- 特集キーワード 塚田昭一
- インタビュー 村山哲哉氏に聞く
これからの理科教育と日本初等理科教育研究会への期待
- 環境教育を意識した理科授業のあり方 矢野英明
- エネルギーと地球温暖化とのかかわりについて考える環境教育
─エネルギー教育の実践を通して─ 込山宏
- 環境教育へとつながる光電池の学習を目指して
─4学年「電気のはたらき」の実践を通して─ 布施司
- 理科授業に環境教育を取り入れるために
─4学年「1日の気温の変化」を通して─ 清田英孝
- 「明るい未来」への手応えを実感し,今の自分が必要とすることを
学び取る「電気の利用」の学習とは 川真田早苗
教育基本法に「環境教育」の視点が示され,新学習指導要領小学校理科においても環境教育の観点から学習の改善点が示されました。また,持続可能な社会の構築を目指すために,環境省では,私たちの子孫の代になっても,生物多様性の恵みを受け取ることができるように,生物多様性の保全と持続可能な利用に関わる国の政策の目標と取組みの方向を打ち出しており,環境教育が今後の教育活動でますます重視されることを示唆しています。さらに,「環境教育指導資料(小学校編)」が公刊され,環境教育の目的が次のように示され,環境教育のいっそうの充実を求めています。
「環境や環境問題に関心・知識を持ち,人間活動と環境とのかかわりについて総合的な理解と認識の上に立って,環境の保全に配慮した望ましい働きかけのできる技能や思考力,判断力を身につけ,持続可能な社会の構築を目指してより良い環境の創造活動に主体的に参加し,環境への責任ある行動を取ることができる態度を育成すること」
このような社会の変化への対応から,理科教育が担う環境教育の意義として,次の3点を考えることができます。
1つ目は,「参加型の学びの重視」です。従来の環境教育は,個人の態度の変容に焦点を当てていましたが,これからの環境教育は,環境保全活動に参加する態度や協同して問題解決する能力を育成することにシフトしています。このことを理科教育に当てはめて考えてみると,理科においても参加することを一つの能力としてとらえ,環境に関する問題意識など自分の立場を明らかにし,協同して問題を解決していく態度を育てていくことが重要と考えられます。
2つ目は,「実感を通して学ぶことの重視」です。環境問題は,子どもにとって比較的身近で関心の高い問題ではありますが,自分の世界とはかけ離れた別世界で起きている現象として考え,実感を伴った理解ができないことに課題があります。理科において環境への関心を呼び起こすためには,顕在化された環境問題と理科学習を関連させて考えさせるだけでなく,身近な自然を観察するなかで不思議さを感じたり,自然への感動体験など実感を伴って学んだりすることも,環境教育を考えていく際には重要であると考えられます。
3つ目は,「明るい未来を創造する環境教育の重視」です。環境教育はとかく地球温暖化や汚れた空気や水などの環境問題について考えさせることが多く,「暗い」イメージが伴います。しかし,子どもたちと環境教育を実践する際には,明るい未来を創造できる学習を行うことが重要です。例えば,6学年に新設された「電気の利用」の単元は,新エネルギー,新素材,環境の視点から明るい未来がイメージできます。日本の卓越したものづくりの技術に触れ,社会に貢献したいと考える子どもを育成する可能性がある単元です。
そこで今月号では,環境教育推進に向けた具体的な実践を通して,新しい小学校理科教育と環境教育の関連を明らかにしたいと思います。
(担当/塚田 昭一)
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