざした食農教育ネットワーク」が立ち上げられるのを機に、「食農教育」について、地元学、環境教育、農業教育、持続可能な開発のための教育(ESD)等々、さまざまな視点からアプローチした特集。

 このネットワークは、「学校と地域の連携」のしかたや地域素材(資源)の教材化の研究をすすめつつ、地域に根ざした教育・学習の展開と校区コミュニティーづくりの運動をすすめようというもので、全国レベル、地域レベルの研究会を開催するほか、日常的には電子的な手段も使って活動を展開することになっているが、序では、本ネットワークの代表委員である嶋野道弘氏(文教大学教授・前文部科学省主任視学官)が、そして第T部では3人の副代表委員が、食農教育の核心やそのネットワークの可能性について各専門の立場から論じ、事務局(農文協)も、本ネットの2つの目的について考察を加えている。

 また第II部では、本ネットワークの活動を先行的にすすめている徳島県や鹿児島県の地域研究会のメンバーにその取組みを紹介していただき、抱負を述べていただいた。

 そして第III部では、「食農教育への多様な視点からのアプローチ」と題して、地元学、環境教育、農業教育、持続可能な開発のための教育(ESD)などの領域で研究や実践をすすめている第一人者に、それぞれの視点から食農教育について論じていただくとともに、校区コミュニティの形成に欠くことのできない視点として、地域と学校を結ぶベースとして広がりつつある地場産給食や、世界中を席巻し地域を疲弊させているグローバリズムの波に対する地域アイデンティティの確立についても、論じていただいた。

●177号(2005年7月) 定価:400円(税込)

持続可能な地域づくりと子どもの教育――「地域に根ざした食農教育ネットワーク」の設立にあたって――

 2005年7月、(1)子ども達の「生きる力」を育み、(2)活力のある地域をつくることを目的に「地域に根ざした食農教育ネットワーク」が立ち上げられるのを機に、「食農教育」について、地元学、環境教育、農業教育、持続可能な開発のための教育(ESD)等々、さまざまな視点からアプローチした特集。

 このネットワークは、「学校と地域の連携」のしかたや地域素材(資源)の教材化の研究をすすめつつ、地域に根ざした教育・学習の展開と校区コミュニティーづくりの運動をすすめようというもので、全国レベル、地域レベルの研究会を開催するほか、日常的には電子的な手段も使って活動を展開することになっているが、序では、本ネットワークの代表委員である嶋野道弘氏(文教大学教授・前文部科学省主任視学官)が、そして第T部では3人の副代表委員が、食農教育の核心やそのネットワークの可能性について各専門の立場から論じ、事務局(農文協)も、本ネットの2つの目的について考察を加えている。

 また第II部では、本ネットワークの活動を先行的にすすめている徳島県や鹿児島県の地域研究会のメンバーにその取組みを紹介していただき、抱負を述べていただいた。

 そして第III部では、「食農教育への多様な視点からのアプローチ」と題して、地元学、環境教育、農業教育、持続可能な開発のための教育(ESD)などの領域で研究や実践をすすめている第一人者に、それぞれの視点から食農教育について論じていただくとともに、校区コミュニティの形成に欠くことのできない視点として、地域と学校を結ぶベースとして広がりつつある地場産給食や、世界中を席巻し地域を疲弊させているグローバリズムの波に対する地域アイデンティティの確立についても、論じていただいた。

●176号(2005年4月) 定価:400円(税込)

激変する青果物流通とマーケティングの実際――JAは市場流通依存からの脱却を――

 卸売市場法が改正され、2005年度から順次改革が実施に移される。この改正には、これまで法定で一律に決まっていた卸売会社の委託手数料の自由化がふくまれており、JAは自らマーケティングを行ない新しい多様な販売チャネルを切り拓くことによって、現在の委託を前提とした低い販売手数料を改変し、販売事業を自立させることが緊急かつ重要な課題になっている。

 本号では、この世界の第一人者である千葉大学園芸学部の斎藤修教授が激変する青果物流通の実態を詳しく述べ、JAがどう変わらねばならないかを提起するとともに、JA高崎ハムの黒澤賢治常務理事が、現職に移る前に手がけたJA甘楽富岡の実践や、現在のJA高崎ハムでの取組みをもとに、量販店へのマーケティングのノウハウを懇切丁寧に指導。本来なら門外不出の、戦略的意味をもつ52週カレンダーやプレゼン資料を惜しげもなく公開してくださっている。

