- 特集キーワード 梶川友恵
- 座談会 科学的思考力を育てる授業とは何か?
矢野英明,大津晃,宇佐美暁,岸重光,小田部英仁
- 論理的に科学の枠組みで考えその良さを感得する学習指導に向けて 加藤圭司
- 科学的な思考力・表現力を育成し,実感を伴った理解を図る
理科学習の創造 塚田昭一
- 授業における比較・類推の場の構成と,思考の組み替え
─6学年「植物や動物と養分」をもとに─ 澤柿教淳
- 主題研究を読んで 森田和良
- 科学的考察力を育てるために,「考察」の視点を明確にする
─5学年「てことてんびん」の学習を通して─ 長沼武志
- 主題研究を読んで 田中義朗
- 科学的に追究する行為を楽しませるために 村山一彦
- 主題研究を読んで 鷲見辰美
- 冬季セミナー総合案内
【提案1】電気単元の系統性をどう考えていったらよいか 白岩等
【提案2】「生活科」「手回し発電機」そして「グローバルマップ」 佐々木昭弘
【提案3】系統性を考えた電気単元の提案 鷲見辰美
「科学的な見方や考え方を養う」ことは,これまでも理科の目標に示されてきたものであり,新学習指導要領においても継続していく大事なことです。この場合の「科学的」とは,「実証性」「再現性」「客観性」の3つの条件がそろうことであり,子どもたちは教師や友達同士とのかかわりを通して「科学的な見方や考え方」を身につけていくことが大事だと考えます。
ところが,平成19年に発表された「特定の課題に関する調査(理科)」の調査結果における主な課題として,次のことがあげられています。
・問題を解決するための観察・実験の方法を考えることに課題
・観察・実験の結果やデータをもとに考察を深めたり結論を導くことに課題
これらの課題から,科学的思考力を育てなければならないことがわかります。そのためには,その問題解決にふさわしい方法を考え出す力,観察・実験の結果から必要な情報を取り出す力,取り出した情報をまとめる力,まとめからよく考え結論を導き出す力を育てる授業が必要となります。そうした授業とは,やはり大前提として子どもの主体的な問題解決学習を成立させる授業だと思います。
そして,子どもの主体的な問題解決学習を支えるものは,子ども自らの「問題意識」です。この「問題意識」があれば,問題解決に向けて見通しをもち,「こんな実験をすれば,わかるのではないか」など解決方法を子ども自身が考えることができるでしょう。また,観察・実験の結果の何に着目をすればいいのかがはっきりしてきますから,「こういう結果なら,こんなことが言えると思うよ」と,観察・実験の結果をもとにした考察で自分なりの論理を導くことができるはずです。
また,子どもが主体的に取り組む問題解決の過程が,「科学的」か否かを,教師は常に意識してかかわっていくことが必要です。単に「活動が問題解決的になっているか」や,「実験・観察を取り入れた体験的なものになっているか」といったことに気をつけているだけでは,科学的思考力は育ちません。「実証性」「再現性」「客観性」の3つの条件が満たされているかという視点も必要です。
さらに,問題解決の授業を通して科学的思考力を育てるためには,この学年で,この単元で育てなければならない科学的思考力とはどのようなものなのかを,教師は具体的に考えて授業をする必要があります。そして,その力を身につけさせる手立てを考え実行し,その力が育ったのかをしっかり見とることも必要です。目標と指導と評価の一体化の授業実践です。
もう一度「科学的思考力」の意義や大切さ,「科学的思考力」を育てる授業とはどういうものなのかを考えていきたいと思います。(担当/梶川 友恵)
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