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日本初等理科教育研究会 編集 2007年3月号 No514 “読解力”を育てる理科授業の改善 | ||
◆「読解力」にかかわる授業改善 平成16年2月にPISA調査の結果が公表された。この調査からわが国の子どもたちの学力は,「読解力」においてかなり低下していることが明らかになった。それを受けて,すべての教科などで「読解力」の育成を図るための授業改善を求める声が大きくなってきた。 文科省教科調査官の日置光久は,『初等教育資料』(平成18年6月号)において,理科における「読解力」の育成について詳しく述べている。例えば,「読解力」を重視した学習指導の改善の具体的な方向として,以下の3項目を示した。 ?テキストを理解・評価しながら読む力を高めること ?テキストにもとづいて自分の考えを書く力を高めること ?さまざまな文章や資料を読む機会や,自分の意見を述べたり書いたりする機会を充実すること ◆目的意識や観察の視点を明確に持った活動に ?については,「理科においては,作者が存在しない自然の事物・現象が読解の対象である」と前置きし,「自然の事物・現象を読解の対象とした活動においては,目的を顕在化したり観察の視点を明確にすることが重要である」と述べている。理科授業において重要な活動である観察・実験のあり方について,とても重要な示唆をしている。これは,理科授業でよく見かける「自然の事物・現象に出会わせれば,自ずと子どもが大事なことに気づくはずだ」という「放任型授業」への警鐘でもあると考えられる。 ◆学んだことを“出力”させる場の重要性 ?については,「読解力は“input”の段階だけではなく,“process”を含め“outcome”の段階まで問題にしていることが,1つの大きな特徴である。テキストにもとづいて『自分の考えを書く』ということは,まさに“outcome”の段階を問題にしているのである」と述べている。 ここでは,従来あまり重視されてこなかった「学んだことを利用する場面」の改善を指摘している。これまでは,かなりの時間と労力をかけて知識や技能が“入力”されてきたが,入力した知識や技能を“出力”させる場が,「テスト」程度しか設定されていなかった。その結果,テストに出題されるような用語や実験結果はよく記憶されてきたが,出題しにくかった変化のプロセスやその意味,知識を活用した判断などの力は,あまり吟味されなかった。さらに,結果さえ記憶していれば,内容もよく理解していると錯覚する傾向もあった。子どもも「わかったつもり」でいたことも多かったのではないだろうか。 そこで,学習したプロセスを振り返りながら,追究活動の意味を自分自身で筋道立てて論述する活動が必要になる。学んだ“知識や技能の活用”が図られることで,よりよくわかる・よりよくできることが実現できるからである。 ◆どのように授業を改善すればよいのか 授業改善の方向性は見えてきた。具体的にどのような手法を用いて改善すれば読解力が育つのか,新たな試みがはじまっている。そこで,改めて「理科で育てる読解力とは何か」,また,具体事例をもとにして「読解力の高まりを支える要因」や「効果を期待できる手だて」などを,本号では明らかにしていきたいのである。(担当/森田 和良) | ||
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