 なお、第II部は、中央卸売市場の卸や仲卸、量販店、外食産業の関係者とJAによるパネルディスカッションの記録で、青果物流通で何が起きているかが現場からの生の言葉で報告され、そしてJAへの貴重な意見がつけられている。

●175号(2005年1月) 定価:400円(税込)

〈むらづくり〉と地域農業の組織革新

 「米政策改革大綱」が発動するなかで、米価の暴落、担い手不足の一層の進行、広範な農地の荒廃が心配されているが、今後、農業・農村はどのような進路をとればよいのか。本号では、どのような時代にあっても、そして情勢が厳しければ厳しいほど、「地域に力をつけること」が何よりも必要だという立場から、農村のコミュニティの再生・強化と地域農業の振興とを重ね合わせてとらえ、農村独自の自治力に依拠した「現代的な村づくり」の基本視点を考えてみた。

 第I部「コミュニティの再生と地域農業の振興」では、秋田県立大学の佐藤了教授が、秋田県の2集落の地域づくり運動を分析し、コミュニティの形成こそ閉塞状況からの脱却をすすめる地域のエンパワーメントの原動力であり、地域農業革新の内発的な原動力であるとして、「自律協同型の農村社会」を不断に形成しつづけるような運動の展開が重要であると提起。

 つづく第II部「現代〈村づくり〉の基本視点」では、4人の論者に、現代の村づくりに欠くことのできない4つの視点を提起していただいた。その1は「内部循環型経済と実践的住民自治の確立」(京都大学・岡田知弘教授)、その2「都市・農村交流/グリーンツーリズム」(飯田市・井上弘司エコツーリズム推進室長)、3「生活文化/集落点検活動」(山口県周東町・藤井チエ子教育委員)、4「地域に根ざした食農教育」(鹿児島県串良町・豊重哲郎柳谷自治公民館長)の、4つである。各論者の方々はこれらの視点を、閉塞の時代に風穴をあけるような、非常に先行的な具体的実践事例を元に提起してくださっているが、一方で、これらの事例が独自性をもちつつも、それぞれがそれぞれの要素を微妙に持ち合わせていることは注目されてよい。

 そして第V部「〈むらづくり〉視点に立った『農政改革』論」では、山形大学の楠本雅弘教授が、今日焦眉の課題とされている水田農業ビジョンについても、これを地域振興ビジョンとして把握し直し、新しい地域営農システムの確立によって「旧村の復活」をはかるべし、と主張されている。

●174号(2004年10月) 定価:400円(税込)

地域からの教育変革――「校区コミュニティー」形成への試論――

 地域づくりと次代を担う子どもたちの教育は一体の問題である。それというのも、 人びとの暮らしが商品経済に深く巻き込まれることによって家族や地域のコミュニテ ィーが弱体化し、人びとが孤立してきたことと、子どもたちの教育が地域の生活のた めの教育から産業に労働力を提供するための教育に変質したこと、そして、地域(社 会)全体が自然性や人間性を失い病んできたことは、皆、同根から発しているからで ある。

 本号では、地域共同体を否定してきた日本の歴史や、商品経済に過度に巻き込まれ てきた生活に反省を加え、今一度、地域を見直し、都市住民との関係づくりも視野に 入れつつ「校区コミュニティー」を再生し、地域に根ざした教育を創造していく道を 探る。

●173号(2004年7月) 定価:400円(税込)

「地域づくり」と「ほんもの体験」

 今、都市農村交流やグリーンツーリズムが盛んになり、都市から農村への人口移動の逆流も続いている。そして2003年には、内閣官房のイニシャティブで、都市農村交流推進のための組織「オーライ!ニッポン会議」が立ち上げられた。時代は大きく転換し、近代化の極致で農村空間が輝きを増している。

 しかし、このようにグリーンツーリズムが注目を浴びるなか、一方では期待した効果が十分あがらないという声や、都市の人びとを迎えることに疲れてしまったという声も聞かれる。そこで今一度、ツーリズムの思想や体験のあり方を見直し、都市農村交流やグリーンツーリズムの本質を考え、そこで「ほんもの体験」がもつ意味について考えてみた。

●172号(2004年4月) 定価:400円(税込)

