- 特集キーワード 白岩等
- インタビュー 白尾元理氏に聞く/レンズ(写真)を通して自然を感じる
- 子どもに「実感的な理解」をもたらす理科学習指導の視点 森本信也
- 実感を伴った理解を目指した理科学習 白岩等
- 実感を伴った理解をめざす理科指導法の工夫
─4学年「水のすがたとゆくえ」の学習を通して─ 下条徹
- 主題研究を読んで 白岩等
- 学びを生かし,生活を見直す
─5学年 単元「てこのしくみとはたらき」の実践─ 赤尾秀康
- 主題研究を読んで 平松不二夫
- 定性的な捉えを大切にした授業実践
─3学年「風やゴムの働き」の学習を通して─ 田中秀明
- 主題研究を読んで 稲毛英三
- 自由研究 4年「ものの温まり方」の指導について
─実感とともに「知」を獲得する教材化─ 小林明弘
新学習指導要領の理科の目標に「実感を伴った理解」という文言が加わりました。これは,子どもたちが「本当にわかった」という授業を目指そうという意図が含まれていると考えます。それでは,これまでの授業はどうだったのでしょうか。それは「わかった」というよりは,「おぼえた」という段階でとどまっていたのではないでしょうか。
「おぼえる」というのは「知らない」という状態にあるときに,何度も自分で繰り返したり,他人からいろいろ言われたりしながら,いわゆる「おぼえる」ということであると考えます。例えば,教科書に書いてあることを繰り返し読みながら,書いてあることを「おぼえる」ということです。しかし,そのまま放っておくと自然に忘れるもので,ついには完全に忘れた状態になり,はじめの知らない状態と本質的には変わらなくなります。授業をしてからしばらくおいてテストをして,「なんでこんな問題ができていないんだろう」というのがそれに当たると思います。
それに対し「わかる」というのは,おぼえたことを忘れることのない状態であると考えます。すなわち,一度わかったことは,長期記憶に残るということです。例えば,火が熱いということは,一度わかってしまえば,もはや知らない状態に戻ることはありません。このように「おぼえる」ということは「可逆的」であるのに対し,「わかる」ということは「非可逆的」であるということができると思います。このように考えると,これまでの理科の授業で「わかった」といわれていたのは,実は「おぼえた」に近いものであったことが想像できると思います。
それでは,子どもがわかる授業(実感を伴った理解)を目指すには,どのようにしたらよいのでしょうか。解説書には「実感を伴った理解」について,次の3つの側面が示されています。
(1)具体的な体験を通して形作られる理解である
(2)主体的な問題解決を通して得られる理解である
(3)実際の自然や生活との関係への認識を含む理解である
本号ではこれらの視点を含め,子どもが本当に「わかった」という授業を,どのように行っていけばよいかを明らかにしていければと思います。(担当/白岩 等)
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