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日本初等理科教育研究会 編集
初等理科教育
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2009年7月号 No542
環境教育と理科
7月号表紙
  • 特集キーワード 塚田昭一
  • インタビュー 村山哲哉氏に聞く
    これからの理科教育と日本初等理科教育研究会への期待
  • 環境教育を意識した理科授業のあり方 矢野英明
  • エネルギーと地球温暖化とのかかわりについて考える環境教育
    ─エネルギー教育の実践を通して─ 込山宏
  • 環境教育へとつながる光電池の学習を目指して
    ─4学年「電気のはたらき」の実践を通して─ 布施司
  • 理科授業に環境教育を取り入れるために
    ─4学年「1日の気温の変化」を通して─ 清田英孝
  • 「明るい未来」への手応えを実感し,今の自分が必要とすることを
    学び取る「電気の利用」の学習とは 川真田早苗

 教育基本法に「環境教育」の視点が示され,新学習指導要領小学校理科においても環境教育の観点から学習の改善点が示されました。また,持続可能な社会の構築を目指すために,環境省では,私たちの子孫の代になっても,生物多様性の恵みを受け取ることができるように,生物多様性の保全と持続可能な利用に関わる国の政策の目標と取組みの方向を打ち出しており,環境教育が今後の教育活動でますます重視されることを示唆しています。さらに,「環境教育指導資料(小学校編)」が公刊され,環境教育の目的が次のように示され,環境教育のいっそうの充実を求めています。

 「環境や環境問題に関心・知識を持ち,人間活動と環境とのかかわりについて総合的な理解と認識の上に立って,環境の保全に配慮した望ましい働きかけのできる技能や思考力,判断力を身につけ,持続可能な社会の構築を目指してより良い環境の創造活動に主体的に参加し,環境への責任ある行動を取ることができる態度を育成すること」

 このような社会の変化への対応から,理科教育が担う環境教育の意義として,次の3点を考えることができます。
 1つ目は,「参加型の学びの重視」です。従来の環境教育は,個人の態度の変容に焦点を当てていましたが,これからの環境教育は,環境保全活動に参加する態度や協同して問題解決する能力を育成することにシフトしています。このことを理科教育に当てはめて考えてみると,理科においても参加することを一つの能力としてとらえ,環境に関する問題意識など自分の立場を明らかにし,協同して問題を解決していく態度を育てていくことが重要と考えられます。
 2つ目は,「実感を通して学ぶことの重視」です。環境問題は,子どもにとって比較的身近で関心の高い問題ではありますが,自分の世界とはかけ離れた別世界で起きている現象として考え,実感を伴った理解ができないことに課題があります。理科において環境への関心を呼び起こすためには,顕在化された環境問題と理科学習を関連させて考えさせるだけでなく,身近な自然を観察するなかで不思議さを感じたり,自然への感動体験など実感を伴って学んだりすることも,環境教育を考えていく際には重要であると考えられます。
 3つ目は,「明るい未来を創造する環境教育の重視」です。環境教育はとかく地球温暖化や汚れた空気や水などの環境問題について考えさせることが多く,「暗い」イメージが伴います。しかし,子どもたちと環境教育を実践する際には,明るい未来を創造できる学習を行うことが重要です。例えば,6学年に新設された「電気の利用」の単元は,新エネルギー,新素材,環境の視点から明るい未来がイメージできます。日本の卓越したものづくりの技術に触れ,社会に貢献したいと考える子どもを育成する可能性がある単元です。
 そこで今月号では,環境教育推進に向けた具体的な実践を通して,新しい小学校理科教育と環境教育の関連を明らかにしたいと思います。
(担当/塚田 昭一)