国連・持続可能な開発のための教育(ESD)の10年 ――私はこう考える

 「持続可能な開発のための教育」(Education for Sustainable Development :ESD)とは、「持続可能な社会」をつくるための教育――、思いきり意訳をすれば、自然と人間が調和し、人間と人間が調和する未来社会を形成してゆくための教育である。このような画期的な教育の運動が、2002年8月のヨハネスブルグサミットで日本のNGOと日本政府の共同提案のかたちで提案されて、実施文書に盛り込まれ、同年12月の国連決議を経て、2005年1月から10年間、世界各国で取り組まれることになった。

 

 この場合、教育とは単に子どもの教育だけを意味していない。もともと教育の根源には、種の保存や、生活・地域(社会)の持続と繁栄、そして文化の継承への強い願いがあるからだ。そこで、日本各地ですでに行なわれている、持続可能な「地域づくりの運動」と、「地域での子育て・地域教育」を統一的に把握し、日本の地域づくりの課題と世界的な視野で解決を求められている諸問題とを交差させ、国際的連帯のもとに世界の人びと(地域)のエンパワーメントをはかること――そこにESDの課題がある。

 

 そこでのキーワードは、「環境」「生活」「地域」である。自然と人間が調和し、人間と人間が調和する未来社会を形成してゆくうえで、「農の論理」が果たす役割は大きい。

●171号(2004年1月) 定価:400円(税込)

JAの直販」と「農家の直売」で営農復権 ――JAふくおか八女の実践

 JAふくおか八女では、多品目・大量生産、周年出荷の野菜、果樹、お茶の大産地でありながら、JAの直販を重視し、系統出荷に依存しない自己完結型の営農販売事業を展開してきた。そのことによって「農家手取りの増大」をはかりつつ、地域農業の振興と地域の活性化に取り組んできたのである。

 現在、約50億円をJAの直販で売り上げているが、あと20億円くらいは直販を伸ばせるだろうという。その1割がJAの営農販売部門独自の収益になれば、信用・共済事業に依存せずに、営農事業を展開できる。JAふくおか八女では、その目安がついてきたというのである。

 こうしてJAふくおか八女は、一方では「市場流通」を強化しつつ、「JAの直販」のルートを精力的に切り拓き、合わせて「少量多品目栽培による農家の直売」(地産地消)の道も切り拓くというかたちで、三つの販売チャンネルを確立し、営農復権を着々とはたしている。その目的は、地域の新しい生活文化を創造し、個性的で豊かな地域づくりを行なうことに置かれているのである。

●170号(2003年10月) 定価:400円(税込)

「校区コミュニティー」の形成と子どもの教育

 境野健兒(福島大学行政社会学部教授)・岩崎正弥(愛知大学経済学部助教授)

 学校を核に「校区コミュニティー」として地域を再建し、地域という場のなかで子どもたちの生きる力を育むことが、なぜ必要なのか。

 明治時代に小学校が地域の人びとの力によって創られた歴史や、その管轄が国家に吸収されることに地域の人びとが抵抗してきた歴史に触れ、「学校はもともと地域の人びとのものだった」ことを明らかにし、地域と学校の本来的関係について理論的に整理。

 近代化によって弱められてきた地域の共同性であるが、今日のグローバリゼーションの波は、地域の共同性を一層弱め、地域を均質的な空間に化す方向に作用している。そのような状況のもとで、「モノ」の豊かさと「場」の豊かさを対比しつつ、学校を地域の拠点とし、場を豊かにする方向で「地域アイデンティティ」を形成することの重要性を説く。

 「最も重要なことは、地域の自然や文化の価値を地域の人々自身が見直すことである」「ローカルに考え、ローカルに行動することで、ユニバーサリティ(普遍性)を見出すこと」など、地域から社会を変革していくための根本的な思想方法が提示されている。

 子どもの育つ校区コミュニティー形成運動の実践事例も、都市部と農村部から4事例選び、掲載。

 

●169号(2003年7月) 定価:400円(税込)

すすむJAの自己革新――トップリーダーの提言 -JA−IT研究会「専門研究会」のまとめ-

今村奈良臣ほか

 JA―IT研究会は、2001年9月8日に産声をあげてから、早三年目を迎えようとしている。「単協が横並びのフラットな研究組織で」「実践的な立場から研究を行なう」という趣旨にそって、すでに7回の公開研究会を積み重ね、少数のメンバーによる専門研究会も開催。そして今、第2期の専門研究会を、量販店などの参加も得て、流通の革新をはかる方向で立ち上げようとしている。  本号は、その第1回専門研究会のまとめ。農水省「農協のあり方研」による「農協改革の基本方向」の提示や、米政策改革大綱の具体化など、JAが事業改革をまったなしで求められているなかで、「営農復権」を旗印に先駆的取組みを行なってきた7JAの改革の核心を整理し、その共通点から改革の手順を一般化した「JA改革の手引き」。

 

●168号(2003年4月) 定価:400円(税込)

脱『大量生産・大量消費』の社会像――日本農業の進路と未来社会を構想する――

中島紀一ほか 

 日本農業は、少量多品目生産の直売型農業には活気があるものの、年々増える輸入農産物などの影響によって、米や野菜等の農産物価格が低迷、下落。一方、日本経済に目をやると、長期不況克服の展望はなかなか見えてこない。このような農業や経済の動向について、マスコミでは現状や政策等のあれこれについての報道はなされても、明確な展望が示されることはなく、閉塞感だけがつのっている。そこで本号では、現代社会の何が、どう行き詰まっているのかを明らかにし、経済や農業の進路と、来るべき社会の近未来像を明らかにすることを目的に、第T部で、茨城大学農学部の中島紀一教授に、農業をとりまく環境の大きな変化にどう対処すべきかを論じていただき、第U部では、さまざまな専門の三人の研究者に、21世紀の農業像・社会経済像を考える基本視点を提起していただいた。

 

●167号(2003年1月) 定価:400円(税込)

JA越後さんとうの『営農復権』―『米政策改革大綱』を先取りした地域農業戦略―

 水田単作地帯にあって、@農家手取りを増やすべく、「安全・安心な健康米」づくりと米の有利販売に取り組み、A稲作や転作などの土地利用型農業の法人化をすすめるとともに、女性や高齢者の力も引き出して水田単作からの脱却=総合産地化をはかってきた、合併前の旧JAこしじの取組みや考え方を中心に、JA越後さんとうの実践を調査して、報告。  これらの取組みを参考に他のJAが同様の実践を行おうとしたばあいに何が必要なのかを明らかにするために、旧JAこしじや合併後のJA越後さんとうの取組みがどのようにして成立しているのか、組織運営の方法についても聞き取り、5つのポイントとして紹介。

 

●166号(2002年10月) 定価:400円(税込)

21世紀の教育を地域から問う―『非文字文化の再興』をキーワードに―

高橋敏ほか

 そもそも教育とは何だったのかを根本から考えるために、近年の子どもたちの変容を、われわれの暮らし自体の変容や日本の近代教育のあり方との関連で検討し、子どもの育ちをささえる場について、未来社会形成の方向と重ね合わせて考察。  国立歴史民俗博物館の高橋敏教授は、共同体総がかりの日本の伝統的な子育てや、「子ども仲間」「若者組」など子どもたちの自治的組織について述べ、これらの「非文字の文化」「非文字の教育」の衰退が現代の子どもたちの自立をむずかしくしており、「文字の教育」のベースに共同体による「非文字の教育」が据えられなければならないと、主張。  さらに、静岡県掛川市の榛村純一市長は<地域のビジョンづくりと子どもたちの教育の統一的把握の必要>を、新潟大学の大熊孝教授は<素人も参画し職人技を重視した工学の再構築>を、東京農工大学の鬼頭秀一教授は<普遍的な知識の支配からの脱却と、「生業」的世界の再生による教育の立て直し>、哲学者の内山節氏は<国家的視点からではなく、ローカルな地域的視点から、子どもたちの教育を考えることの重要性>をそれぞれ提起。

 

●165号(2002年7月) 定価:400円(税込)

『JA−IT研究会』第2回・第3回研究会の記録 ―米の集荷率95%−JA越後さんとうの挑戦JAのIT革命とJA間協同―

 米産地の多くの農協が米価低迷と米集荷率の低下という問題を抱えるなかで、JA越後さんとうは、95%という高い米の集荷率を達成している。この集荷率を支えているのは、農協の指導による機械への過剰投資防止策や、徹底した分別管理とマーケティングによる高い米価である。JA越後さんとうでは、このほかに水田農業の法人化をすすめ、さらには米単作産地から総合産地への転換を打ち出し、地域農業の確立に励んでいる。本号では、このJA越後さんとうで開催されたJA−IT研究会「第2回公開研究会」の記録(「水田地帯でのJA営農関連事業の創造を考える」)と、JAのIT活用をテーマとした「第3回公開研究会」の記録を掲載。