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2009年
6月号 学ぶ価値を実感する授業
5月号 今こそ,自然観察力を育てたい
4月号 新学習指導要領をどう実践するか
3月号 科学史を授業に生かす
2月号 「生命」「地球」概念の授業
1月号 科学的思考力を育てる
2008年
12月号 実感を伴った理解
11月号 「伝え合う力」を育てる理科授業
10月号 習得・活用・探究学習と子どもの思考
9月号 活用力を高める「深化課題」の開発
8月号 人間力の向上
7月号 「エネルギー」「粒子」概念の授業を考える
6月号 「ことば」を重視する理科の授業とは
5月号 自然・科学・実感 はじまる新しい理科!
4月号 PISA型科学的リテラシー
3月号 活用力を育てる授業
2月号 意味の理解を伴った知識や技能の習得のさせ方
1月号 「子ども理解」を深めるために
2007年
12月号 研修・授業分析の生かし方
11月号 授業力を磨く
10月号 子どもの発達と問題解決
9月号 今,福島が熱い! 全国大会への道
8月号 授業が成り立つ問題が見えてくる
7月号 実生活と授業をつなぐ
6月号 授業がぐっと深まるこの発問
5月号 授業における子どもの「ひらめき」
4月号 “状況に入る学び”と“状況をつくる学び”
3月号 “読解力”を育てる理科授業の改善
2月号 「何を」かくか 「いつ」かくか
1月号 児童に考えさせる実験結果のまとめ方
2006年
12月号 今,単元構成を考える
11月号 教えて考えさせる授業と問題解決
10月号 話し合いを深めるキーワードとは?
9月号 感性をみがく理科教育
8月号 知識の差,経験の差を乗り越える理科授業
7月号 幼・小・中連携を踏まえた学習指導要領改訂のポイント
6月号 「表現力」を理科で鍛える
5月号 知的ボルテージを高める理科授業
4月増刊号 学力低下を克服する 小学校理科の新展開
4月号 こうすれば楽しくなる,理科の授業!!―若い先生方とともに育つために―
3月号 小学校理科はこれでいいのか―学習指導要領改訂への提言―
2月号 問題解決の力を育む
1月号 子どもが「わかった」と実感できる授業
2005年
12月号 子どもの見方や考え方をとらえる
11月号 見えない世界を楽しむ
10月号 他教科との関連を踏まえた新世紀型理科教育
9月号 こだわりを育てる理科授業
8月号 確かな学力に高める「説明活動」
7月号 子どもの出番! 教師の出番!
6月号 先行学習の有効性
5月号 教師を理科好きにする“新しい校内研修”
5月増刊号 「真の学力」を育てる 理科の学習指導案集
4月号 ふるさとの自然に自信と誇りを育てる授業
3月号 個の学びを生かした 練り上げのある授業
2月号 豊かな「挫折」がある授業
1月号 自然を豊かに感じ、確かな科学を築く
2004年
12月号 発展的な学習のアイデア
11月号 「問題解決」の原点
10月号 対話で変わる子どもの見方や考え方
9月号 わかる理科授業をめざして
8月号 21世紀型の教材研究
7月号 特集:子どものつくる「問題」、教師の考える「問題」
6月号 特集:みがけ! 感性
5月号 専門家の協力を得た授業
4月増刊号 小学校理科授業のレベルアップ読本
4月号 確かな学力を育てる理科授業
3月号 長期記憶に残る理科授業の工夫
2月号 「問題解決と学力」を問う
1月号 理科嫌いをなくす授業をめざして
2003年
12月号 予習と理科学習
11月号 「わくわく導入」のあり方
10月号 科学的思考を育てる「基礎・基本」
9月号 ポートフォリオを生かす
8月号 教師の指導力を問う
7月号 ものづくりで科学する力を
6月号 どうする? 発展的・補充的な学習
5月号 飼育・栽培の楽しみ
5月増刊号 楽しい理科の導入の工夫
4月号 ワンランク上の学力をつけたい
3月号 学習指導要領をみつめなおす
2月号 学力低下への緊急提言
1月号 理科から総合へ
2002年
12月号 海外の理科教育に学ぶ
11月号 絶対評価 私の実践
10月号 地域とつながる理科教育
9月号 わかる喜びをめざす理科の授業
8月号 教材化を図る教師の眼
7月号 自然体験活動のすすめ方
6月号 理科の授業と仲間づくり
5月号 センス・オブ・ワンダーの心を育てる
5月増刊号 理科に役立つ栽培植物
4月号 「豊かな心」にどこまで迫れるか
3月号 感動を表現する子どもを育てる
2月号 現代日本の理科離れの危機
1月号 子どもの仮説が生きる授業
2001年
12月号 IT革命と理科授業
11月号 子どもが協同しあう授業の創造
10月号 ものづくりをどう位置づけるか
9月号 理科で育つ学力
8月号 「わかる」授業から「わかりあう」授業へ
7月号 事実を大事にした授業
6月号 生命観を養う理科授業
5月号 地域の自然 目のつけどころ
5月増刊号 もっと活かそう学校環境
4月号 特集:私の考える「よい授業」
3月号 特集:心に残る授業
2月号 特集:理科で育つ資質や能力
1月号 特集:心の世紀と理科の教育

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