 

●164号(2000年4月) 定価:400円(税込)

食農教育で農都両棲の地域づくり――女性と高齢者が輝く飯田市の都市農村交流事業――

井上弘司 

 いま都市農村交流事業で全国的な注目を集めている飯田市の取組みについて、飯田市農政課の井上弘司氏が執筆。登録者500名を数えるに至り、そこから飯田市への定住者も出てきた無償の援農システム「ワーキングホリデー」や、参加者2万3000名を数える子どもたちの農業体験教育旅行などについて詳述し、これらの都市農村交流の魅力のもとになっている飯田市各集落で展開されているむらづくり活動を紹介(朝市・直売所、農産加工、地域の食文化の聞き書き、棚田保全、夏休みの間の子どもたちの勉強を教える「寺子屋」等々)、その主役になっている女性や高齢者に光を当てる必要を説いた。

 

●163号(2002年1月) 定価:400円(税込)

『JA−IT研究会』第1回研究会の記録

黒澤賢治ほか

 平成13年9月、農協経営と地域農業の危機に対し営農関連事業を核に農協改革を進めようという志を共有する農協のネットワーク「JA−IT研究会」が発足した。本号では、この「JA−IT研究会」第1回公開研究会の内容を特集し、JA甘楽富岡に学んで直売型販売を模索する愛媛県・JA西条の報告や、参加者からの質問を通して、JA甘楽富岡型の生産・販売方式に転換するときの具体的な問題点や解決策を浮き彫りにした。

 

●162号(2001年10月) 定価:400円(税込)

『総合的な学習の時間』の理論と思想

門脇厚司ほか

 「総合的な学習の時間」の完全実施を来年度に控え、「教育」の再生のために、地域=場の教育力が必須であること、地域=場の教育力の具体的な展開としての「食農教育」を教育再生の中軸にすえる必要があることを明らかにした。  また食農教育が行政や各種団体によって国民的規模の運動として取り組み始められていることを紹介し、地域での食農教育への横断的な取り組みを呼びかけた。

 

●161号(2001年7月) 定価:400円(税込)

JA甘楽富岡に学ぶIT時代の農協改革

農文協

 女性・高齢者などの多様な「潜在的販売農家」を掘り起こして、地元直売所や都市の直売所「インショップ」を拠点に、その少量多品目の農産物を周年的に直売するシステムをつくったJA甘楽富岡は、今後さらに1500人の直売農家を創出するなどして、718haの遊休荒廃農地をなくす試みに挑戦しようとしている。  本特集では、このJA甘楽富岡の経営の5原則(「営農関連事業の独立採算をめざす」「生産者手取りの最優先」「平等の原則から公平の原則への転換」「『農業を基軸とした地域づくり計画』のボトムアップによる立案とその具体化としての個別営農計画作成」「IT活用を事業変革の要にすえる」)を明らかにし、その原則がどのように具体化されているかを詳述した。

 

●160号(2001年4月) 定価:400円(税込)

アジアの奇蹟 大豆発酵食品

齋尾恭子ほか

 2000年10月、つくば市で開かれた第3回国際大豆加工利用会議の公開講座において、中国・タイ・インドネシア・インド・日本の研究者は、それぞれの国の風土や微生物と不可分の大豆発酵食品の共通性と異質性、現代的な価値や課題などについて議論し交流した。  本号では、大豆発酵食品のアジアにおける伝播と土着化の歴史に学びつつアジアの人々の健康増進と食糧需要安定に向けて交流を行なった本公開講座の報告を特集し、アジアの食文化における大豆発酵食品の意義を明らかにするとともに、日本における大豆転作の本作化も大豆加工が盛んになってこそ定着するであろうことを浮き彫りにした。

 

●159号(2001年1月) 定価:400円(税込)

地域自給をめざす東アジアの環境保全型稲作──第2回日韓中環境保全型稲作技術交流会の記録

 東アジアは、モンスーン地帯における水田農業・移植稲作技術・米が主食という共通の農業基盤と食文化を歴史的に形成し、稲作によって稠密な人口を支えてきた。その東アジア諸国で、農業近代化によって循環を重視する伝統的な稲作技術が廃れて化学肥料・農薬が多投されるようになった結果、水田の地力が消耗し生態系が破壊されるという事態が生じた。しかし一方で、環境保全型の稲作を模索し、確立する技術運動も着実に前進している。日韓中の農業関係者が集う第2回日韓中環境保全型稲作技術交流会における報告を特集し、東アジア3ヵ国ではじまった環境保全型技術の成果を確認し、技術運動のさらなる前進に寄与する。  東アジアの一角に位置する日本に、稲作は大陸から伝えられた。時を隔てていま日本の農家は、東アジア3カ国の中でいち早く農業近代化の波をくぐり抜け、その上で地域の自然を生かす循環的な技術を続々と開発している。日本の農家・農業関係者が、農業近代化の負の側面に直面している東アジアの農家や農業関係者と交流することで、東アジア全体の稲作に寄与できることを示す。

 

●158号(2000年10月) 定価:400円(税込)

農都両棲の時代を拓く

内山節

 哲学者の内山節氏はみずから群馬県上野村に暮らし耕すことを通して、生産と生活が一体になったむら人の暮らしの全体性やその思想の深さに開眼した。  人間と人間、共同体と人間、自然と人間との関係についての思想を、具体的な振る舞い方を通して表現するむらの「作法」、この「作法」と不可分な関係で存在し、私的所有に共同体の慣習的な規制をかける「総有」に内山氏は着目する。そして、産直や棚田保全などを通して都会に暮らす人がむら人と交流する中で「作法」を身につけ、これまでのむら人の範囲を超えた新たな「総有」の構成員となることによって、むらと都会との新たな関係が創出されることを内山氏は展望する。  この「作法」「総有」論のほか、21世紀を展望するときに基本的な視座となる「変わらざるもの」とはなにか、つくり手とつかい手の有用性の共有とは何かといった、地域づくりや、企業社会・市場経済にあきたらない人々の自覚的な暮らしづくりのための視点を提供。

 

●157号(2000年7月) 定価:400円(税込)

JA甘楽富岡のIT革命─生涯現役の個性的農業で農都両棲の地域をつくる─

農文協

 JA甘楽富岡は子育てが終わった女性や高齢者など、地域の多様な人びとの力を組織して多品目少量周年型生産を定着させ、産直型の総合産地を形成して「農業を核としたまちづくり」を展開しつつある。本特集では、JA甘楽富岡の実践を、60年代の玉川農協の「+α路線」、70年代の志和農協の「複合経営路線」につづく現段階の農協の針路を指し示すものと捉え、IT革命の可能性も含めて農協活動の基本方向を提示する。

 

●156号(2000年4月) 定価:400円(税込)

農村文化運動の先駆者 安藤昌益─研究100年の軌跡と新たな視座─

鈴木正ほか

 江戸中期の農民思想家、安藤昌益は、食と農を自然と人間を結ぶ結節点として捉え、みずから耕して自然に働きかけ、食を得、生を得る「直耕」(自給)こそ人間のあるべき姿であると主張した。昌益は、革命思想家、民主主義思想の先駆、男女平等論者、平和主義者、エコロジー思想の元祖と、時代ごとに多様な評価をされてきた。これはラジカルな昌益思想そのものを反映している。本特集では、昨年夏に物故した『安藤昌益全集』の監修者寺尾五郎氏の業績をしのぶ座談会を核に、多様な評価の総括と昌益思想をめぐる新たな動向についてまとめた。

 

●155号(2000年1月) 定価:400円(税込)

『自分の本』をつくる情報革命がはじまった―情報による新しい産業・教育・福祉の創造―

農文協

 情報革命時代の到来が叫ばれているが、情報革命というものを、情報手段の発展ではなく、情報の編集・発信の主体が変わることと把握し、その観点から農文協の4データベースの意義を考察。  農文協のデータベースから個人で自分用の農業技術テキストをつくった事例や、農協や農業改良普及センターにおける活用事例を洗い出し、オンデマンド出版(農業用・教育用)や新しい本の流通システムとしての「田舎の本屋さん」にも触れつつ、農文協がめざす21世紀の「情報による文化運動」の展望を開示。

 

●154号(1999年10月) 定価:400円(税込)

むらの10年後をそだてる『集落点検活動』

藤井チエ子ほか

 いま女性や高齢者を中心に朝市・産直や農産加工などの動きが全国各地に広がっているが、これらの動きは、農業の生産性追求がひずませ貧しいものにした地域を、再び人間の暮らしの場として復活させようという性格をもっている。  この号では、このような動きの先駆をなす山口県の農村女性たちの「集落点検活動」を取り上げ、3地域の取組とその到達点を示すことによって、「むらびとの、むらびとのための、むらびとによる、むらづくり」の重要性を訴える。

 

●153号(1999年7月) 定価:400円(税込)

生活農業論──『生活』視点で拓く農業・農村の展望─

九州農文協

 山口県の農村女性たちの生き生きした活動に触発された九州農文協は、「生活農業」という言葉によって、生活視点で農業農村を見ていく姿勢を鮮明にした。その後、シンポジウムなどで継続して追求してきた「生活農業」について、九州農文協の運営委員を中心にしたメンバーがそれぞれの専門分野で展開したのがこの特集である。この「生活農業論」は、生産者・消費者という二項対立を超えた「生活者」のための新たな農学を創造しようという試みでもある。

 

●152号(1999年4月) 定価:400円(税込)

『世直し』としての地域起こし─21世紀の市町村計画をどう立てるか─

農文協

 農文協が調査した中山間地、離島、大都市近郊平場農村の3地域における地域起こしの事例を通して、地域起こしとは、それぞれが個性的な「農村空間」がその独自の魅力をもって都市生活者に働きかけることであることを明らかにした。その働きかけは同時に、画一的な都市文明から個性的な生活文化への転換、自然の循環を断ち切り人々を切り捨てる「生産性一辺倒の社会」から、自然の循環を結び直し人々が充実した生活を送ることのできる「循環系の社会」への転換が、日常的生活の次元で実践的に展開されるものであることを指し示している。

 

●151号(1999年1月) 定価:400円(税込)

いま、時代はどこに向かおうとしているか―農村空間がリードする時代の大転換

農文協

 「出口なき不況」に見られるように、「人類史の大転換」とでもいうべき大きな転換点にさしかかった今、農文協がここ数年『現代農業』『日本農書全集・第2集』『日本の食生活全集』などで深化させてきた基本的視点と豊富な具体的素材を土台に日本農業・農村空間がもつ意味を明確にし、21世紀の社会像を展望する形で「時代はどこからどこへ変わらなければならないか」を指し示す。

 

●149・150合併号(1998年9月) 定価:800円

特集1 江沢民国家主席訪日歓迎・日中平和条約締結20周年記念 日中農業技術交流の新段階/特集2 農家の『新農基法』構想

 第1特集「日中農業技術交流の新段階」は、中国の江沢民主席の訪日を歓迎し、日中平和友好条約締結20周年を記念して、農文協が贖罪の気持ちではじめた日中間の農業技術交流や東洋思想の共同研究の12年の歴史をふりかえり、これらの日中交流の「現在」から未来を展望しようという特集、第2特集「農家の『新農基法』構想」は、1969年以来、四半世紀にわたって行なわれてきた東北地方の農家交流会の記録から、食料・農業・農村に関する農家の重要発言を拾い上げ、折から制定のための作業がすすめられている「新農基法」の土台にすえるべき基本的認識を提起した特集である。  この二つの特集を通して、「自然と人間の調和」という21世紀の課題を解決するには、世界の人びとがそれぞれの地域において西欧型の近代化路線を克服し、地域自然と調和した生活文化を形成し、地域循環型の社会システムを構築してくこと必要であることを提起している。

 

●148号(1998年4月) 定価:400円(税込)

循環系の社会―ローカルな技術と思想の深みから―

内山 節

 哲学者内山節氏が、歴史観の転換と江戸時代の再評価、普遍技術・普遍思想とローカル技術・ローカル思想との評価の逆転、関係性からみた「場所」概念の提出、「半商品」概念と貨幣経済の空洞化の提起、循環系の思想による拡大系の思想の克服、風土と生活文化と思想の関係論などなど、ゆきづまった「近代」克服の道の提示する。この論考は、一面で、農業生産者と都市生活者との関係論としての「産直」論にもなっている。